グリースニップル|給脂用ニップルの種類と規格・選び方

グリースニップル

グリースニップルは、機械の潤滑点にグリースを確実かつ清潔に圧送するための小型継手である。先端の球(チェックボール)とばねにより逆止機能を持ち、異物侵入やグリースの逆流を防ぐ。グリースガンのカプラを押し当てて接続し、必要量を注入できるため、ベアリング、ブッシュ、ジョイント、建設機械や自動車、産業機械など幅広い箇所で採用される。形状は直型・角度付・フラッシュ型などがあり、ねじ規格もメートルねじ、管用テーパねじ、ユニファイねじなど多様である。JISやISOで寸法と性能が標準化され、交換性と信頼性が担保されている。

用途と役割

グリースニップルの主目的は、可動部に必要なグリースを定期的に補給し、摩耗低減、焼付き防止、耐食性の向上、シール性の維持を図ることである。密封型ベアリングの外側やリンク機構のピボット、ユニバーサルジョイント、スライドガイドなど、外部からの直接塗布が難しい箇所に設けると保守性が大幅に向上する。逆止機構により注入後の保持性が高く、圧力でシールリップ周辺へ行き渡らせることもできる。

形状の種類

設置空間や作業性に応じて形状を選ぶ。直型は最も一般的で、狭所では角度付が便利である。頭部が突出しないフラッシュ型は衝突リスクや泥詰まりを抑えられる。大流量が必要な重機ではボタンヘッド型が使われることもある。

  • 直型(ストレート):汎用、扱いやすい
  • 45°・90°:接近が困難な位置向け
  • フラッシュ(埋込)型:突起を嫌う箇所に適する
  • ボタンヘッド型:大流量・高耐久を要求する用途

ねじとサイズ選定

グリースニップルは取付ねじで機体に固定する。代表例はM6×1、M8×1、M10×1などのメートル細目、管用テーパ(例:R1/8相当)、ユニファイ(1/4-28 UNFなど)である。テーパねじはねじ面でシールしやすいが、締付過多は座面や雌ねじを損傷する。平行ねじの場合は座金やシール材で漏れを防ぐ。既存機のねじ規格を正しく同定し、無理なねじ込みや変換アダプタの多用を避けることが重要である。ねじ部の基本はボルトと同じで、呼び・ピッチ・許容差を整合させると不具合を防止できる。

JIS B 1575による標準規格

日本におけるグリースニップルの主要な規格は、JIS B 1575「グリースニップル」によって規定されている。この規格では、給油口の形状、取り付け部のねじ、および内部の弁構造について標準化が図られている。これにより、異なるメーカーの製品であっても、規格に準拠していれば共通のグリースガンやチャックを使用して給油作業を行うことが可能となっている。JIS規格では、使用環境や取り付けスペースの制限に応じて選択できるよう、複数の形状区分が設けられているのが特徴である。

形状による分類(A型・B型・C型)

グリースニップルは、給油口の角度によって主に3つのタイプに分類される。取り付け箇所の周囲に障害物がある場合や、工具のアクセス性を考慮して選定される。

  • A型(ストレート形):中心軸に対して給油口が直線上にある最も一般的なタイプ。スペースが十分に確保されている箇所に使用される。
  • B型(角度形・45度):給油口が取り付けねじに対して45度の角度を持っている。狭い場所や斜め方向からの給油が必要な場合に適している。
  • C型(角度形・90度):給油口が90度の直角に曲がっている。高さに制限がある箇所や、側面からアクセスする必要がある場合に用いられる。

ねじ規格とサイズ

グリースニップルの取り付け部には、機械本体の雌ねじと適合させるための精密なねじ加工が施されている。一般的に使用されるねじ規格には、管用テーパねじ(RまたはPT)とメートル並目ねじ、メートル細目ねじの3種類がある。管用テーパねじは、ねじ部を締め込むことで高いシール性を確保できるため、高圧での給油に適している。代表的なサイズとしては、R1/8、R1/4、M6×1.0、M8×1.25などがあり、小型の精密機械から大型の重機まで、用途に合わせて最適なサイズが選択される。

構造

グリースニップルは本体、球、ばね、シール面で構成される。球とばねが逆止弁として働き、注入時のみ開弁する。

表面処理

一般的には耐食性と強度のバランスに優れた黄銅(真鍮)製が多く用いられ、表面にはニッケルメッキやクロームメッキが施される。一方で、より過酷な腐食環境下や、食品機械、化学プラントなどでは、耐錆性に優れたステンレス鋼(SUS303やSUS304など)が採用される。また、高強度が求められる箇所では炭素鋼亜鉛メッキを施したものが選定されることもある。材質の選択は、部品の寿命だけでなく、内部の鋼球(逆止弁)やスプリングの耐久性にも直接影響する。

取付と締付の注意

取付穴は規格に基づき下穴とタップを正確に加工する。テーパねじはねじシール剤の併用で再現性の高い気密が得られるが、締付角を守り過大締付を避ける。平行ねじは座面の平滑度を確保し、銅座金やOリング座金で漏れを抑える。角度付は注入方向がカプラの進入方向と合うよう向きを調整する。組立後はカプラの保持性と漏れの有無を点検する。

グリース注入の手順

  1. ヘッドの汚れを拭き取り、砂塵を除去する。
  2. グリースガンのカプラをヘッドにまっすぐ押し当てて確実に係合する。
  3. 所定量までポンピングする。シール部のにじみやプラグからの排出で充満を確認する。
  4. 圧を残さずカプラをまっすぐ引き抜く。はみ出たグリースは清掃する。
  5. キャップを確実に装着し、異物侵入を防止する。

保守・点検

キャップの欠落、ヘッドの泥詰まり、球の固着は注入不良の原因である。ヘッドは定期清掃し、球が作動しない場合は交換する。固化や酸化で通路が閉塞した場合、洗浄グリースや低粘度の注入で回復することがあるが、改善しなければ分解清掃または部品交換を行う。ヘッドの摩耗や座面損傷も漏れの一因で、早期更新が有効である。

よくある不具合と対策

グリースが入らない場合は、カプラの爪摩耗や不完全係合、ヘッドの汚れ、通路閉塞、過度な背圧を疑う。フラッシュ型には対応カプラが必要である。注入後に滲む場合はねじ部のシール不良か過充填が要因で、座金・シール剤の見直しと適正量管理で解決する。ヘッド破損は横荷重や工具のこじりが原因で、作業姿勢とアクセスの改善が有効である。

集中潤滑システムとの関係

単独注入方式に対し、集中潤滑では配管とメータユニットで各点へ分配する。この場合も点検・補助注入用にグリースニップルを併設する設計がある。保全方針に応じ、定期巡回の動線、カプラの届きやすさ、泥はねからの防護を包含して設計すると、稼働率と保全品質が向上する。

環境・安全への配慮

注入時は高圧となるため、皮下への油注入事故を防ぐべく手袋と保護具を着用し、漏れは速やかに拭き取る。はみ出しは滑りや転倒の危険を伴う。廃グリースは法令に従い分別回収し、油吸着材で周辺を保護する。5Sに基づきヘッド周辺の清潔を保ち、銘板・色分けでグリース種を識別すると取り違いを防げる。