幾何公差(geometrical tolerance)|幾何公差の一覧,種類と内容
幾何公差
幾何公差(Geometric tolerance)とは、対象物の形状、位置などの狂いに対して許容値を与えて指示する公差であり、形や位置の理想的な正しいものからずれても良い領域(公差域)である。幾何公差は、機械の一部品としての機能を十分に果たすために必要な箇所や部品を標準化したときにその互換性を保つ必要がある箇所についてのみ適用し、図示する。幾何公差には、形状公差(真直度、平面度、真円度、円筒度)、姿勢公差(平行度、直角度、傾斜度)、位置公差(位置度、同心度、同軸度、対称度)、振れ公差(円周振れ、全振れ)があげられる。また、基準と線や面をデータムといい、図面上で指示される。

目次
- 基準
- データム
- 1.形状公差
- 1-1.真直度公差
- 1-2.平面度公差
- 1-3.真円度公差
- 1-4.円筒度公差
- 2.姿勢公差
- 2-1.平行度公差
- 2-2.直角度公差
- 2-3.傾斜度公差
- 3.位置公差
- 3-1.位置度公差
- 3-2.同心度公差
- 3-3.同軸度公差
- 3-4.対称度公差
- 4振れ公差
- 4-1.円周振れ公差
- 4-2.全振れ公差
- 5.線の輪郭度・面の輪郭度
- 幾何公差の図示法
基準
公差には基準を必要とする公差(姿勢公差、位置公差、振れ公差)と基準を必要としない公差(形状公差)がある。基準をデータムというが、図面上には基準を記述しなければならい。
- 形状公差:真直度、平面度、真円度、円筒度、線の輪郭度、面の輪郭度
- 姿勢公差:平行度、直角度、傾斜度
- 位置公差:位置度、同心度、同軸度、対称度
- 振れ公差:円周振れ、全振れ
データム
データムとは、基準とする面や線であり、データムを基準として加工や測定が行われる。製図者は明瞭に指示し、加工者は正確に読み取らなければならない。一般に理想的なデータムは現実に存在しないので、定盤やマンドレルなどの表面が用いられ、これを実用データム形体と呼ばれる。

1.形状公差

形状公差とは、対象となる形体が、〝平面や線などが幾何学的に正しい形状を表す偏差の許容値内にあるかを規定するもの〟で、真直度、平面度、真円度、円筒度、線の輪郭度、面の輪郭度をいう。形そのものを規定するのでデータムは必要としない。
1-1.真直度公差

真直度公差とは、直線形体の幾何学的に正しい直線である。真直を基準にそこからのひらきの許容値を示す。
1-2.平面度公差

平面度公差とは、平面形体の幾何学的に正しい平面を基準として、面の平面さ(曲がっていない、反っていないなど)を示す数値である。
1-3.真円度公差

真円度公差とは、円形形体の幾何学的に正しい円を基準としたとき、そこからのひらきの許容値をいう。
1-4.円筒度公差

円筒度公差とは、円筒形の幾何学的に正しい円筒を基準としたとき、そこからの許容値である。
2.姿勢公差

姿勢公差とは、対象となる形体において、平行、角度、形状などが幾何学的に正しい姿勢を表すものである。データム(偏差の許容値内にあるかを規定する基準)を必要とする。
2-1.平行度公差

平行度とは、平行を示す数値で、ふたつの相対する面が平行である度合いを示す。データム直線(平面)に対して平行な幾何学的直線(平面)を基準とする。データムが必要である。
2-2.直角度公差

直角度公差は、2つの面が対象となり、その面が直角であるかどうかを示す。データム直線(平面)に対して、直角な幾何学的直線(面)を基準とする。データムが必要である。
2-3.傾斜度公差

傾斜度公差とは、データム直線(平面)に対して理論的に正確な角度をもつ幾何学的直線(平面)を基準とする数値である。データムが必要となる。
3.位置公差

位置公差
位置公差とは、対象となる形体が基準(データム)に関連して、中心点や軸線、形状などが、幾何学的に正しい位置に存在するかを表す偏差の許容値内にあるかを規定するもので、基準(データム)が必要になる。
3-1.位置度公差

位置度公差は、データムまたは他の形体に関連して定められた理論的に正確な位置からの点、直線形体、または平面形体のひらきの許容值である。データムの要否は場合による。
3-2.同心度公差

同心度公差は、データム円の中心に対する他の円形形体の中心の位置のひらきの許容値である。データムは必要。
3-3.同軸度公差

同軸度公差とは、データム軸直線と同一直線上にあるべき軸線のデータム軸直線からのひらきの許容値である。データムは必要。
3-4.対称度公差

対称公差は、データム軸直線またはデータム中心平面に関して互いに対称であるべき形体の対称位置からのひらきの許容値である。データムは必要。
4振れ公差

振れ公差とは、対象となる形体が基準(データム)に関連して、回転体の表面が、指定された方向の変位が偏差の許容値内にあるかを規定するもので、基準(データム)が必要になる。
4-1.円周振れ公差

円周振れ公差とは、データム車軸直線を軸とする回転体をデータム軸直線のまわりに回転したとき、その表面が指定された位置または任意の位置において指定された方向に変位する許容値である。データムは必要。
4-2.全振れ公差

全振れ公差とは、データム軸直線を軸とする回転体をデータム車軸直後のまわりに回転したとき、その表面が指定された方向に変位する許容値である。データムは必要。
5.線の輪郭度・面の輪郭度

理論的に正確な寸法によって定められた幾何学的輪郭からの線(面)の輪郭のひらきの許容値である。形状公差、姿勢公差、位置公差にそれぞれある。
幾何公差の図示法
幾何公差を図に示すには、長方形の枠の中に、公差の種類、公差値、データムを記入して表す。公差を二つ以上の形体に適用する場合には、記号“×”を用いて形体の数を公差記入枠の上側に指示する。公差域内にある形体の形状の品質の指示をする必要がある場合、公差記入枠の付近に書く。