Vベルト
Vベルトとは、ベルトのひとつで、プーリとの摩擦力によって伝動する機械要素である。断面が台形の形になっているため、Vベルトと呼ばれる。V状のベルトが、V状のプーリの溝にくさびのように食い込むため、Vベルトとプーリの両側面に大きな摩擦力が生じ、平行2軸間で動力を伝達する。平ベルトに比べて、接触面積が大きく、摩擦が大きいため滑りが少なく伝達効率が良い。なお、摩擦伝動のため、過負荷に対してはスリップして機械への衝撃を緩和するが、正確な伝動を求める場所には適さない。
Vベルトの特徴
- 回転速度の範囲が大きい
- 回転比を任意で決めることができる
- 軸間の距離の許容幅が大きい
- 騒音が小さい
- ベルト交換などのメンテナンス性がよい
- 潤滑剤がいらない
- 安価性がよい
Vベルトの製造
Vベルトは、心体を合成繊維やガラス繊維などで補強したゴムを主材料として、継ぎ目のない環状に製造される。ゴムの材質によって耐熱性、耐油性、耐屈曲性、耐摩耗性など性能が大きく左右される。また、大きな張力に耐えるようにポリエステルコードなどの糸(心線)を通して作られる。
Vプーリ
Vプーリは、Vベルトに対応したプーリ(ベルト車)である。Vプーリは一般に鋳鉄製であるが、高速用には鋳鋼のものがある。そのほかアルミニウム合金も使われる。Vプーリの溝はVベルトの形状に合わせてV型になっているが、Vベルトが曲げられると、外側の幅はせまり、内側はひろがるため、Vプーリの溝角度は、Vベルトの角度より大きくなる。一般的には、34°から38°で溝に食い込む摩擦力によって大きな動力を伝達することができる。
Vベルトの種類
Vベルトは、幅の大きさを基準に一般用Vベルト、細幅Vベルト、広幅Vベルト、広角Vベルトがある。
一般用Vベルト
一般用Vベルトは広く使われ、入手交換が容易で、電動時のベルト速度は最高30m/sが目安である。台形断面に切り込みを入れて曲がりやすくしたVベルトもある。
細幅Vベルト
細幅Vベルトとは、一般用 Vベルトと比べて、厚さが厚く、幅が狭い。一般用Vベルトに比べて性能が大幅に向上し、寿命も長く、同一の伝動条件ならば、装置を小形にでき、高速伝動にも適するなどの特長をもつため、普及が拡大している。伝動時のベルト速度は最高40 m/sが目安である。
広幅Vベルト
広幅ベルトとは、式無段変速装置に使用されるベルトで、ベルトの幅が広いため変則範囲を大きくできる。小径のプーリに対してもよく曲がってなじむように、ベルトの底面は波形になっている。
広角Vベルト
広角ベルトは、VベルトのVの角度が大きく、心線の量が多いベルトである。また、ベルト側面に働く圧縮力に耐えるため、ベルト背面の横方向に補強のリブがある。プーリ溝へのベルトの落ち込みが少なく、ベルトのプーリ離れがよい。また、屈曲性がよいため、小径のプーリが使用できるなどの特長をもつ。トルク変動の少ない連続高速伝動の場合やプーリ径を小さくしたい場合に適する。伝動時のベルト速度は最高 60m/s程度である。
Vベルトの適用範囲
リンクの種類 | 軸距離 m | 速度比 | リンク速度 m/s |
---|---|---|---|
平ベルト | 10以下 | 1:1~6(15以下) | 10~30 (15以下) |
Vベルト | 5以下 | 1:1~7(10以下) | 10~15 (10以下) |
初張カ
初張力とは、適正な摩擦力を想定した、ベルトに与える適正な張力である。初張力が大きすぎれば軸受の負担や摩擦が大きくなり、また小再場合は、滑りが生じ、振動も発生しやすくなる。
張カを求める式
張カの調整
機械の稼働時間に応じて定期的な調整が必要になる。Vベルトは、テンションプーリを使用して調整するか、プーリ軸が移動できる場合、軸の位置を変えて調整する。多数のVベルトを使う場合は定期交換を推し進める場合もある。
回転比
VベルトとVプーリの間に滑りがないものとすると回転比は次のようになる。実際には、ベルトとプーリによる摩擦で回転運動を伝えるため、その接触面が小さくなると摩擦力は小さくなり、滑りが大きくなって回転運動の伝達効率は低下する。
角度
VベルトのV字の角度は40°で、断面によりM,A,B,C,D,Eの六種類がある。Vプーリの溝の角度は、Vベルトの種類や呼び径によって異なるが、VベルトのM,A,B,Cでは溝角度は呼び径によって34°,36°,38°,DおよびEでは36°,38°が規定されている。
ベルトの長さ
ベルトの長さについて、軸間距離がプーリの直径に比べて十分大きい場合、あるいは回転比が1に近い場合は、ベルト長さLは近似的に次式で表される。普通、ベルトのため、シームレス品のため、途中で長さを調節することはできず、適切な長さを選定する必要がある。
ベルト速度
ベルト速度は下記の通りで示す。
プーリに押し付ける力
プーリに押し付けられる力Fは、ベルト側面に直角に作用する力、と摩擦係数、角度によって次のように表される。
プーリに押し付ける力の展開
微少部分の法線方向の力の釣り合いから以下の式が成立する。
巻き角
伝達動力と速度
複数のVベルトによる伝達動力の確保
Vベルトが1本で伝達動力が不足しているときは、複数用いることで伝達動力を確保できる。