オートコリメータ
オートコリメータは、平面鏡で反射して戻る光束を用い、極めて微小な角度変位を非接触で検出する光学式角度測定器である。コリメータレンズで平行化した光を被測定鏡面に投射し、反射光を受光面(視野像や撮像素子)に結像させ、その像のずれ量から鏡の傾きを算出する。構造が簡潔で温和な測定力を特徴とし、真直度・平面度の評価、精密位置合わせ、角度ゲージやポリゴンミラーの校正、工作機械のピッチ・ヨー・ロール成分の評価などに広く用いられる。
原理
被測定鏡が微小角θだけ傾くと、反射光は約2θだけ角度変化する。焦点距離fの受光光学系において、焦点面上の像移動量をxとすれば、小角近似でθ≒x/(2f)となる。すなわちオートコリメータは、像の平面内オフセットを高分解能で読み取り、角度へ直線的に換算できる。電子式では撮像素子上の重心演算やサブピクセル補間を行い、数十〜数百分のarcsec級の分解能を得る。視準線はビームスプリッタを介して設定され、リターンビームと同軸に配置されるため、軸ずれの影響を抑制しやすい。
種類
- 視準式(光学式):接眼部でスケールと像の相対位置を読む。現場強靭性に優れる。
- 電子式:CCD/CMOSやPSDで像位置を検出し、デジタル表示やデータ記録に対応する。
- レーザー式:コヒーレント光で高S/Nと長作動距離を両立し、遠隔据付に適する。
主要構成
オートコリメータは、光源、コリメータレンズ、ターゲットパターン(十字線等)、ビームスプリッタ、焦点距離fの結像系、受光素子(または接眼系)、および高平坦・高反射率の基準鏡で構成される。筐体は温度変化と振動を抑えるため剛性が高く、熱膨張の小さい材を用いる。電子式ではA/D変換、フィルタリング、平均化処理により安定読取りを実現する。
測定手順
- 基準台に本体を設置し、機械的・光学的ゼロを確認する。
- 被測定面に平面鏡(または反射ターゲット)を置き、光軸を合わせる。
- 像の初期位置を記録し、調整や負荷後の像変位量xを取得する。
- 既知のfからθ≒x/(2f)を計算し、必要に応じて温度や距離の補正を適用する。
用途
- 工作機械の直進軸のピッチ・ヨー評価、主軸の角度運動誤差の把握
- 平面度・真直度評価や定盤の据付検査、光学台のレベリング
- 角度ゲージ、光学ポリゴンの校正、回折光学素子の角度合わせ
- ステージ・アクチュエータの微小角度制御のフィードバック
- 組立ラインでの光学部品のアライメント、望遠光学の光軸調整
投影測定に用いるプロファイルプロジェクタや、表面性状を扱う表面粗さ計、形状精度に関する真円度測定機、寸法基準の移し替えに使うハイトゲージ、接触式微小変位検出のレバー式ダイヤルゲージ、観察系の光学顕微鏡と併用すると、幾何特性の総合評価が体系化できる。
性能指標
分解能(arcsecまたはµrad)、測定範囲(±数分〜数度)、直線性、繰返し性、温度ドリフト、安定化時間、像S/Nが主要指標である。電子式オートコリメータは、露光・平均回数・重心手法により統計的に分解能を高められる。長距離測定ではビーム開口径が像S/Nと回折限界に影響するため、開口・光量・露光の最適化が重要となる。
誤差要因と対策
- 空気揺らぎ・温度勾配:風防、測定時間の短縮、平均化で低減する。
- 鏡面品質:平面度・反射率が不足すると像が肥大化し感度が低下する。
- 据付・振動:剛性台、制振材、広い支持間隔で固有振動を避ける。
- 光軸ずれ:同軸配置と戻り光の対称性確認、初期アライメントの徹底。
- 距離変化:焦点位置と倍率のわずかな変化を補正テーブルで扱う。
関連技術と活用
電子水準器や角度エンコーダは直接角度を与えるが、オートコリメータは光学的に非接触で高感度を得る手段として有効である。平面鏡を治具化すればステップ的な角度比較が容易になり、長ベースラインのアライメントでも視準が取りやすい。形状測定(投影・接触・観察)と組み合わせることで、形体の角度的成分を独立に把握でき、工程能力向上や据付時間短縮に寄与する。
規格・校正の要点
オートコリメータの校正では、基準ポリゴンや角度ステージを用いて既知角を与え、像変位と角度の対応を確認する。光軸と機械軸の一致、温度・湿度管理、ゼロ点の安定性が要点である。JISやISOに整合した校正証明を保持すれば、トレーサビリティの確保と測定不確かさの明確化が図れる。
選定指針
- 必要分解能と範囲:θ≒x/(2f)から必要fや受光素子ピッチを逆算する。
- 現場環境:振動・温度変化が大きい場合は堅牢筐体と短露光の電子式が適する。
- 据付距離:長距離は開口径・光量・レーザー採用を検討する。
- データ運用:インターフェイス、記録周期、演算機能(平均・フィルタ)を確認する。