真円度測定機
真円度測定機は、円形部品の外周または内周が理想円からどれだけ逸脱しているかを高精度に評価する測定装置である。エアベアリングを備えた高回転精度のスピンドルや、ナノメートル級の変位を検出するコンタクト式ピックアップ(または光学式センサ)を用い、回転に伴う半径変化を連続的に取得し、円近似とプロファイル解析により真円度値を算出する。自動センタリング・レベリング、帯域フィルタ、偏心補正、最小二乗円などの評価アルゴリズムを搭載し、加工現場から研究開発、品質保証まで幅広く用いられる。
測定原理
真円度測定機の基本は「回転法」である。被測定物を高精度スピンドル上で回転させ、半径方向の微小変化を検出器が電気信号として出力する。これを円周角に対応付けて極座標データとし、理想円との偏差を計算する。偏心・傾きの影響はセンタリング(心出し)とレベリング(傾き補正)で低減し、残留成分は数理的に分離する。長波長の形状誤差(うねり)と短波長の粗さ成分は、装置内のデジタル帯域フィルタで分け、真円度評価に必要な周波数帯を抽出する。往復走査を用いる「半径法」や、非接触の光学式測定も用途に応じて用いられる。
主要構成要素
中核は回転精度の高いスピンドル/ロータリテーブルで、エアベアリングにより摩擦と振れを抑える。検出器はコンタクト式ピックアップが一般的で、微小変位をアナログ出力し、A/D変換器でディジタル化する。自動センタリング・レベリング機構、微動ステージ、芯押し台、治具(Vブロック、チャック、コレット)が段取りの再現性を担保する。演算部は最小二乗円などの評価法、帯域フィルタ、グラフィック表示、統計処理、レポート作成、外部データ出力(USB/LAN)を備える。
評価パラメータと算出法
代表的な評価は最小二乗円法(LSC)で、観測点から最小二乗円までの半径偏差の最大値を真円度とする。最小領域法(MZC)は最大内接円と最小外接円の半径差を最小にする組を探索し、その差を真円度とする。円周平均法(MCC)や極値法(MIC/MOC)も利用される。加えて、うねり成分、偏心量、位相、ピーク数、最大半径差(Peak-to-Valley)などを併記し、総合的に形状を評価する。
測定手順
①前準備:温度安定化、装置ウォームアップ、清掃。②段取り:治具選定、軽クランプで応力を低減。③心出し:自動センタリング・レベリングで偏心・傾きを取り、指示残を最小化。④条件設定:回転速度、サンプリング数、フィルタ(うねり分離の上限次数)、評価法を選択。⑤測定:1回転以上を取得し、必要に応じ多回転アベレージング。⑥解析:プロファイルと偏差マップを確認し、真円度値と付随量を保存。⑦報告:トレーサブルな条件・結果・判定基準をレポート化する。
誤差要因と対策
主な誤差要因は、スピンドルの回転振れ、検出器の直線性・ドリフト、プローブ力によるワークたわみ、偏心・傾き、治具の同心度、熱膨張、外乱振動・気流、電気ノイズである。対策として、エアベアリングの健全性維持、適正クランプ、心出し最適化、アベレージング、温度管理(恒温)、防振台使用、フィルタ設定の妥当化、定期点検を行う。不確かさは繰返し性、校正標準の不確かさ、分解能、ドリフト等を合成して見積もる。
トレーサビリティと校正
国家計量標準へ連なるトレーサビリティを確保するため、標準球やマスターリング、アーティファクトを用いた校正を実施する。スピンドル回転精度の検証、ピックアップ直線性の確認、帯域フィルタと評価アルゴリズムの妥当性確認を計画的に行い、校正証明書と測定条件の記録を保管する。定期的な自己診断や環境監視ログの取得は、監査対応や品質保証に有効である。
応用分野
真円度測定機は、ベアリング内外輪、歯車ブランク、油圧・空圧バルブスプール、電動機ロータ、燃料噴射系、ピストン・シリンダ、医療用シャフト、コネクタフェルール、精密金型キャビティなどで用いられる。加工プロセスの安定化、機械の状態監視(プロセスキャパビリティ指数の管理)、受入検査・工程内検査・出荷検査の各段階で、図面の幾何公差(真円度、円筒度、同心度等)との整合を評価する。
選定ポイント
選定では、スピンドル回転精度、最小分解能、測定可能径・高さ、最大ワーク質量、検出器レンジ、アーム形状、非接触計測の有無、フィルタ設定範囲、評価法の実装(LSC/MZC/MIC/MOC)、自動センタリング・レベリングの能力、解析ソフトのグラフィック機能、レポート出力(PDF/CSV)、外部I/O(USB/LAN)、保守体制、教育メニュー、据付要件(防振・空気源)を確認する。
運用・保守の実務
毎日の清掃と基準治具での点検、温湿度・気流・振動の管理、ウォームアップ時間の遵守、プローブ接触力の最適化、治具の摩耗点検、ソフトウェアのバージョン管理、測定手順書の整備が品質を左右する。異常傾向の早期検知には管理図が有効で、設備保全と連携した予防保全を行う。教育では「心出しの合理化」「フィルタ設定と評価法の使い分け」「不確かさ思考」を重点的に習得する。