ヨハン・ハインリヒ・ペスタロッチ J.H.Pestalozzi
ペスタロッチ(1746~1827)は、スイスの教育学者・教育家である。シュタンツ、イベルドン孤児院の学長を務めた。主著『隠者の夕暮』(1780)『立法と嬰児殺し』(1783)『リーンハルトとゲルトルート』(1781~1787)『探求』(1797)『シュタンツ便り』(1799)『ゲルトルートはいかにその子を教えたか』(1801)『白鳥の歌』(1826年)。スイスのチューリッヒの医者の子どもとして生まれる。ゲーテと同世代でチューリッヒの大学でルソーに影響を受けた。スイスのノイホーフなどで、孤児や貧しい家の子どものための学校を建てて教育に献身し、教育界に大きな影響を与えた。このノイホーフでの時代に発表した『隠者の夕暮れ』の冒頭で、「玉座の上にあっても、木の葉の屋根の蔭に住まわっても、本質において同じ人間」であると記し、すべての人間は生まれながらに平等であると主張した。自らの教育理念に基づき、子どもたちに直接的に教育を行った。このペスタロッチの教育学の成果はフレーベルやヘルバルトらに大きな影響を与えた。
目次
ペスタロッチの著作
- 『隠者の夕暮れ』:すべての人間は生まれながらに平等
- 『リーンハルトとゲルトルート』:民衆の問題の根底には貧困があり、民衆の救済のためには経済的な自立が必要。
- 『シュタンツ便り』シュタンツで実施した教育の記録。「自然のほうが人間より上手な教師である」「君の言葉の練習を中止せよ。小鳥や虫のほうが、いっそう多くのことをよく教えてくれているのだ」
- 『ゲルトルート児童教育法』ペスタロッチの教育方法。3H主義(Head・Heart・Hand)について。
- 『幼児教育の書簡』子どもをどうして教育すればいいか。「人間のすべての魅力を子どもは与えられているが、その能力はいずれも発達していないで、まだ開いていない芽のようなものである。その芽が開くとおのおのの葉が開いて、開かない葉は一枚も残らない。教育の過程はこのようなものである。」
3H主義 – 頭(Head)と心(Heart)と手(Hand)
ペスタロッチは、人間の自然=本性に社会的階層の区別なく平等を認めた。そして、子どもを身体的、感覚的存在としてみなすのと同時に精神的道徳的存在と見なした。無から有がうまれるはずなく、ひとは生まれながら、人間のうちに精神的道徳的な萌芽があることを認めなくてはならないからである。知的、道徳的、身体的な三つの素質(頭、心、手)を調和的に、発達に則して=自然に則して、成長させるべきとした。では、その三要素をどのように発達させるべきか。ペスタロッチは、人間が事物の認識をどのように行うかということについて、それは自然に備わっている直観の力に基づく教育方法が必要だと考えた。事物の本質として、語、形、数だが、この本質の直観に、まず、感覚によって事物を観察するとともに、思考を働かせ、その本質を弁別する力を訓練が必要になる。その過程で段階的に基礎的な要素から複雑なものへと内容が展開されていく。たとえば、形の直観教授では、徹底して、事物の形、輪郭を測定によって、正確に捉えること、そして、その後、図形の基礎と見なされる正方形を分解し、直線、平行線、角、円などをつくり、観察し、命名し、それらをもとに、その他の図形を正確に捉えていくことになる。図画や書くことは、このときに、事物を正確に模写することで形作られていく。ペスタロッチの教育方法において、直観主義に立ち、まず実物の提示をその基礎に置いている。
ペスタロッチの道徳教育
- 家庭生活で愛と信頼にもとづき、道徳心を養う。
- 身近な直観や経験によって感情に働かせ、自己抑制力や正義への態度を身につける。
- 道徳的な見方や考え方を訓練し、正しさを見分ける。
ペスタロッチの母親からの幼児教育
- 規則正しく幼児の世話する。
- 同じ習慣を身につけさせる。
- 我が子の要求を意のままに叶えない。