SUS
SUSとは、日本工業規格(JIS)におけるステンレス鋼材の略称であり、主にクロム、ニッケルなどを添加して作られる合金鋼のことを指す。この鋼材は、高い耐食性や強度、耐熱性を持つことから、建築資材、家庭用品、化学プラント設備など、さまざまな用途で広く利用されている。SUSには「オーステナイト系」「マルテンサイト系」「フェライト系」などの種類があり、それぞれ異なる特性を持つため、用途に応じて最適な選択が可能である。
ステンレス鋼の概要
ステンレス鋼は、クロムを主成分とする鉄合金で、主に耐食性を向上させるために使用されている。クロム含有率が約10.5%以上で、表面に薄い不働態の酸化被膜を形成することで、錆びにくい特性を持つ。この不働態被膜は自己修復機能を持ち、傷がついても再び酸化被膜を形成することができるため、耐食性が長期間保たれる。SUSはこのステンレス鋼を指し、さらにニッケルやモリブデンを加えることで、その耐食性や機械的強度が強化されている。
いいですか?今から大事なことを言います。ステンレスはSUSと書いて「サス」と呼ばれます。「ステン」でもOKです。人生が豊かになる魔法の言葉なので是非覚えておいてください。 pic.twitter.com/Rla4zssuSy
— HIRAOKA Yusaku 平岡 雄策 (@HiraokaYusaku) July 8, 2024
SUSの種類と特性
SSUSSには、主にオーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、そして二相系や析出硬化系などの種類が存在する。オーステナイト系(例:SUS304、SUS316)は耐食性と成形加工性に優れ、食品加工機器や化学工業機器に適している。マルテンサイト系(例:SUS410)は、焼入れによって高い強度と硬度を持ち、刃物やバルブなどに使用される。フェライト系(例:SUS430)は磁性を持ち、家庭用品や車両部品などで利用される。用途に応じて適したSUSが選ばれることで、最適な性能を発揮することができる。
◆建具工事,金属工事でよく使用するステンレスの種類
SUS410、SUS430、SUS304、SUS316Lを比較表にまとめました
SUS410は施工性◎
磁性が有りビットに付き、硬くて、テクスビスなら下地がStでも下穴無しで施工出来るので重宝されますが、外部では錆びるので使用箇所には注意が必要 pic.twitter.com/qYxNbiTwr2— たぬき|CAD素材.com (@TNS_tanu) July 4, 2022
オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316など)
オーステナイト系ステンレス鋼は、クロムとニッケルを主成分とし、耐食性と成形加工性に優れているのが特徴である。代表的なものにSUS304とSUS316がある。SUS304は、最も汎用的に使用されるステンレス鋼で、家庭用設備や食品加工装置、建築資材など、幅広い用途に利用されている。SUS316は、モリブデンを添加することでさらに耐食性を向上させており、特に塩分や化学薬品に触れる環境で優れた耐性を発揮するため、海水環境や化学プラントなどに使用される。
アルミへの切削スピンもアルマイトで様々な色を付けられるので好きですが、
やはりSUS304やSUS316Lに切削スピン仕上げした時の黒光した美しさはステンレスならではなので個人的に1番好きです。
(好きなだけ触れるのも良い) pic.twitter.com/yIZdDRyR7T— Takahiro Nakamura (@Taka_N_H) November 12, 2024
マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410、SUS420など)
マルテンサイト系ステンレス鋼は、クロムを多く含み、焼入れによる硬度と強度の向上が特徴である。SUS410やSUS420が代表的で、これらは耐摩耗性と強度が求められる用途に適している。例えば、刃物、バルブ部品、工具などの製造に利用される。マルテンサイト系は熱処理を行うことで硬化し、衝撃に対する耐性も高くなるため、高強度が求められる環境において非常に有効であるが、耐食性はオーステナイト系より劣ることがある。
クロム系ステンレス(SUS410)の板厚100mmをプラズマで切断しました。
残材から製品を切り出し、材料を有効活用しています! pic.twitter.com/wqWoa95zH5— 大谷加工 (@RVQgouzvFoWTpBL) April 17, 2023
フェライト系ステンレス鋼(SUS430など)
フェライト系ステンレス鋼は、クロムを主成分とし、比較的安価でありながらも一定の耐食性を持つのが特徴である。SUS430はその代表例であり、磁性を持ち、成形加工性にも優れている。家庭用の台所製品や車の排気系部品などに広く使われており、特に耐熱性が必要な環境で利用されることが多い。フェライト系は熱処理による硬化はできないが、コストパフォーマンスが高いため、一般的な用途で幅広く採用されている。
【町工場実験場】
コチラが近影。サンドブラスト前後でお比べ下さい。材質はSUS430、耐食性がそこそこあるステンレス鋼です。建築内装、家電、調理器具など様々な場面で使われます。磁石がつくぞ!
