自我|精神分析学

自我 ego

自我とは、他人や外の世界から区別された自分の意識の活動といえる。私が私であること。自我は空間・時間的に変化する経験を自分の意識内で統一し、それらを自分の経験として受けとりえる主体的な存在である。青年期になると、自分の内側を強く意識し、そこに外の世界や他の人々とは切り離された自我の存在を知覚する。ここではじめて自分と他者との違いを意識し、しばしば、私が私であることはいかなることかを問う。ここで理想と現実とのズレに苦悩することも珍しくない。自我は、みずからの意志に基づく行動の主体として意識されたり(主体的自我)、自分を反省することによって客体的な自己像(客体的自我)として意識されたりする。青年期に多くの人が世界や他者に強い関心を持ち、世界に向けてのアクションを起こす一方、その葛藤を背負うことが多いのは、自我意識の賜物といえる。

自我

自我

自我のめざめ

青年期には、自分に対する意識が高まり、判断や行動の自覚的主体としての自我が目覚めてくる。幼い子どもは与えられた日常世界で生活しているが、青年は自我にめざめて独自の世界が形成されるにつれ、周囲の家族や大人の世界に違和感をおぼえる。他者や社会に否定的になり、拒絶や暴力行動を起こすことも多い。その一方、強い孤独感の中で、その心の内面的世界を共有できる友人を強く求めることも同時に存在する。あるひとは、文学や芸術の描く理想世界にひかれ、あるひとは音楽やスポーツの中に見出すなど、さまざまな形で自己を表現する欲求を強くもつ。やがて自己の内面を他者から承認される形で表現することに喜びを見出し、社会との関わりの中で自分の欲求や感情を表現する社会性を身につけて自立していく。

自我意識

自我意識をもつと、自らが他者や社会と区別された独自の存在として意識するようになる。自分は自分であり、他人は他人であることを強く意識する。青年期には「見る自分」と「見られる自分」に分かれ、自分で自分を見つめ、自分に自覚的に向きあう。また、一方で自分を意識することは、同時に他者によって自分がどのように見られているかを意識することでもあると言える。一人の人間としての自分を意識しながら、みずからが反省した自己像と他者の目に映った自分とを重ねあわせながら、自分は何者か問い、自己のイメージが明瞭になってくる。この自我意識は、自己と他者とを明確に分けるゆえに他者に対して攻撃的になる傾向があることも否定できない。青年期は、他者と衝突しながら自己を築く傾向にあり、時に暴力的な行動や犯罪行為を犯してしまうこともある。こうして、劣等感、孤独感、不安感など悩みや社会的衝突を抱えながら、克服する過程の中で人間性を育んでいく。

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