機械設計マネジメント|設計の方向性を示し、リスクと生産性を併せてマネジメントする

機械設計のマネジメント

機械設計マネジメントとは、創造的なアイデアを付加価値に変える具体策の方向性を取りまとめることである。これに加えて、方向性を検討する中でリスクを回避または最小化しつつ、最も効率的な生産性を実現することも含まれる。設計の方向性を示し、リスクと生産性を併せてマネジメントする必要があり、極めて高度なマネジメント能力が要求される。

機械設計マネジメントとは

機械設計マネジメントとは、企画、営業、開発、製造、流通、保守を分析・検討し、新しい付加価値のある機械・装置を実現することである。特に機械設計では、QCD(品質、費用、納期)を総合的に判断してマネジメントの最終ゴールを決める。一品ものでは無事に納入させること、量産品では開発を量産部門に受け渡すことを目的とする場合が多い。

QCD
  1. Q(品質):いかに良いものになるか
  2. C(費用):いかにコストが抑えられるか
  3. D(納期):いかに短い納期で考えるか。

機械設計マネジメントの範囲

機械設計の範囲は、開発上流での要件定義や仕様決定、機械部品設計、制御設計、筐体設計などが含まれる。設計物の規模も様々であり、大型発電プラント設備、半導体製造装置、航空機・自動車、産業ロボット、家電、雑貨など多岐にわたる。さらに、複数のユニットで構成される製品では、担当ユニットごとに設計業務の内容が大きく異なることもある。機械設計のマネジメントでは、それらをコントロールし、各チームの構成員をひとつの目標に進め成果を達成することにある。実機の開発だけでなく、社内・社外の関係者とのやり取りも多い。機械の知識だけでなく、経営、法律、貿易などの周辺知識も必要となる。

機械設計マネジメントの工程

機械設計マネジメントは、設計の指針を立て、それを設計メンバーと共有することから始める。自社の状況や市場ニーズを把握し、経営者の意向に応える形で開発戦略を立てる。スケジュールに落とし込んでいき、設計メンバーを動かす。

企画

通常、経営者の意向の下、企画は営業部や企画部などが主体的で行われることが多い。製造業では、開発部門(あるいは生産部門)が技術の知見の下、重要なサポートあるいは主体的役割を担う。市場調査、競合他社、顧客の声を聞くことで迅速に新しい製品を市場に投入することを目的とする。将来的な商品開発の計画を商品ロードマップといい、それを実現するための技術的な計画を技術ロードマップという。前者は経営部門、営業部門、企画部門によって、後者は開発部門(あるいは生産部門)によって主導的役割を担う。こうして出来上がった企画は開発部門にインプットされることでスムーズに開発を開始できる。

商品ロードマップ

商品ロードマップでは、おおよそ5から10年ぐらいを見据えた将来の商品を検討したものである。企画段階では重要で現在の技術と今後得られるだろう技術を組み合わせて戦略を立てる。

技術ロードマップ

技術ロードマップは、商品ロードマップと既存技術や今後獲得できるだろう要素技術を組み合わせて見込んだ技術の計画である。これに基づいて企画を作り上げる。

構想設計

機械設計マネジメントでは、詳細の設計に入る前に全ての内容についての設計方針を示す必要がある。多くの場合では営業部門がもってきた情報や企画部門がマーケテイングで市場ニーズに基づいた情報をもとに企画やより進んだ構想設計を行う。うわべの情報だけではなく、客先現場の声を聞くなどして情報精度を上げる必要がある。

市場ニーズの把握

まずは市場のニーズや期待を正確に理解し、それを設計に反映させることが求められる。顧客の視点を設計に取り入れることで市場における製品の競争力につながる。主に経営部門の経営戦略、企画部門や営業部門が集めた情報、技術的な課題を含めて開発を進める。

競合他社に対する差異化

機械設計のマネジメントの基本は市場と競合他社の把握から始まる。特に、競合他社との差異化を図るための方針を明確にすることが重要である。機械設計の最初の段階で競争力を握ることをスタートさせ、市場での競争力を確保する。

環境、法律、倫理

環境や法律面での精査も必要である。カーボンニュートラルや公害、SDGsを正確に把握する必要がある。法律、特に海外向けでは専門的な知識が必要である。また、法律を超えて、倫理的な側面も求められる。

機能設計

構想設計で固まった方針を実際の機能にまで落とし込んでいく設計工程が機能設計である。機能が決まれば、大まかな設計内容が決めていく。このとき、組み立てや加工と行う生産部門と議論を行い、また購買情報を購買部門と共有することで、スムーズに量産化を行う下地を作る。

新規設計・流用設計の判断

現在の設計の方法は既存の設計を母体とした流用設計が多く、設計方針は流用元の選定・変更の考え方が中心となる。新規設計の場合はチャレンジングな攻めの戦略であり、重要な役割を担う。それらの価値をメンバー全員と共有することで、プロジェクトを大きく進めることができる。

流用設計の場合

流用設計においては、市場のニーズを正確に把握したうえで、現在の機械や装置をベースに流用元を選定し、必要に応じてカスタマイズする。一から作るよりはるかに早く正確な設計が実現でき、業務の効率化、品質の向上が図れる。

新規設計の場合

新規設計は、より正確に市場のニーズを把握する必要がある。流用設計が既存の市場がすでに形成されていることに対し、新規設計は、市場にはない、誰も気づいていない需要に対してアプローチする、いわゆるブルーオーシャン戦略が取られることが主流である。失敗した場合のリスクは大きく実用化まで時間を有するため注意が必要である。

コスト

予想される販売価格と個数に基づき、目標原価の設定が行われる。さらにコストダウンのアイデアを明確にすることで効率的なコスト管理が可能となる。たとえば、コストバランス法などのツールを用いて、品質とコストの最適化を図り、製品の信頼性を維持、コストパフォーマンスを高める。

デジタルツール

機械設計では、次に述べるようなCADやCAEを中心に扱われるが、マネジメントでは、スケジュール進捗管理ソフトやコスト管理ソフト、デザインビュなどのデジタルツールの比重が大きくなる。部品管理、技術の共有、データベース等を中心に扱う。

機械設計に必要なソフト

機械設計に求められるデジタルツールは、第一にCADである。2D CADは図面を描くためのソフトで2次元の図面を描くことができる。3D CADは3D モデルをつくり、それを2次元の図面に落とし込んでいく。さらにCAEによる解析シミュレーションで任意のモデルがもつ力学的要素(主に材料力学、機械力学、流体力学、熱力学)の影響を解析できる。さらに膨大なデータを管理するための管理ソフトがある。

進捗管理

進捗管理とはプロジェクトのスケジュール管理のことで、期限までにどのような設計を行うかのプロセスを設定したうえで、それぞれの工程が順調に進んでいるかをチェックする。商品企画、構想設計基本設計詳細設計とそれぞれの工程を随時チェックし、改善策や問題のサポートを行い、量産意向を進めていく。

タイトルとURLをコピーしました