SUS(ステンレス鋼)|耐食性、強度に優れた多用途なステンレス鋼材

SUS

SUSとは、日本工業規格(JIS)におけるステンレス鋼材の略称であり、主にクロム、ニッケルなどを添加して作られる合金鋼のことを指す。この鋼材は、高い耐食性や強度、耐熱性を持つことから、建築資材、家庭用品、化学プラント設備など、さまざまな用途で広く利用されている。SUSには「オーステナイト系」「マルテンサイト系」「フェライト系」などの種類があり、それぞれ異なる特性を持つため、用途に応じて最適な選択が可能である。

ステンレス鋼の概要

ステンレス鋼は、クロムを主成分とする鉄合金で、主に耐食性を向上させるために使用されている。クロム含有率が約10.5%以上で、表面に薄い不働態の酸化被膜を形成することで、錆びにくい特性を持つ。この不働態被膜は自己修復機能を持ち、傷がついても再び酸化被膜を形成することができるため、耐食性が長期間保たれる。SUSはこのステンレス鋼を指し、さらにニッケルモリブデンを加えることで、その耐食性や機械的強度が強化されている。

SUSの種類と特性

SSUSSには、主にオーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、そして二相系や析出硬化系などの種類が存在する。オーステナイト系(例:SUS304SUS316)は耐食性と成形加工性に優れ、食品加工機器や化学工業機器に適している。マルテンサイト系(例:SUS410)は、焼入れによって高い強度と硬度を持ち、刃物やバルブなどに使用される。フェライト系(例:SUS430)は磁性を持ち、家庭用品や車両部品などで利用される。用途に応じて適したSUSが選ばれることで、最適な性能を発揮することができる。

オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316など)

オーステナイト系ステンレス鋼は、クロムとニッケルを主成分とし、耐食性と成形加工性に優れているのが特徴である。代表的なものにSUS304SUS316がある。SUS304は、最も汎用的に使用されるステンレス鋼で、家庭用設備や食品加工装置、建築資材など、幅広い用途に利用されている。SUS316は、モリブデンを添加することでさらに耐食性を向上させており、特に塩分や化学薬品に触れる環境で優れた耐性を発揮するため、海水環境や化学プラントなどに使用される。

マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410、SUS420など)

マルテンサイト系ステンレス鋼は、クロムを多く含み、焼入れによる硬度と強度の向上が特徴である。SUS410やSUS420が代表的で、これらは耐摩耗性と強度が求められる用途に適している。例えば、刃物、バルブ部品、工具などの製造に利用される。マルテンサイト系は熱処理を行うことで硬化し、衝撃に対する耐性も高くなるため、高強度が求められる環境において非常に有効であるが、耐食性はオーステナイト系より劣ることがある。

フェライト系ステンレス鋼(SUS430など)

フェライト系ステンレス鋼は、クロムを主成分とし、比較的安価でありながらも一定の耐食性を持つのが特徴である。SUS430はその代表例であり、磁性を持ち、成形加工性にも優れている。家庭用の台所製品や車の排気系部品などに広く使われており、特に耐熱性が必要な環境で利用されることが多い。フェライト系は熱処理による硬化はできないが、コストパフォーマンスが高いため、一般的な用途で幅広く採用されている。

二相系ステンレス鋼(SUS329J1など)

二相系ステンレス鋼は、フェライト相とオーステナイト相を兼ね備えた組織を持ち、耐食性と強度のバランスが非常に良い。SUS329J1はその代表例であり、特に塩素を含む環境での耐応力腐食割れ性に優れている。この特性から、海水関連施設や石油化学プラントなど、過酷な環境下での使用に適している。二相系はフェライト系とオーステナイト系の特性を併せ持つため、耐久性と加工性において優れた性能を発揮する。

析出硬化系ステンレス鋼(SUS630など)

析出硬化系ステンレス鋼は、時効処理によって硬化する特徴を持ち、高い強度と耐食性を両立している。代表的なSUS630(17-4PH)は、航空機部品や化学装置など、高強度が要求される用途に適している。析出硬化系は、硬度と靭性のバランスが良く、かつ優れた機械加工性を持つため、精密機械や高性能が求められる産業で重要な役割を果たしている。

用途と選択基準

SUSの用途は非常に広範囲にわたり、使用環境や求められる特性に応じて選ばれる。例えば、SUS304は耐食性に優れており、家庭用シンクや調理器具、建築の内外装などで広く使用されている。SUS316はさらに耐食性が高いため、化学プラントや海洋環境での使用が適している。また、マルテンサイト系のSUS410は硬度が高く、刃物や工具の製造に用いられる。選択基準としては、耐食性、強度、成形加工性、コストなどが考慮される。

耐食性

SUSの耐食性は、クロム含有による不働態被膜によって確保されているが、ニッケルやモリブデンを添加することでさらに向上する。例えば、SUS316に含まれるモリブデンは、塩素イオンによる腐食に対する抵抗力を増し、海水や化学薬品にさらされる環境での使用に適している。また、適切な表面処理を行うことにより、耐食性をさらに向上させることが可能であり、酸洗いやパッシベーション処理などが行われることが多い。

加工性

オーステナイト系のSUSは加工性に優れており、冷間加工や溶接が容易に行えるのが特徴である。冷間加工によって硬化する性質があり、これにより強度を増すことができる。一方、マルテンサイト系のSUS熱処理による硬化が可能であり、工具や刃物の製造に適している。フェライト系は比較的成形加工性が高く、耐食性とコストのバランスが良いため、日常的な用途で広く使われている。

メリットとデメリット

SUSのメリットは、その優れた耐食性と多様な環境で使用できる柔軟性にある。これにより、食品加工、化学機器、自動車部品、建築材など、多くの分野で活躍している。一方で、デメリットとしては、ニッケルモリブデンなどの添加元素の影響で、材料費が高くなることがある。また、特にマルテンサイト系は耐食性が劣ることがあるため、使用環境に応じた適切な選択が必要である。

使用上の注意点

SUSを使用する際には、適切な取り扱いが重要である。例えば、オーステナイト系のSUS冷間加工により硬化するため、過度の加工を避けることが求められる。また、溶接後には耐食性の低下を防ぐためにパッシベーション処理を行うことが推奨される。マルテンサイト系については、適切な熱処理によって硬度を高めることができるが、焼入れの際には歪みや割れに注意する必要がある。これらの適切な処理を行うことで、SUSの性能を最大限に引き出すことが可能となる。

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