ルブリケータ|圧縮空気に潤滑油を供給する機器

ルブリケータ

ルブリケータとは、圧縮空気の流れの中に潤滑油を霧状にして混入させ、下流の空気圧機器へ油分を供給する給油器である。英語ではlubricatorと表記される。エアシリンダのパッキン、空圧バルブの摺動部、エアハンマーインパクトレンチといった空気工具の内部機構は、油膜が切れると摩耗や焼付きが急速に進行する。そこで配管途中にルブリケータを設置し、空気が通過するたびに微量の油を自動的に送り込む仕組みが考案された。フィルタ(F)・レギュレータ(R)と組み合わせたFRLユニット(空気圧調質ユニット)の最終段を構成する機器として、工場の空気圧配管に広く普及している。使用する潤滑油はISO VG32相当のタービン油1種(JIS K 2213)が標準であり、粘度の高い油や添加剤入りの油は霧化不良やゴム膨潤の原因となるため推奨されない。

ベンチュリ効果を利用した給油の原理

動作の核心はベンチュリ効果にある。ケース内を流れる圧縮空気が絞り部を通過すると流速が増し、ベルヌーイの定理に従って静圧が低下する。この負圧と油面に加わる一次圧との差圧によって、ボウル内の潤滑油がサイフォン管を通じて吸い上げられ、滴下ノズルから流路へ落ちる。滴下した油は高速の空気流でせん断されて霧化し、油霧(オイルミスト)として下流へ運ばれる。滴下量は上部のニードル弁で調整でき、透明なドームから滴下の様子を目視確認できる構造が一般的である。目安として空気1m³(大気圧換算)あたり数滴、機器メーカーの推奨では1滴を約0.03mLとして10滴/m³前後に設定する例が多い。流量が変動しても滴下比率を一定に保つ定比率給油機構を備えた製品もあり、空気消費流量特性が大きく変動するラインで有効に働く。

固定絞り式と選択式の種類

霧化方式による分類では、滴下した油をそのまま全量霧化する全量給油式(オイルフォグ式)と、粒径の小さい油霧のみを選別して送るマイクロフォグ式(選択給油式)の2種類に大別される。前者は粒径がおよそ2μmから50μmと広く分布し、配管が短く給油対象が近い場合に適する。後者は粒径約2μm以下の微細粒子だけを取り出すため、配管長が10mを超える遠隔給油や、複数の機器へ分岐して給油する用途に向く。ただしマイクロフォグ式は滴下油量のうち下流へ届く割合が1割程度にとどまるため、ボウル内の油の消費と補給頻度の管理に注意を要する。ボウル材質はポリカーボネートが主流であるが、使用圧力の上限は概ね1.0MPa、周囲温度は5℃から60℃の範囲に制限される。溶剤雰囲気や高温環境では金属ボウル仕様を選定する。両方式の特性を整理すると次のようになる。

項目 オイルフォグ式(全量給油) マイクロフォグ式(選択給油)
油霧粒径 約2〜50μm 約2μm以下
到達距離 短距離(数m程度) 長距離(10m以上も可)
下流到達率 ほぼ全量 滴下量の約1割
適用例 単一機器への直近給油 分岐配管・遠隔機器への給油

FRLユニットにおける設置と配管上の注意

設置順序はエアフィルタ、レギュレータ、ルブリケータの順が原則である。圧縮機から送られた空気にはドレンや異物が含まれるため、まずフィルタで除去し、レギュレータで0.4MPaから0.7MPa程度の使用圧力に減圧したのち、最後に給油する。順序を誤ってレギュレータを下流に置くと、減圧弁内部に油が付着して動作不良を招く。配管では油霧が重力で沈降する点を考慮し、給油対象までの距離を可能な限り短くする。エアホースの立ち上がり配管や急な曲がりは油の滞留を生むため避けたい。ボウルへの給油は原則として加圧状態を解除してから行うが、運転中に補給できる加圧給油形も市販されている。関連機器の詳細は真空用レギュレータの項も参照できる。

オイルフリー化の潮流とルブリケータ不要機器

近年の空気圧機器はグリースを封入した無給油形が主流となり、エアシリンダや電磁弁の多くはルブリケータなしで規定寿命を満たす。ここで注意すべきは、一度給油運転した無給油形機器は封入グリースが油で洗い流されるため、以後給油を中断できないという点である。現場では新設ラインを無給油で統一し、給油が必須の空気工具系統だけを分岐させてルブリケータを設ける運用が合理的である。給油系統と無給油系統の混在は誤接続によるトラブルの温床となるため、カプラの形状を系統別に変えるといった物理的な誤接続防止策がコスト数百円で実現でき、保全工数の削減効果は大きい。

保守点検と選定の要点

日常点検では油面の高さ、滴下数、ボウルの亀裂の3点を確認する。油面がサイフォン管の吸込口を下回ると給油が停止し、気付かないまま運転を続けると空気工具の摩耗が進む。ポリカーボネートボウルはアルカリ洗剤やシンナーで洗浄するとソルベントクラックを起こすため、清掃には中性洗剤のみを用いる。選定時は接続口径(Rc1/8からRc1程度)、定格流量、必要滴下量を整合させ、流量が過小だと絞り部の差圧が不足して滴下しない点に留意する。カタログの定格流量は差圧0.1MPa時の値で表記されることが多く、実流量が定格の2割を下回る低流量域では滴下が不安定になりやすい。滴下数の設定は、給油対象の直前に白紙を10秒間かざして薄い油膜が付く程度を実務上の適量とみなす簡易確認法が現場で使われている。過剰給油は排気系の油汚れと油の無駄を招くだけでなく、電磁弁のスプール固着の原因にもなる。

空気工具の寿命を左右する給油管理

潤滑剤の選択を含む潤滑管理全体の中でルブリケータの位置付けを明確にし、排気に含まれる油霧が作業環境へ放出される場合はサイレンサや排気クリーナの併設で対処する。適切に管理された給油は、ピストンやパッキンの寿命を数倍に延ばす費用対効果の高い保全手段である。

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