二つの世界大戦|20世紀秩序を変えた総力戦

二つの世界大戦

20世紀前半の世界史は、1914年に始まる第1次世界大戦と、1939年に勃発した第2次世界大戦という二度の未曾有の戦争によって大きく規定された。これらの戦争は単なるヨーロッパの戦争ではなく、植民地を含む全世界を巻き込んだ総力戦であり、政治体制・国際秩序・経済構造・社会意識を根本から変革した。本項では、二つの戦争を連続した一つの歴史的プロセスとして捉え、背景・性格・相違点と共通点、そして世界秩序への影響を概観し、教科書などで章題として用いられる1二つの世界大戦という枠組みの意味を明らかにする。

第1次世界大戦の背景と特徴

第1次世界大戦は、列強による帝国主義的な植民地獲得競争、軍拡競争、民族主義の高揚など、19世紀末以来の構造的な対立が極限に達するなかで発生した。ドイツ・オーストリアなどの同盟国と、イギリス・フランス・ロシアなどの協商国という軍事同盟体制が形成され、サラエボ事件を契機にヨーロッパ全域の戦争へと拡大した。戦争は塹壕戦と総力戦の様相をとり、機関銃や毒ガスなどの新兵器が投入され、多数の戦死者と民間人被害を生んだ。また、ヨーロッパ列強の支配下にあった植民地からも兵士や物資が動員され、戦争は真に「世界規模」の性格を帯びたのである。

戦間期とヴェルサイユ体制

1918年に終結した第一次世界大戦後、戦勝国はパリ講和会議でドイツなど敗戦国に厳しい条件を課した。その中心となったのがヴェルサイユ条約と、それに基づくヴェルサイユ体制である。ドイツには領土の割譲と巨額の賠償金が課され、軍備も大幅に制限された。一方、ウィルソンの提唱した集団安全保障の理念に基づき、国際紛争を平和的に解決するための機関として国際連盟が設立された。しかし、敗戦国や新興国家の不満は強く、アメリカの不参加や列強の利害対立もあって、ヴェルサイユ体制は不安定な基盤の上に成り立つものにとどまったのである。

世界恐慌と第2次世界大戦への道

1920年代には一時的な繁栄もみられたが、1929年に始まる世界恐慌は資本主義世界経済を深刻な不況に陥れ、多くの国で失業と社会不安を拡大させた。この危機のなかで、ドイツやイタリア、日本などでは、自由主義や議会制民主主義に代わって、権威主義的な国家主義・軍国主義が台頭した。その典型が、イタリアのムッソリーニ政権やドイツのナチ党政権に代表されるファシズムである。これらの国家はヴェルサイユ体制の打破と勢力圏の拡大を掲げて対外侵略を進め、国際秩序の緊張は次第に高まっていった。

第2次世界大戦の勃発と拡大

1939年、ドイツのポーランド侵攻をきっかけに、イギリス・フランスが宣戦を布告し、第二次世界大戦が始まった。ヨーロッパではドイツによる電撃戦が展開され、多くの国が短期間で占領された。その後、ソ連やアメリカも参戦し、戦争は大西洋・地中海・東欧・北アフリカ・アジア太平洋など広大な戦域に広がった。空爆や潜水艦作戦、レーダーの発達などにより、戦闘は陸海空の全領域で行われ、民間人も空襲や占領統治の下で多大な被害を受けた。さらに、ユダヤ人などに対する組織的迫害・虐殺、原子爆弾の使用など、戦争は人道的にも深刻な問題を残した。

二つの世界大戦の共通点

  1. いずれの戦争も、国家総動員体制にもとづく総力戦であり、前線の兵士だけでなく銃後の住民までが動員され、国家経済・社会生活の全領域が戦争遂行に組み込まれた。
  2. 産業技術の発展により、兵器の殺傷力と破壊力は飛躍的に高まり、鉄道・電信・無線などの通信・輸送手段の発達が、戦争の規模と速度をかつてないものにした。
  3. 戦後には、講和条約と新たな国際機構(国際連盟や、のちの国際連合)を通じて、新しい「世界秩序」を構築しようとする試みが行われたが、現実には各国の利害やイデオロギー対立によって大きな制約を受けた。

二つの世界大戦の相違点

  • 第1次世界大戦は、複雑な同盟網の連鎖と偶発的事件の拡大という側面が強く、列強間の勢力均衡の破綻として理解されるのに対し、第2次世界大戦は、ヴェルサイユ体制への不満と、全体主義体制による積極的な侵略政策が主因となった。
  • 戦場の範囲についても、第1次世界大戦が主としてヨーロッパとその周辺を舞台にしていたのに比べ、第2次世界大戦ではアジア太平洋戦争を含めて、文字通り地球規模の戦争となった。
  • 戦後秩序においては、第1次世界大戦後がヨーロッパ列強を中心とするヴェルサイユ体制の再編であったのに対し、第2次世界大戦後にはアメリカとソ連が台頭し、冷戦構造と植民地帝国の解体が進展した点に大きな違いがある。

二つの世界大戦と20世紀世界

二つの世界大戦は、帝国と植民地からなる19世紀的世界秩序を崩壊させ、国民国家とイデオロギーを軸とする20世紀世界を生み出した。戦間期の不安定なヴェルサイユ体制、世界恐慌とファシズムの台頭、第2次世界大戦後の国際連合体制と冷戦構造、そして脱植民地化の波はいずれも、この二度の戦争がもたらした結果として理解される。また、戦争体験は、福祉国家の形成や人権意識の高まり、戦争責任と平和主義をめぐる議論を促し、現在の国際社会や各国社会のあり方にも深く影響を与え続けているのである。