角度計
角度計は、物体同士のなす角度や部品の傾き・勾配を定量化する測定器である。機械加工の段取りや治具合わせ、板金・配管の取り回し、建築・土木の勾配確認、溶接開先の検査、品質管理の受入検査など、多様な現場で使われる。代表例として分度器型、ベベルプロトラクタ、スコヤ一体型、磁石付きデジタル傾斜計(インクリノメータ)、回転軸の位相確認に用いるデジタル角度エンコーダなどがある。読み取り方式は目盛の機械式と、MEMS加速度計や磁気エンコーダを用いる電子式に大別される。
測定原理と種類
角度計の機械式は、円弧目盛板と可動腕の相対角を読み取る単純明快な原理である。ベベルプロトラクタは微調ねじで腕を追い込み、目盛副尺で0.1°程度まで読む。デジタル式は重力加速度の成分比から傾斜角を算出するMEMS方式、回転軸に取り付けて絶対・相対位置を検出するエンコーダ方式が主流で、ゼロリセットや相対ゼロの設定が容易である。光学式の高精度角測にはオートコリメータ、回折・回転台による角度制御や結晶方位測定にはゴニオメータが使われ、必要精度と対象により使い分ける。
構成要素と主要仕様
角度計の基本構成は、基準となる座面(ベース)、回転腕(ブレード)、固定・微調機構、読み取り部(目盛・表示)である。仕様の要点は、(1)測定範囲(0–180°/360°)、(2)分解能(機械式1°前後、デジタル0.01–0.1°)、(3)確度/繰返し性、(4)ゼロセット/相対測定、(5)データ出力(USB/RS-232/ワイヤレス)、(6)磁石やV溝などの装着性、(7)保護等級や耐環境性である。精度は測定長さ(ベース長/刃長)と座面の平面度・直角度にも依存するため、母材の仕上げと接触条件が重要となる。
デジタル角度計の特徴
デジタル式角度計は、内部のMEMSセンサとADCにより角度を即時表示する。優位点は、暗所でも読み取り容易、相対ゼロで段差や勾配を簡単比較、記録・転送が容易な点である。一方で、温度ドリフト・磁場影響・振動によるノイズに配慮が必要で、温度補正と適切な平均化、据え付け面の脱脂や仮固定で揺れを抑えることが実用精度を高める。回転軸の絶対角管理には磁気/光学エンコーダを用いる機種もあり、組立治具や簡易CMMの角度基準として用いられる。
校正とトレーサビリティ
角度計の校正は、サインバーとゲージブロックの組合せ、正弦定盤、角度ブロック、回転テーブルの基準角などで行う。電子式は水準器(精密水平器)や基準角治具を用いたゼロ点・スパン点検が有効である。規格はJISやISOの関連規格に準拠し、校正証明書・成績書・トレーサビリティ体系図を整えることで、受入検査や顧客監査に対応できる。光学的な角度検証が必要な場合はプロファイルプロジェクタや光学顕微鏡による像の拡大観察でエッジ基準を確認する。
使用手順(実務フロー)
- 前準備:測定面のバリ・油膜・粉塵を除去し、室温順応を待つ。基準面の平面度/直角度を簡易ゲージで点検。
- ゼロ合わせ:基準面に角度計を密着させ、ゼロ設定(機械式は0°基準線合わせ、デジタルはゼロリセット)。
- 当て方:母材の基準エッジにブレードを「押し当て+軽圧」で密着。磁石付きは滑走しないよう手添え。
- 読み取り:視差を避けて覗き、機械式は副尺、デジタルは安定表示を待って読値確定。
- 記録:図番・測定点・姿勢・環境・器差補正の有無を記録。必要に応じてデータ出力で保存。
誤差要因と対策
- 視差・バックラッシュ:目盛は正対し、副尺は一方向から合わせる。微調ねじのガタは一方向から追い込み。
- 設置誤差:ベースの平面度不足やエッジの欠けは角度化して誤差になる。母材の面取り・研磨状態を確認。
- 固定力不足:磁石やクランプが弱いと微小滑りが生じる。仮固定具やVブロックの併用を検討。
- 温度・磁場・振動:電子式は温度ドリフトや外乱に注意。平均化やホールド機能を活用。
- 基準定義の曖昧さ:相対ゼロの定義点を図面で明確化し、測定姿勢を標準化する。
測定不確かさの簡易見積
作業現場では、表示分解能、繰返し性、設置ばらつき、環境影響を合成して角度計の拡張不確かさを評価する。例としてRSSで合成し、信頼水準95%相当の係数で拡張値を求め、判定しろ(許容差)に対して妥当性を確認する方法が実務的である。
選定のポイント
図面公差や現場環境を踏まえ、必要確度と分解能、測定範囲、据え付け性(磁石/V溝/クランプ)、ゼロ合わせのしやすさ、表示の見やすさ、データ連携、耐環境性(IP等級)で比較する。鋭利な開先角や段差測定にはブレードが薄いベベル型、設備据付の勾配確認にはデジタル傾斜計、旋盤や割出台ではエンコーダ内蔵タイプが有効である。形状や粗さが角度判断に影響する場合は表面粗さ計で面性状を確認し、位置決めにはハイトゲージと併用して基準高さを確立する。
他測定器との役割分担
輪郭や刃先角の評価にはプロファイルプロジェクタ、微小角の直線性や反りの評価にはオートコリメータ、回転試験片の真円・位相関連では真円度測定機が適する。搬送系や治具の微小傾きはデジタル角度計で素早く把握し、微小変位の当たり出しにはレバー式ダイヤルゲージを併用することで、段取り時間と測定信頼性を両立できる。
保守・取り扱いの要点
角度計は接触面の傷や微細な打痕が精度劣化の主因である。使用後は可動部を緩めて応力を抜き、無水アルコールで軽く脱脂して防錆保管する。電子式は電池電圧低下時にゼロ点の再現性が落ちるため、定期交換と電圧監視が望ましい。輸送時はキャリングケースで衝撃を避け、定期的に基準治具でゼロ点チェックを行う。