ゴニオメータ
ゴニオメータは、物体や試料の角度を高精度に測定・設定するための計測機器である。光学式の反射・屈折の幾何学から読み取るタイプ、分度円とバーニヤで読み取る機械式、X線回折装置に組み込まれる多軸ステージ、接触角を評価する表面ぬれ測定用、さらには医療・リハビリ現場で関節角度を測る可搬式など、用途ごとに設計が最適化される。一般に分解能は1°〜1′程度から、精密器では1″オーダーまで到達し、繰り返し精度・偏心・バックラッシの小ささが性能を左右する。産業現場では光学素子のアライメント、結晶方位の決定、機械組立の角度出し、表面改質の評価などで中核的な役割を担う。
原理
光学式ゴニオメータは「入射角=反射角」の法則を利用し、コリメータ光源と望遠鏡(テレメータ)で角度差を読み取る。機械式は分度円とバーニヤ目盛により角度を高精度に読み取り、微動ネジやウォームギアで微小回転を与える。接触角用ではカメラで液滴のシルエットを取得し、Young–Laplace式に基づく輪郭フィッティングから接触角を算出する。XRDではθ–2θ、χ、φなど複数軸の回転ステージで回折条件を満たし、回折ピーク位置から結晶方位や面間隔を決定する。
構成要素
代表的構成は、基台、回転テーブル(分度円・クランプ付)、微動機構、指示系(バーニヤ・エンコーダ)、および治具(試料ホルダ、チャック)である。光学式では光源・スリット・コリメータ・望遠鏡、XRDではθ–2θ同軸ステージと検出器、接触角用では水平ステージ・シリンジ・撮像系が加わる。高精度化のためにクロスローラベアリングやプレロード機構、熱膨張を抑える材質選定、偏心補正のための芯出し機構が備わる。
種類
- 機械式:分度円+バーニヤで読み取る堅牢型。現場の角度出しに適する。
- 光学式:反射・屈折を利用し、プリズムや回折格子の角度測定に用いる。
- 接触角用(contact angle goniometer):表面の親水・撥水性を角度で評価する。
- XRD用:θ–2θ・χ・φの多軸ゴニオメータで結晶解析を行う。
- 位置決めステージ:研究・FA用の微小角度調整(ピエゾ・DD駆動を含む)。
- 医療用:関節角度計として可搬・簡易な構造を採る。
仕様と性能指標
主要仕様は測定範囲(例:±10°〜360°)、分解能(1°/1′/1″)、示差精度・繰り返し精度、真円度・同心度、バックラッシ、耐荷重、ステージ面の平面度、熱ドリフト、エンコーダの線分解能などである。XRD用ではθ–2θ同軸度、ジオメトリエラー(半径誤差、ランナウト)、検出器位置の再現性が重要となる。接触角用途ではカメラ解像度、光学倍率、輪郭抽出アルゴリズムが再現性に影響する。
校正とトレーサビリティ
機械式は角度基準(標準分度円、サインバーとゲージブロック)で校正し、周期誤差をマップ化して補正する。光学式はオートコリメーションを用い、ゼロ合わせと視準誤差の評価を行う。回転エンコーダは基準ロータで較正し、熱環境を一定に保つ。XRDでは標準粉末を用いて2θのゼロ点・半値幅・ピーク位置の系統誤差を確認し、試料偏心・高さずれを補正する。
使用手順
- 設置:水平出し・固定・温度馴染みを確保する。
- ゼロ設定:基準面・基準試料でゼロ点を合わせる。
- 測定:微動で目標角に追い込み、視差を避けて読み取る。
- 反復:往復法でヒステリシスを評価し、平均化する。
- 記録:条件(温度、荷重、光学配置)と併せて保存する。
応用
ゴニオメータは光学素子の角度検査(プリズム角、回折格子定数)、レーザ共振器のミラー調整、機械組立のジグ角度設定、表面改質やコーティングの接触角評価、半導体ウェハの結晶方位決定、XRDによるテクスチャ・残留応力解析、ロボットティーチングの姿勢出し、医療分野の関節可動域(ROM)評価などに広く用いられる。
選定のポイント
必要精度とストロークのバランス、駆動方式(ウォームギア、ピエゾ、ダイレクトドライブ)、剛性と耐荷重、取付互換性(ねじ規格・取付ピッチ)、エンコーダ有無、ロック機構、温度係数、振動・騒音、保守性(潤滑・清掃)を総合評価する。バックラッシとヒステリシスの小ささ、ゼロ点再現性、長期安定性が品質に直結する。画像処理を伴う接触角系では光学条件の再現性も選定要件となる。
関連機器・補足
角度計測の上流・下流には、平面度や直角度を担保する基準器、光軸合わせに用いるオートコリメータ、輪郭・寸法の確認に用いるプロファイルプロジェクタ、段差や高さ基準の設定に用いるハイトゲージ、幾何公差の検証に用いる真円度測定機・表面粗さ計などがある。これらを組み合わせることで、角度だけでなく幾何形状全体の精度保証が可能となる。