スラッジ|排水処理で発生する泥状の沈殿物

スラッジ

スラッジ(sludge)は、液体から分離・沈殿した泥状の固形物を指す総称である。日本語では「汚泥」と訳される。排水処理で生じる沈殿物だけでなく、劣化した潤滑油に生じる不溶分、研削加工で出る切りくず混じりの泥、めっき排水を中和したときの沈殿物なども同じ名で呼ばれ、発生源によって成分はまったく異なる。廃棄物処理法では産業廃棄物20種類のひとつに分類され、国内の産業廃棄物排出量の約4割を汚泥が占めている。量が多いうえ水を大量に含むため、処理コストがかさみやすい。

活性汚泥法とともに広まった用語

工業用語として定着したきっかけは、1914年に英国マンチェスターでArdernとLockettが発表した活性汚泥法である。排水に空気を送り込むと微生物の塊ができ、有機物を分解しながら沈殿する。この塊が「activated sludge」と名付けられ、沈殿物を指す言葉として世界中の下水処理技術に広まった。日本では1922年に東京の三河島汚水処分場が運転を始め、ここから汚泥の処理と処分が自治体の課題として扱われるようになった。

発生源による性状の違い

同じスラッジでも、主成分と含水率の違いによって処理の考え方は大きく変わる。代表的な4種類を比べると次のようになる。

種類 主な発生源 主成分 脱水後の含水率目安 主な処理・処分
下水・有機性汚泥 下水処理場、食品工場 微生物の死骸、有機物 75〜85% 焼却、消化、肥料化
めっきスラッジ 表面処理工場 金属水酸化物 60〜75% 管理型埋立、金属回収
研削スラッジ 軸受・自動車部品工場 鉄粉、砥粒、油分 圧搾後10%前後 ブリケット化して製鋼原料
オイルスラッジ エンジン、油圧装置、タンク底 酸化生成物、すす、水分 (油分が主体) 焼却、燃料化

余剰汚泥の発生と沈降性

活性汚泥法では、増えすぎた微生物を定期的に引き抜く必要があり、これを余剰汚泥と呼ぶ。反応槽の微生物濃度(MLSS)はおおむね1,500〜3,000 mg/Lに保たれ、その範囲を超えた分がスラッジとして排出される。

SVIによる管理

沈みやすさの指標にはSVI(汚泥容量指標)が使われる。1 Lのメスシリンダーで30分静置し、沈殿した汚泥1 gが占める体積をmLで表した値で、50〜150 mL/gが正常域とされる。200 mL/gを超えると糸状菌が増えるバルキングを疑い、沈殿池から汚泥があふれて処理水が濁る原因になる。

含水率と体積の関係

処分費の多くは重量または体積で決まるため、含水率の管理が経済性を左右する。含水率w(%)の汚泥を脱水したときの体積比は、固形分量が変わらないと考えて次の式で求める。

V2 / V1 = (100 − w1) / (100 − w2)

例えば含水率98%の濃縮汚泥を80%まで脱水すると、体積は2 ÷ 20で1/10になる。逆に80%を78%に下げても体積は約9%しか減らない。脱水機の性能比較で「含水率が2ポイント違う」と聞くと小さな差に見えるが、年間数千トンを出す工場では処分費が数百万円単位で変わる。

脱水方式の選び方

脱水の前には、PACや高分子凝集剤を加えてフロックを大きくするのが一般的である。高分子凝集剤の添加率は、固形分に対して0.5〜1.5%程度が目安とされる。そのうえで、性状と処理量に合わせて次の方式から選ぶ。

  • ベルトプレス:2枚のろ布で挟んで搾る。構造が単純で、有機性汚泥の大量処理に向く。
  • スクリュープレス:低速回転で搾るため消費電力が小さく、騒音も少ない。中小規模の食品工場に多い。
  • フィルタープレス:加圧ろ過で含水率60%前後まで下げられる。無機系のめっきスラッジで実績が多い。
  • 遠心分離機:数千Gの遠心力で分離する。設置面積が小さく密閉運転できるため、臭気対策に有利。

実際の選定では、薬品代と電気代を合わせたランニングコストを、処分費の削減額と比べて判断することになる。フィルタープレスはケーキの含水率が低い反面、ろ布の目詰まりによる交換と、ケーキはく離の手間が現場の負担になりやすい。

機械内部に溜まるオイルスラッジ

エンジンオイルや油圧作動油が高温で酸化すると、樹脂状の不溶分が生じる。そこにブローバイガス由来のすすや結露水が混ざると、オイルパンやフィルターに黒い泥が溜まる。油温が100℃を超える状態が続くと酸化は急速に進み、作動油ではバルブの固着や応答遅れにつながる。清浄度の評価にはISO 4406やNAS 1638の等級が使われ、メンブレンフィルターにろ過した残分の色や重量で劣化を判断する方法が現場では手軽である。

研削スラッジを有価物に変える工夫

軸受や歯車の研削工程から出るスラッジは、鉄分が80%を超えることも珍しくない。ところがクーラントが数十%残った状態では製鋼原料として引き取られず、処分費を払って産業廃棄物として出すしかない。そこで圧縮成形機で油分を絞り、円柱状のブリケットに固めて売却する工場が増えている。ここで注意したいのは、水溶性と不水溶性のクーラントを同じ回収ラインに流さないことである。両者が混ざると乳化して分離しにくくなり、せっかくの圧搾工程が機能しなくなる。

処分時の法的な線引き

産業廃棄物の汚泥を管理型最終処分場に埋め立てるには、含水率を85%以下にする必要がある。重金属を含むめっきスラッジは、溶出試験で鉛0.3 mg/Lなどの判定基準を超えると特別管理産業廃棄物となり、保管・運搬の基準が一段厳しくなる。油分を多く含むものは「汚泥」と「廃油」のどちらに当たるかで委託できる処理業者が変わるため、性状分析の結果をもとに排出事業者が区分を決めて、マニフェストに正しく記載しなければならない。近年は下水汚泥をセメント原料や固形燃料として使う例も増え、埋立量は大きく減った。

コメント(β版)