センサダイアフラム|圧力検出を担う薄膜

センサダイアフラム

センサダイアフラムは、圧力・差圧・液位・流量などを検出する変換器で用いられる薄肉の隔膜であり、媒体の圧力を機械的変位に変え、ひずみゲージ、静電容量、光学式などの検出素子へ伝える役割を担う部品である。薄肉円板や膜板として設計され、微小変形の線形性、温度安定性、耐食性、耐疲労性が同時に要求される。一般のダイアフラムと異なり、計量や制御に直結する計測精度が重視され、表面仕上げや残留応力管理、溶接部品質が性能を大きく左右する。

構造と作動原理

センサダイアフラムは、過圧保護のためのバックアッププレートや支持ビードを備え、中央変位が検出素子の最適感度範囲に収まるよう板厚・直径・形状が決められる。静圧は膜の曲げに、差圧は両側圧の差として変位に現れる。媒体が気体であれば空気の圧縮性が、液体であれば粘性と共鳴特性が応答に影響する。

材質の選定

代表材はSUS316L、ハステロイ、チタンなどの耐食合金である。食品・半導体薬液にはPTFEやPFAなどのフッ素樹脂ライニングやコーティングが採用される。材質はヤング率と降伏強さ、耐食性、溶接性のバランスで決める。表面粗さは汚れ付着やヒステリシスに効くため、電解研磨やラッピングにより安定化させる。

検出方式との組合せ

  • ひずみゲージ式:膜の表裏に金属箔ゲージを配置しブリッジで微小変化を検出する。温度補償が要点である。
  • 静電容量式:対向電極との容量変化を読む。微小変位で高感度だがギャップ管理が重要である。
  • 光学式:干渉や反射強度変化で非接触に読む。高温・強磁場下で有利である。
  • MEMS:シリコン薄膜を微細加工する。小型かつ大量生産に適し、MEMSセンサーの基盤部品として広く使われる。

設計パラメータと特性

感度(変位/圧力)、線形性、ヒステリシス、クリープ、零点ドリフト、温度係数、耐圧・破裂圧が主要指標である。薄くすれば感度は上がるが、耐圧や疲労寿命は低下する。保守要件を満たすため、繰返し荷重のS-N特性と過圧イベントの影響を事前に評価する。

動的応答と音響影響

センサダイアフラムの固有振動数は円板理論で近似され、計測帯域より十分高くなるよう設計する。配管脈動や音波に起因するフラッタは指示値を乱すため、スナバやダンパを併用する。気体計測では気圧変動や音速が応答遅れに影響する。

プロセス接液部の設計

フラッシュダイアフラム構造はデッドスペースを減らしCIP/SIPに適する。粘性流体やスラリーではプロセスとセンサを隔離するため封液(オイル)を介したリモートシールを用いる。入口にフィルタエレメントを挿入すると異物衝撃や膜損傷を低減できる。

製造と接合

薄板の深絞り・スピニング・化学エッチング・レーザ溶接が中核工程である。溶接熱影響による脆化や歪みは零点ずれを招くため、治具拘束と後熱処理で残留応力を管理する。リーク試験はヘリウムで行い、微小ピンホールの早期検出が信頼性を左右する。

腐食・劣化と保全

塩化物応力腐食割れ、孔食、エロージョン、キャビテーションが主な劣化モードである。薬液には適切な合金選定とコーティング、気相には乾燥・脱酸処理が有効である。未処理の固体粒子は膜の局所塑性変形を誘発し、ゼロ点漂移を増加させる。

真空・差圧用途の留意点

真空計測ではアウトガスと膜の曲げ剛性が応答を規定する。装置のチャックや搬送系では、吸着面の圧力安定が重要であり、例えば真空チャックの設計と整合させると良い。差圧測定では導圧配管の容積と温度勾配がダイナミクスを支配する。

衛生・薬液ラインでの実装

食品・医薬・半導体ラインでは表面粗さ管理と非溶出性が鍵であり、フッ素樹脂系のシールやライニングが用いられる。清浄な空気や窒素パージは感度安定に有効である。

校正・トレーサビリティ

センサダイアフラムを含む圧力計測系は、一次標準にトレースされたデッドウェイトテスタや基準圧力計で定期校正する。ゼロ点調整、スパン校正、温度サイクル試験、過圧試験を組み合わせ、設置条件に応じた不確かさを見積もることが望ましい。

代表的な適用領域

  • プロセス計装:配管・タンクの圧力・差圧監視、流量計の一次変換。
  • 衛生設計機器:フラッシュ構造で洗浄容易、バイオ・食品の品質管理。
  • 半導体薬液:腐食性媒体に対しフッ素樹脂ライニングを適用。
  • 微小圧検出:MEMSセンサーと組み合わせた小型デバイス。
  • 環境・気象:大気の気圧・差圧観測。

以上のように、センサダイアフラムは材料工学、機械設計、計測工学が交差する要素部品であり、表面性状、固有振動数、接液条件、接合品質の最適化が精度と長期安定性を決める。媒体物性や配管条件、脈動・騒音などの擾乱を総合的に評価し、必要に応じてスナバ、校正手順、封液やライニングを組み合わせることで、実機での再現性と信頼性を確保できる。