帰納法|多くの事実を集めてこから一般的な法則や原理を推論する

帰納法 inductive method

帰納法とは、多くの事実を集めてこから一般的な法則や原理を推論し、さらに事例を集めて確認する推論方法である。たとえば、カラスが黒いことを証明するのに、1万羽のカラスを集めてカラスが黒いことを証明する方法である。ただし、一万一羽目は白いカラスが見つかるかもしれず、事実としては不安定である。科学においては、実験・観察に基づいた知識を得るための思考方法とされる。帰納法に対して、一般的原理から個別的な結論を引き出す演繹法という。

帰納法の例

  1. カラスが黒いことを証明するためにカラスをいくつも集めて、黒いことを証明した
  2. チャップリンの映画を面白いことを示すためにチャップリンの映画すべてを鑑賞した。
  3. 水素が燃えやすいことを証明するために、水素を燃やす実験を何度も繰り返した。

肯定的事例、否定的事例、比較事例

帰納法の事例には大きく肯定的事例、否定的事例、比較事例の3点が挙げられる。これは、多くの事例の中から非本質的なもの、特殊なものを除去していき、本質的な条件を取り出していく方法といえる。

  1. 肯定的事例・・・現存する事例
  2. 否定的事例・・・類似の事情にありながら肯定的事例に反する事例
  3. 比較事例・・・現象の増減に応じて別の現象もまた増減する事例

科学実験

科学実験は帰納法をベースに構築されている。ボールを1万回投げても下に落ちることで、ボールは下に落ちる、ということを事実として推定する方法である。たとえば、ある物質を抽出する時、同じ条件で10回行い、その結果の最大値と最小値を除いた8回の平均値を実験値として用いるなどの方法論をとる。

ベーコンの帰納法

歴史的には、イギリスの科学者ベーコンが事実に基づいて知識を獲得する方法としたもので、特殊な事例から普遍的な法則を見出す経験論の学問方法である。(なお、普遍的な原理から個々の結論を推理する方法を演緯法という。)ベーコンは、スコラ的な抽象的な思弁を批判し、個々の具体的事実から一般的な法則を導く帰納法に基づいた経験論をとなえた。事実を正しく観察するためには、まず正しい認識のさまたげとなる偏見や先入観を排除しなければならない。(参考:イドラ)確実な知識は、感覚的経験に基づくが、それは単なる経験の寄せ集めではなく、実験と観察に基づいて個々の事実から一般的な法則を導く帰納法によらねばならない。

真理を探究し発見するには二つの道があり、またありうる。ひとつは感覚及び個々的なものから最も普遍的な一般命題に飛躍し、それら原理とその不動の真理性から中間的命題を判定し発見する、この道がいま行われている。他の一人の道は、感覚および個々的なものから一般命題を引き出し、絶えず漸次的に上昇して、最後に最も普遍的なものに到達する。この道は、真の道ではあるが未だ試みられてはいない。(『ノヴム・オルガヌム(新機関)』ベーコン

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