ダイヤルゲージ
ダイヤルゲージは、プランジャ(スピンドル)の微小な直線変位を歯車機構で拡大し、円形目盛の指針で読み取る接触式の長さ測定器である。機械加工部品の芯出し、平面度・平行度の確認、振れ測定、治具位置決め、機上検査などに広く用いられる。分解能は一般に 0.01 mm 程度、細目では 0.001 mm の指示もあり、測定範囲は 0〜10 mm 程度が代表的である。ベゼルを回してゼロ合わせができ、リミット針により合否判定にも活用できる。別称としてダイヤルインジケータ、英語では dial indicator と呼ぶ。
構造と作動原理
ダイヤルゲージは、先端の接触子と一体のプランジャ、ラック・ピニオンとギヤ列、復帰ばね、軸受、指針、目盛板、ベゼル、リミット針で構成される。被測定物に接触子を当てるとプランジャが直線移動し、ラック・ピニオンで回転に変換され、ギヤ比により拡大されて指針が回転する。復帰ばねが常に一定方向へ押し付け力を与えるため、測定方向は主に一方向が基準となる。高精度品では軸受の摩擦や歯車のバックラッシュを低減し、ヒステリシスを抑制する設計が採られる。
測定範囲・指示精度・分解能
- 測定範囲(測定子の全行程)は 1 mm、5 mm、10 mm などが一般的で、範囲が広いほど分解能や繰返し性の確保が難しくなる。
- 分解能は 0.01 mm が標準、精密用途では 0.001 mm が用いられる。目盛は 0〜100 等分が多く、1 回転で 1 mm の指示とする設計が典型的である。
- 指示精度は全行程にわたる誤差、繰返し性、偏差(偏心)などで評価される。JIS では等級や許容差の考え方が規定される。
種類(代表例)
- プランジャ型:最も一般的な直進運動入力型。機上測定や治具への固定に適する。
- てこ式(テストインジケータ):微小ストロークの角度てこで拡大する方式。狭所・微細部の当たり確認や平面度の微差確認に用いる。
- 耐環境型:防塵・防滴構造、耐衝撃機構、長寿命軸受などを備える。
- 表示多機能型:リミット針、回転カウンタ付、反転目盛など特定用途向けの表示機構を持つ。
取り付けと姿勢誤差
ダイヤルゲージはマグネットスタンドやコラムスタンド、測定スタンドに固定して使う。接触子は被測定面の法線方向(直角)にできるだけ一致させる。角度がずれるとコサイン誤差が生じ、真の変位より小さく指示する。支柱やアームの剛性が不足すると微振動で値が揺らぐため、クランプ部の締結や支点位置を最適化する。接触力が過大だとワークを撓ませることがあるので、ばね力と当て方に留意する。
使用手順(ゼロ合わせから読取りまで)
- 測定面と接触子を清掃し、切粉・油膜を除去する。
- プランジャの中間位置付近に予圧を与え、ベゼルを回して目盛ゼロに合わせる。
- 測定点へ接触子を滑らかに当て、指針が安定したら指示値を読む。
- 繰返し測定で再現性を確認し、必要に応じて平均化する。
- 合否判定はリミット針を基準値に合わせ、針の振れが範囲内に収まるかで判断する。
校正とトレーサビリティ
ダイヤルゲージの信頼性を担保するため、基準器(ゲージブロック、段差標準器)で定期校正を行う。ゼロ点、各指示点の偏差、ヒステリシス、繰返し性を確認し、結果を記録してトレーサビリティを確保する。温度は 20 ℃基準とし、ゲージと器差の合成不確かさを見積もる。プランジャの偏摩耗や軸受のガタ、歯車のバックラッシュ増大が見られた場合は整備か交換とする。
測定不確かさと誤差要因
- 幾何学:法線ずれによるコサイン誤差、接触点の滑り、先端形状による曲面追従誤差。
- 力学:接触力過大による撓み、アームの弾性変形、機械振動。
- 機構:軸受摩擦、ばねヒステリシス、歯車バックラッシュ、目盛の偏心。
- 環境:温度変化による熱膨張、油膜や汚れ、磁力による吸着力の変動。
- 人為:目視読み取りの視差、ゼロ合わせ不良、当て方のばらつき。
代表的な用途
- 旋盤・マシニングセンタでの芯出し、四爪チャックの調整。
- 平面度・平行度・直角度の点検、基準面からの段差測定。
- シャフトの振れ、ベアリングのガタ、カムのリフト量確認。
- 治具・金型の位置決め、組立時のクリアランス監視。
- 設備保全での直線案内のピッチング・ヨーの簡易確認。
選定の要点
- 必要な測定範囲と分解能、全行程での許容誤差。
- てこ式かプランジャ型か、ワーク形状と作業空間に適う形式。
- 耐環境性(防塵・防滴)、耐衝撃性、磁場の影響。
- ベゼルの固定性、リミット針・カウンタの有無、目盛の視認性。
- 取付部(ステム径、背面取付)と既存スタンドの互換性。
- 接触子の先端材質と形状(平面、球面、円錐、ルビー、超硬)。
保守・取扱い
- 使用後はプランジャを解放し、清拭して防錆油を薄く塗布する。
- 側圧を加えない保管、衝撃の回避、過行程ストッパの活用。
- 定期点検でゼロ点ずれ、針の戻り、引っかかりを確認する。
- 先端交換時はねじ部の清浄と適正トルクでの締結を守る。
接触子と先端材質の選択
硬質鋼は汎用、超硬やルビーは耐摩耗性と滑り性に優れる。球面先端は斜面での当たりが安定し、平面先端は段差測定で有効である。軟質材や鏡面では押し付け力を低めにし、痕跡を避ける。
関連する測定器と使い分け
微小寸法の絶対測定にはマイクロメータ、段差・高さの基準合わせにはハイトゲージ、面粗さの評価には表面粗さ計が用いられる。ダイヤルゲージは相対変位の指示に長け、加工プロセス内での迅速な合否判定や傾向管理に適する。校正済み基準器と併用することで、現場においても十分な信頼性で幾何公差の確認が可能である。