フランシス・ベーコン|知は力なり

フランシス・ベーコン 1561~1626

フランシス・ベーコンはイギリス経験論の父と呼ばれる。『学問の進歩』、『ノヴム・オルガヌム(新機関)』『ニュー=アトランティス』。フランシス・ベーコンは経験、すなわち、観測的・実験的な自然探求を意識的に原理とした最初の近代哲学者であった。これは近代自然科学の基本的発想を確立したといえる。ガリレイの方法を哲学的部分に移した最初の人であり、スコラ哲学や従来の学問的方法に対して明白に反対した。ここに学問と宗教、理性と信仰を分離した。本職は弁護士。(ベーコンの生涯

フランシス・ベーコン

フランシス・ベーコン

年表

1561年 イギリス生まれ
1581年 下院議員となる(エリザベス女王召集だいご国会)
1613年 法務長官に就任。
1605年 『学問の進歩』
1618年 大法官に就任
1620年 『ノヴム・オルガヌム(新機関)』
1620年 収賄罪の罪を問われ、政界を引退
1620年 死去
1623年 「『学問の進歩』の意」ラテン語版出版
1627年 『ニュー-アトランティス』出版

知は力なり(Ipsa scientia potestas est)

ベーコンは自身の方法論をアリストテレスのオルガノンに対抗し、『ノヴム・オルガーヌム(新機関)』と名付けた。ここでオルガノンとは真理を発見する方法、道具、論理学である。アリストテレスの中世哲学の方法論にたいし、抽象的な言葉や考え方から離れ、事物に即して考える、新しい方法で自然を考えること、これが『ノヴム・オルガーヌム(新機関)』である。人間の問いに自然が答えるよう、技術によって自然に強制すべきで我々は自然に服従しながら自然のうちかち発明を行う。このことは彼の「知は力なり」という言葉で象徴される。近代科学の基礎づけがなされた。

4種のイドラ

人間は世界を捉えるのに、経験以外の偏見や先入観で捉えてしまう。偏見や先入観など、偶像(イドラ)を取り除かなければならない。ベーコンは4種のイドラを上げる。目的論的なものの見方を退け、自然は原因・結果によって機会的に説明されなければならない。

  1. 劇場のイドラ(偶像) 伝統や語り伝えのようなお芝居じみた嘘を信じてしまうこと
  2. 市場のイドラ(偶像) 言葉や書物的知識を事物と混同すること。
  3. 洞窟のイドラ(偶像) 個人的な境遇、性格、体験からくる偏見。
  4. 人類のイドラ(偶像) 錯覚、思い違い、擬人観など。自分の立場や自分の目的から自分の都合の良いように考えてしまうこと。

帰納法

ベーコンはこれら4種のイドラを捨て、「新しい方法へ(帰納法へ)」を説く。帰納法とは、個々の事象から、事象間の本質的な結合関係(因果関係を推論し、結論として一般的原理を導く方法である。ここから観察と実験から出発し、原因と法則を導き出す科学の基礎づけがなされた。そして「知は力なり」と述べ、帰納法によって得られた法則を応用することによって自然を支配することができる。

ベーコンの思想

ベーコンの思想

経験論の父

経験論は、人間の知識は感覚的な経験から生まれるという考え方。ベーコンの4つのイドラを排除し、帰納法により、経験によって得られた知識から法則を見つけ出す、という考え方から生まれた。主にイギリスで議論されたため、当時の経験論は、イギリス経験論とも呼ばれる。ベーコンに続き、ジョン・ロックバークリーヒュームが挙げられる。

『ノヴム・オルガヌム』(ベーコン)1

人間の知識と力とは合一する。・・・人間知性が今も所有しており、人間知性の底深くに根を持ってきたところの、さまざまな偶像(イドラ)や間違った観念は、真理がほとんど入り口を見いだせないほど人の心を塞ぐばかりでなく、入り口を獲得した後にも、人々があらかじめそれらの危険に警戒して、できるだけ要害堅固にそれらの攻撃に対して身を守っているのでない限り、それらはまさに学の再興においてもふたたびわれわれに出会い、我々を悩ますものである。

『ノヴム・オルガヌム』(ベーコン)2

自然の下僕であり解明者である人間は、彼が自然の秩序について、実地により、もしくは精神によって観察しただけを、為しかつ知るのであって、それ以上は知らないし、なすこともできない。

『ノヴム・オルガヌム』(ベーコン)3

素手も一人に任された知性もあまり力をもたず、道具や補助によって事は成し遂げられる。それらは知性にとっても手にとってに劣らず必要なのである。そして手の道具が運動をばあるいはあたえあるいは制御するように精神の道具も知性にあるいは助言しあるいは用心させる。

『ノヴム・オルガヌム』(ベーコン)4

人間の知識と力とはひとつに合一する原因を知らなくては、結果を生ぜしめないから。というのは自然とは、これに従うことによらなくては征服されないからである。そして知的な考察において原因にあたるものは、実地の作業ではルールに当たる。

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