MEMSセンサー|微細加工で小型高感度・低消費電力

MEMSセンサー

MEMSセンサーは、シリコン微細加工を用いて作られる微小な機械要素と電子回路を一体化した検出デバイスである。MEMSは「Micro-Electro-Mechanical Systems」の略で、微小な梁・質量・ダイアフラムなどの構造により物理量を機械的変位や応力として取り出し、電気信号へ変換する。半導体プロセスに基づくため量産性と均一性に優れ、CMOSと同一基板上でのモノリシック統合や、センサとASICを封止で組み合わせるハイブリッド実装も可能である。スマートフォンのIMU(加速度・ジャイロ)や自動車の安全装置、医療・産業機器、マイクロフォンやプロジェクタなど、多様な応用で基盤技術となっている。

構造と原理

代表的な機械素子は、薄膜のダイアフラム、カンチレバー、慣性質量付きばね系である。変換方式は、抵抗値変化を使うピエゾ抵抗、容量変化を使う静電容量、圧電体の電荷発生、熱対流を利用する熱式、光学式などに大別される。圧力の検出では気圧変化で膜が撓み、容量または抵抗の変化として読み出す。音響では音波による膜振動を電気信号に変換する。流体センサでは空気や液体の流れが熱分布や圧力を変え、それを微小構造が捉える。

主要な種類

用途ごとに多様なタイプが存在し、実装形態や校正法も異なる。以下に代表例を示す。

  • 加速度センサ:慣性質量とばねの相対変位を容量変化で検出する。
  • ジャイロスコープ:コリオリ力により直交モードに生じる振幅を検出する共振構造が主流である。
  • 圧力センサ:薄膜ダイアフラムの撓みを容量式またはピエゾ抵抗式で読む。
  • マイクロフォン:微細ダイアフラムとバックプレートで高感度な静電容量型が広く用いられる。
  • マイクロミラー:DMDに代表される回転鏡で光を高速に制御する。
  • 化学・バイオ:表面官能化によりガスや生体分子の吸着で質量や抵抗が変化する。
  • 流量・熱式:加熱素子周辺の温度勾配変化から流れを推定する。

製造プロセス

製造はフォトリソグラフィ、薄膜堆積(CVD/PVD)、異方性のドライエッチング(DRIE)やウェットエッチング、犠牲層解放などの工程を組み合わせる。SOI基板やガラスとのアノードボンディング、TSVを用いた電極引き出し、ウエハレベルパッケージが一般的である。ウエハ搬送には真空搬送や真空チャックが使われ、薬液配管や耐薬品部材にはフッ素樹脂が選ばれることが多い。パッケージは共振器のQや温度ドリフト、ノイズに大きく影響するため、内部圧力や封止材の選定が重要である。

特性と評価

主要指標は感度、分解能、ノイズ密度、ダイナミックレンジ、帯域、直線性、ヒステリシス、温度係数、オフセット、クロスアクシス感度などである。圧力センサではフルスケール範囲とゼロ点安定性が重要で、気圧環境の変化に対する温度補償が必要となる。ジャイロはバイアス不安定性やランダムウォークが実用精度を決める。機械共振系ではQの最適化とスクイーズフィルム減衰の制御が鍵である。

回路と信号処理の統合

MEMSセンサーは低レベルのアナログ信号を出力するため、低雑音アンプ、チョッパ安定化、ΣΔ ADC、デジタル補正を統合したASICと組み合わせるのが一般的である。インタフェースはI2CやSPIが主流で、自己診断、温度センサ、OTP校正値を内蔵する。モノリシックCMOS-MEMSでは寄生容量低減と雑音耐性に優れ、ハイブリッドではプロセス選択の自由度が高い。

応用分野

モバイル機器では画面回転、手ぶれ補正、歩行計測、空間認識に不可欠である。自動車ではエアバッグ展開や横滑り防止、TPMSなど安全・快適機能を支える。産業分野では設備の振動監視やロボットの力覚化、ドローンの姿勢制御、医療ではカテーテル圧力測定や補聴器マイクに使われる。環境・インフラ監視、AR/VR、ヒューマンインタフェースなど応用は拡大を続けている。

設計・信頼性の課題

微小構造はスタクションや引き込み(プルイン)、パッケージ応力、湿度侵入、粒子付着に敏感である。封止樹脂や基板熱膨張差はオフセットや温ドリフトを生むため、材料選定とレイアウト最適化が重要である。筐体固定ではボルト締結の応力伝播も無視できない。さらにESD、機械衝撃、落下耐性、経時安定性に対する設計余裕と加速試験が不可欠である。

関連規格・試験の要点

車載向けではAEC-Q100準拠の信頼性試験(温度サイクル、HAST、HTOLなど)が要求され、機能安全ではISO 26262に沿った診断・故障率設計が求められる。一般の半導体品質ではJEDECやJIS/ISOの規格に基づく試験が参照される。校正はトレーサブルな基準機と環境制御下で行い、温度・湿度・振動・音波負荷などのクロスセンシティビティを含めて評価する。製造統計(SPC)と故障解析のフィードバックにより、MEMSセンサーの歩留まりと長期安定性を継続的に改善できる。