フィルタエレメント|構造・材質・性能と選定要点を解説

フィルタエレメント

フィルタエレメントとは、液体や気体中の微粒子や異物を除去するためにハウジングへ装着される交換可能なろ材ユニットである。セルロース、不織布、合成繊維、焼結金属、セラミック、活性炭など多様な材料が用いられ、流体の清浄度を維持し機器の摩耗や目詰まりを抑制する。設計上は捕集効率と圧力損失の両立、耐差圧・耐熱・耐薬品性、寿命(汚染保持容量)の最適化が要点である。用途は油圧・潤滑、空圧、ケミカル、水処理、クリーンルームなど幅広い。

基本構造と材料

フィルタエレメントは、ろ材、支持層、コア(内筒)と外筒、シール材(Oリング、ガスケット)から構成される。ろ材は単層または多層で、プリーツ加工により表面積を拡大し、初期圧損を抑えつつ寿命を延ばす。金属焼結やセラミックは高温・高差圧に強く、合成繊維やガラス繊維は微細粒子に適する。シール不良はバイパスリークを招くため、材質適合と面圧確保が重要である。

  • セルロース・不織布:コスト重視、一般油・水向け。
  • ガラス繊維:微粒子高効率、汚染保持容量が大きい。
  • 焼結金属・メッシュ:洗浄再生が可能、耐熱・耐薬品性が高い。
  • セラミック:高温プロセス・超清浄用途。
  • 活性炭:臭気・溶質の吸着用途。

性能指標(規格・試験の要点)

ろ過性能は、粒径xに対するβ比(βx(c))、公称・絶対ろ過精度、汚染保持容量、初期・最終圧力損失、耐圧・耐疲労などで評価する。代表的な水準として油圧系ではISO 16889のマルチパステスト、機械的健全性ではISO 2941(崩壊圧)、ISO 2942(製造完全性)、ISO 3968(圧力損失)、ISO 3724(疲労特性)、化学適合ではISO 2943が参照される。運用では差圧監視により交換時期を決め、清浄度目標(例:ISO 4406の粒子等級)と両立させる。

  • β比:βx=上流粒子数/下流粒子数。例えばβ10=200は10µmで99.5%効率に相当。
  • 圧力損失:流量・粘度・ろ材抵抗で決まる。粘度上昇時はΔPが増大する。
  • 汚染保持容量:目詰まりまでに保持できる汚染量。
  • バブルポイント:孔径評価に用いられる重要指標。

設計と選定の考え方

フィルタエレメントの選定では、目標粒径、必要流量、粘度・温度、化学適合、許容差圧、交換サイクルを総合評価する。Darcyの法則近似によりろ材抵抗と厚み、流速からΔPを見積もり、プリーツ深さ・枚数で表面積を最適化する。粒度分布が広い場合は深層ろ過が有利、狭い場合は表面ろ過やスクリーン型が適する。安全側に設計しつつ、バイパスバルブ開弁圧とポンプ保護のバランスを図る。

  1. 清浄度仕様から目標粒径とβ比を決定。
  2. プロセス流量と粘度から許容ΔPを設定。
  3. 材質・シールの化学適合と温度範囲を確認。
  4. ハウジング寸法・エンドキャップ形状の互換性を確認。

故障モードと対策

主な故障は、目詰まり(差圧急上昇)、チャネリング(流路形成による漏れ)、メディア破断、シールリーク、バイパスバルブ頻繁開放などである。対策として前段のプレフィルタ配置、差圧上限の見直し、取付けトルク管理、起動時の急激な粘度・流量変化回避、適切なエア抜きが挙げられる。搬送・保管ではろ材の折損や端面傷を防ぐ。

応用分野と要点

油圧・潤滑では摩耗粉・スラッジ除去によりサーボ弁の固着を防止する。空圧・集塵では粒子・エアロゾル捕集にHEPA/ULPAやバッグフィルタを用い、圧縮機のオイルミスト対策にも重要である。水処理・食品・医薬では安全・衛生基準に適合する材質選定と洗浄バリデーションが求められる。半導体やケミカルでは微粒子・金属溶出管理が不可欠である。

交換・運用管理

フィルタエレメントは差圧計で状態監視し、設定ΔP到達で交換する。環境や粘度により初期ΔPが変動するため、起動・停機を含む実運転条件で閾値を校正することが望ましい。交換時はシール面の清浄、Oリングの劣化点検、ろ材の破片混入防止が必須である。差圧スパイクが頻発する場合は表面積の増加や前段フィルタの導入を検討する。

環境・安全とコンプライアンス

廃棄は油や化学物質の付着状況に応じて産業廃棄物の区分を確認し、焼却可能材と金属部の分別を行う。高温・圧力設備での交換は遮断・減圧・温度安定後に実施し、PPEを着用する。クリーン用途では交換・封止・搬送まで異物管理手順を標準化することが望ましい。

関連部品と接続

ハウジング、差圧計、バイパスバルブ、ドレン、エア抜きなど付属機器との整合が重要である。締結部は適正トルクで管理し、例えばハウジングのクランプやボルトの緩みを点検する。配管側では圧力脈動やキャビテーションの影響を抑えるため、適切な支持と配管レイアウトを採る。