Vブロック|丸棒支持・直角出しに用いる治具

Vブロック

Vブロックは、円柱材や円管などの円筒ワークを安定して支持・位置決めするための精密治具である。上面に90°のV溝(プリズム)をもつ単体またはペアのブロックで構成され、測定・ケガキ・切削加工時の姿勢保持と基準出しに用いる。一般に底面と側面は基準面としてラップ仕上げされ、V溝角・底面平面度・側面直角度などが高精度に保証される。機械計測ではダイヤルゲージテストインジケータと併用して振れ・同心度・偏心量を評価し、加工段取りではフライスバイスやクランプと組み合わせて確実に固定する。マグネット式は鉄系ワークの素早い着脱に有効である。

形状と構造

VブロックのV溝は標準的に90°で、両端が貫通した直線状が基本である。V頂点は微小面取りが施され、円筒が線接触に近い安定支持となる。底面は同一高さのペアで提供され、並べて使用することで長尺シャフトにも対応できる。固定用のT溝やタップ穴、側面基準のスクエア面を備えるもの、上面にU字形クランプを載せるもの、永久磁石を内蔵したマグネット式などバリエーションがある。クランプはスイング式やトグルクランプ併用が多い。

  • 標準角度:90°(用途により60°・120°もある)
  • 構成:単体、左右対称ペア、磁力ON/OFF式
  • 付属:押さえ金、U字クランプ、センタ止めピン

用途(測定・ケガキ・加工段取り)

測定では、円筒ワークをVブロックに載せ、上部を軽くクランプして回転させながらテストインジケータで円周振れ・端面振れを読む。ケガキではケガキ定盤上でスクライバーと併用し、軸芯線や割出し線を正確に引く。加工ではフライス盤旋盤外径研削の段取りで位置決め治具として機能し、穴あけやキー溝加工の偏心抑制に寄与する。磁石式は反復段取りの能率を高める。

精度項目と校正の考え方

Vブロックの品質は、底面平面度、側面直角度、V溝角度誤差、左右高さ差、V頂点の真直度、V溝の対称度などで評価する。環境は20℃基準、ワークと治具の温度平衡後に測る。ブロックゲージやゲージピン・円筒マスタを用い、インジケータ走査で角度・平行度の偏差をμmオーダで確認する。等級はJISやメーカー規格で複数段が用意され、ラボ用途は高等級、作業用は実用等級を選ぶ。校正周期は使用頻度・負荷・保管条件に応じて年1回程度を目安とする。

  • 代表公差:平面度・直角度は数μm〜十数μmレンジが目安
  • 確認治具:ゲージピン、円筒マスタ、インジケータスタンド
  • 温度管理:20℃、乾燥・無塵・防錆配慮の保管

材料・熱処理・表面仕上げ

一般的なVブロックはねずみ鋳鉄や合金工具鋼製である。鋳鉄は減衰能に優れ測定向き、工具鋼は焼入れ(HRC58–62)で耐摩耗性が高い。精密面はスクレイピングやラップで仕上げ、V溝はカエリ除去と微小面取りで初期損耗を抑える。マグネット式は永久磁石内蔵で、磁極切替のON/OFFによりワークの吸着・解放を行う。防錆油の薄塗りと防湿保管が寿命を左右する。

選定のポイント

Vブロックの選定では、ワーク径の対応範囲、許容荷重、底面高さのペア一致、V溝角の規格適合、クランプ有無、磁力機構の有無、取付穴・T溝の有無を確認する。測定主体なら平面度・直角度・V角精度を重視し、段取り主体なら固定・位置決めのしやすさと耐久性を優先する。長尺や重量物は大きめサイズのペアと追加支持を組み合わせる。

  • ワーク径:最小〜最大径のカバーと余裕
  • 精度:平面度・V角度・左右高さ差の仕様値
  • 使い勝手:U字クランプ、タップ穴、Tスロット構成

使い方の要点と安全

支持面とワークは脱脂清掃し、切粉や錆を除去する。薄肉管は過大クランプで楕円化しやすいため、当て板やソフトジョーを介して面圧を分散する。磁石式は微細な鉄粉付着が精度を損なうため、使用ごとに清掃する。振れ測定では指示計をマグネットベースに固定し、ゼロリセット後にゆっくり回転させる。穴あけやキー溝加工では、底面とテーブルの直角度を確認し、押さえ金とクランプ力のバランスを取る。

  • 締付:クランプは均等に、必要最小限で固定
  • 保護:座布・銅板・樹脂板で当たり面を保護
  • 点検:V頂点の欠け・バリは早期に修整

よくある不具合と対策

V角誤差は角度ゲージとインジケータで実測し、許容外なら修正研磨または使用区分を変更する。底面傷はスタンドストーンで微修整し、許容外は再ラップを検討する。磁石式の吸着低下は極面汚れ・磁路の錆が原因であることが多く、分解清掃や極面の再仕上げが有効である。クランプ曲げは過大締付や片当たりが主因で、押さえ位置と当て板見直しで解消する。

関連治具・周辺機器

Vブロックは、Vプリズム、センタ、Vアングル、平行ブロック、角度定盤などと併用される。段取りではベンチバイスパイプバイスと組み合わせ、測定ではダイヤルゲージテストインジケータマグネットベースが基本セットとなる。ケガキ用途ではケガキ定盤スクライバーを組み合わせ、作業の再現性を高める。