基本的信頼|エリクソン,アイデンティティ

基本的信頼 basic trust

基本的信頼(basic trust)とは、エリクソンの提唱した概念。育ててくれる親への、人格的な信頼感を通し、自分がこの世に存在することを肯定的に捉え、人生には生きる意味や生存する価値があり、世界は信頼するに足るものだという感覚を持つこと。エリクソンが乳児期における発達課題としたもので、生きていて大丈夫だという信頼感や自己肯定感が、やがて自分が本当の自分であるという感覚(アイデンティティ)を養う。他人が信頼をして期待してくれているものに自分はなるのだという。基本的信頼は、主に生後1年の幼児がもつ世界への態度を意味し、青年期に向け、あるいは生涯に渡り、自分自身への信頼と他者との関わりに大きな影響を与えると考えらる。また、基本的信頼の有無は、教育論を超えて心の健康に関連しうるとされている。健全な基本的信頼を獲得することは、子どもの豊かな成長のために必要なことである。

基本的信頼

基本的信頼

基本的信頼を経験する具体的な例

基本的信頼は、幼児期に育ててくれる父親、母親等との関わりの中で育むことで養われる。従って、幼児期に大人とふれあう時間を多くとり、信頼感や安心感を与えることが重要な影響を与える。

  1. おむつの交換
  2. 抱っこ
  3. 子守唄
  4. 添い寝
  5. 絵本

J.ボウルビィの見解

母親は児の要求する事柄、たとえば抱く、あやす、哺乳する、オムツを替えることなど、その時々の要求をすべて受け入れて自分を守ってくれる存在である。したがって母親は、児にとって絶対的な信頼を寄せて絶対的に依存していけるものという、基本的に安全な人間関係を保つことができる状態、つまり端的にいえば、「母親は自分の安全基地である」と児が確信している状態を心の健康といえよう。このための母親の行動として、授乳、抱擁、声かけなどによる児と母親との間の頻繁で持続的な身体接触(肌の触れ合い)によって、児の不安を和らげる必要がある、と母子の愛着行動(アタッチメント)の体験の必要性が強調されている。

服部祥子の見解

基本的信頼感とは、母がわが子に微笑みかけ、話しかけ、愛撫し、心からの愛着行動を繰り返し与えるとき、赤ん坊の心には深い快感が溢れ、自分は愛され、守られているという純粋な安らぎの感情が体験されることによって培われるものである。一方、乳児といえども同時に自分の欲求が満足されない体験にも当然遭遇する。その時に、乳児は自己についても外界ついても不信の感覚(mistrusut)を芽生えさせる。乳児はこの不信を感じることを体験することも重要である。

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