レバー式ダイヤルゲージ
レバー式ダイヤルゲージは、スタイラス(測定子)を枢支点で揺動させ、微小な変位を歯車機構で拡大して指針で示す比較測定器である。一般に「テストインジケータ(test indicator)」とも呼ばれ、プランジャ式ダイヤルゲージに比べて接触方向の自由度が高く、狭所や段差縁、穴縁の「振れ」確認に適する。旋盤やフライス盤でのセンタリング、平行・平面度の確認、治具のゼロ合わせなど、工作機械の段取りで広く用いられる。測定レンジは小さいが分解能が高く、繰返し精度に優れるため、製造現場の基礎的な比較測定に不可欠の道具である。
構造と各部名称
レバー式ダイヤルゲージは、スタイラス(測定子)、支点(ベアリング)、セクタギヤとピニオンからなる拡大機構、指針・目盛板、ゼロ調整機構、取付用ステムや燕尾溝で構成される。スタイラス先端の接触球(ルビーや超硬)で被測定物に軽圧で追従し、その角度変化がセクタギヤに伝達され、指針の角変位として読み取る仕組みである。取付はφ8 mmステムや燕尾溝クランプが一般的で、マグネットスタンドやアームと組み合わせて使用する。
代表的な仕様
- 測定範囲:±0.2〜±0.8 mm程度(機種による)
- 最小目盛:0.01 mm〜0.001 mm
- 測定方向:左右切替(リバーシブル)に対応する機種が多い
- 接触力:小さく一定で、薄物や精密面を傷めにくい
- 取付:φ8 mmステム、燕尾溝、耳金具など
測定原理とコサイン誤差
レバー式ダイヤルゲージは角度変位を読むため、スタイラスの当て角によりコサイン誤差が生じる。多くのメーカーは特定の基準角(例:おおむね約12°)で指示が真値に一致するよう設計しているため、取扱説明に従い、スタイラスが被測定面の接線方向に近い姿勢で、指定角度を守ることが重要である。角度が外れるほど真値との差が増すため、段取りではアーム高さとヘッド角を微調整し、同一点の往復で指示差(ヒステリシス)が最小になる姿勢に追い込む。
用途と作業シーン
- 工作機械の芯出し:四爪チャックでの外径・内径の同芯出し、円盤の面振れ測定
- テーブルの平行・平面度確認:砥石/バイスのゼロ出し、段取り基準の再現性確保
- 穴縁・段差・狭所:プランジャ式が入りにくい箇所の比較測定
- 組立・検査:位置決め治具の基準合わせ、軽荷重での微小段差評価
- 座面や締結部の当たり確認:例えばボルト周辺の座面振れ確認など
使い方(基本手順)
- 取付:スタンドの関節を仮締めし、被測定物にスタイラスが軽く追従する位置に配置する。
- 姿勢合わせ:指定角度に近づけ、スタイラスが滑らず転がる接触姿勢を作る。
- ゼロ調整:基準位置でベゼルを回しゼロ合わせ。左右走査してゼロ復帰を確認する。
- 測定:対象周囲をゆっくり走査し、最大/最小指示から振れ量を読む。
- 再現性確認:位置を離れて戻し、同じゼロ・同じ指示が出るかをチェックする。
プランジャ式との違い
レバー式ダイヤルゲージは接触子が横方向に動くため、接触方向の自由度が高い反面、角度依存の誤差管理が必須である。プランジャ式は直線運動でコサイン誤差の影響が小さく、より長い測定範囲を得やすい。一方で、狭所や穴縁の振れ測定、微小段差の高分解能評価ではレバー式が有利である。段取りでは両者を使い分け、目的に応じたセッティングを行うのが定石である。
取り付けとアクセサリ
安定した測定には剛性の高いスタンドが不可欠である。柱式・関節式・スイッチ式マグネットベースのいずれでも、たわみや共振を避け、指針が止まるまで待ってから読む。燕尾溝クランプは締め過ぎず、ヘッドの角度は指定角に近づける。スタイラスは長さや球径の異なる交換品が用意され、被測定物の材質や面粗さに合わせて選ぶ。防油・防塵カバー付き機種は現場適性を高める。
校正と管理
レバー式ダイヤルゲージの校正は、ゲージブロックや比較測長器で既知量の変位を与え、ゼロ点、指示の直線性、繰返し精度、ヒステリシスを確認する。スタイラス球の摩耗やベアリングの摺動感、ギヤ噛み合いのバックラッシ増大は指示の安定性を損なうため、定期点検と清掃、異常時の整備を行う。保管は防錆・防塵に留意し、衝撃を避け、荷重をかけたまま放置しない。
選定のポイント
- 分解能とレンジ:必要な判別能を満たしつつ、工程に適合する測定範囲を選ぶ。
- 指示方式:左右目盛対応や逆回転対応、オーバーストップ機構の有無。
- 接触子:球径・材質・長さ。ワーク材質や面粗さとの相性。
- 耐環境性:防油・防塵、耐クーラント性、現場保全の容易さ。
- 取付互換:φ8 mmステム、燕尾溝寸法、スタンドとの適合。
測定のコツと注意
スタイラスは「押し付けすぎない」。滑りやバウンドは誤差要因であり、最小限の接触力で一定速度の走査を心掛ける。段差越えでは指針が一瞬振れるため、最大・最小指示の読み位置を安定させる。角度が変わる測定ではコサイン誤差を想定し、ジオメトリを整えるか、必要に応じて補正を行う。段取り後は、基準点に戻ってゼロ復帰を確認し、温度変化や設置剛性の影響を切り分けることが重要である。