グリースガン|高圧注入でベアリング寿命延長

グリースガン

グリースガンは、機械要素にグリースを定量かつ高圧で圧送する潤滑工具である。ベアリング、ピローブロック、ヒンジ、チェーンなどの給脂点に取り付くグリースニップルへノズル(カプラー)を密着させ、内部のピストン作動でグリースを送り込む。油差しのような低圧潤滑と異なり、閉鎖空間の荷重下でも押し込める点が特長で、過不足のない吐出管理が信頼性と保全性を左右する。ねじ部やボルトの防錆・組立時の初期潤滑に応用される場合もある。

用途と原理

グリースガンは容器内のバネ・ピストンでグリースを前進させ、操作レバーやトリガーの機械的増力で圧力を生む。カプラーはニップルの玉座を押し開き、通路にグリースが充填される。摩耗低減、発熱抑制、シール性の付与、腐食抑止が主目的である。ただしシールドベアリングなど給脂禁止の部位には適用しない。

主な種類

  • レバー式:最も一般的。レバー長により増力が得られ、高粘度グリースにも強い。
  • 片手式(ピストルグリップ):片手操作で狭所に適する。細かな断続吐出に向く。
  • エア式(空気圧):工場のエア源に接続し、長時間・高頻度の給脂に有利。
  • バッテリー式:携帯性と押し込み力を両立。屋外保全で効率的。

構造と各部名称

グリースガンはヘッド、筒(バレル)、ピストン・スプリング、カートリッジまたはバルク充填部、ホース/パイプ、カプラーで構成される。市販の14oz級(約400g)カートリッジに対応するモデルが多く、硬質パイプは押し込み時の姿勢安定、柔軟ホースは狭所追従に利点がある。

ニップルとアタッチメント

グリースニップルは球座付きの加圧用継手で、直型・斜型・埋込み型などがある。世界的にはDIN 71412形状(いわゆるZerk fitting)が普及している。カプラー側はストレート、ロック式、アングル、ニードル(針)などを使い分ける。ねじ規格や座面形状の不一致は漏れや脱落を招くため、設備の仕様票と一致させることが重要である。

使い方(基本手順)

  1. グリース確認:機械指定の基油・増ちょう剤種別(例:リチウム系、カルシウムスルホネート系)を確認する。
  2. 充填:カートリッジを装填、または清浄なベンチでバルク充填する。
  3. エア抜き(プライミング):ベントやゆるめ操作で空気噛みを排除する。
  4. 接続:カプラーをニップルに真っ直ぐ押し当てて確実に係合する。
  5. 吐出:所定ストローク数またはカウンタ値で定量給脂する。
  6. 拭き取り:漏れや余剰グリースを清掃し、異物付着を防ぐ。
  7. 表示:給脂日・数量・グリース種をラベル管理する。

吐出量・圧力管理

グリースガンの吐出量は「1ストローク当たり〇g」の仕様で示される。高圧を掛けすぎるとシール破損やグリースのチャンネル化(通り道化)を生むため、軸受の隙間・回転数・温度を考慮して少量多回に分ける。カウンタ付や圧力解放機構付の機種は過給脂防止に有効である。

メンテナンスと取扱い

内部に空気が混入すると吐出が不安定になる。プライミングを習慣化し、カプラーの摩耗やホースの亀裂を点検する。異種グリースの混合は増ちょう剤の相溶性問題を起こすため、グリースガンを銘柄別に専用化し、ノズルに色分けを施すと良い。保管は直射日光と高温を避け、ノズル先端を清浄キャップで覆う。

選定ポイント

  • 粘度域と必要圧力:高粘度・高荷重はレバー式や高圧対応モデルが有利。
  • 定量性:メカニカルカウンタ、吐出量の個体差、ストローク感の安定性。
  • 先端具:ロック式カプラー、ニードル、アングル、フレキホースの有無。
  • 供給形態:カートリッジかバルクか、交換性と作業性。
  • 使用環境:屋外・高所・狭所では片手式やバッテリー式が効率的。

安全・衛生

高圧流体の皮下注入事故は重大である。手指をニップル前に置かない、リーク時に素手で触れない、適切な手袋・保護眼鏡を着用する。設備停止と残圧開放を徹底し、グリースガンの誤作動防止ロックを活用する。床面への滴下は滑り事故を招くため即時清掃する。

補足:よくあるトラブルと対策

  • 空打ち:エア噛み。ベント操作とカートリッジ先端の確実な折膜処理で解消。
  • 漏れ・抜け:カプラー摩耗や規格不一致。カプラー更新と規格整合で対処。
  • 過給脂:シール破損や発熱。定量化と給脂間隔の見直しで抑制。
  • 異物混入:ノズル先端の汚染。キャップ保護と作業前拭浄を徹底。

補足:関連工具・管理

グリースガンの運用は、設備ごとに給脂点マップと周期、数量の台帳化で平準化できる。ニップル延長・角度調整、ロック式カプラーの採用で作業性が向上する。組立時にはねじ潤滑やボルト締結の初期なじみ改善にも配慮し、給脂による締結体の緩み誘発を避けるため、トルク管理と適切なシール材選定を併用する。