あ、面粗度の測定を忘れました(´・ω・` ;) I#サンドブラスト #SUS430 pic.twitter.com/xLjE7JbOFU
— 「微細・精密加工」松浦製作所@11/30(土)『まちこうばがやってくる!』出展 (@bisai_matsuura) November 11, 2020
二相系ステンレス鋼(SUS329J1など)
二相系ステンレス鋼は、フェライト相とオーステナイト相を兼ね備えた組織を持ち、耐食性と強度のバランスが非常に良い。SUS329J1はその代表例であり、特に塩素を含む環境での耐応力腐食割れ性に優れている。この特性から、海水関連施設や石油化学プラントなど、過酷な環境下での使用に適している。二相系はフェライト系とオーステナイト系の特性を併せ持つため、耐久性と加工性において優れた性能を発揮する。
今日はSUSの329j4l二相系の材質
オーステナイト系とフェライト系の
両方の性質を持ってますなので304や316は水等で急冷した
方が良いのに対してこれは割れるので
注意です品管いわく溶接後直ぐのエアーブローで割れたそうです
今日は足場めくりました😂
もうちょっと溶接箇所どーにかならんか😒 pic.twitter.com/5l3ShC6P4r
— わたわた (@watawatawapi) October 7, 2024
析出硬化系ステンレス鋼(SUS630など)
析出硬化系ステンレス鋼は、時効処理によって硬化する特徴を持ち、高い強度と耐食性を両立している。代表的なSUS630(17-4PH)は、航空機部品や化学装置など、高強度が要求される用途に適している。析出硬化系は、硬度と靭性のバランスが良く、かつ優れた機械加工性を持つため、精密機械や高性能が求められる産業で重要な役割を果たしている。
φ13ドリルでSUS630に深さ300の穴あけ。機械はインテグレックス。テールストックとミーリングヘッドの間が僅かでドキドキしました😳S1400 F378 ノンステップで問題無し👍切り屑も短く分断できています。 pic.twitter.com/fXVapHsP5Q
— 株式会社Cominix (@Cominix1) May 8, 2024
用途と選択基準
SUSの用途は非常に広範囲にわたり、使用環境や求められる特性に応じて選ばれる。例えば、SUS304は耐食性に優れており、家庭用シンクや調理器具、建築の内外装などで広く使用されている。SUS316はさらに耐食性が高いため、化学プラントや海洋環境での使用が適している。また、マルテンサイト系のSUS410は硬度が高く、刃物や工具の製造に用いられる。選択基準としては、耐食性、強度、成形加工性、コストなどが考慮される。
耐食性
SUSの耐食性は、クロム含有による不働態被膜によって確保されているが、ニッケルやモリブデンを添加することでさらに向上する。例えば、SUS316に含まれるモリブデンは、塩素イオンによる腐食に対する抵抗力を増し、海水や化学薬品にさらされる環境での使用に適している。また、適切な表面処理を行うことにより、耐食性をさらに向上させることが可能であり、酸洗いやパッシベーション処理などが行われることが多い。
加工性
オーステナイト系のSUSは加工性に優れており、冷間加工や溶接が容易に行えるのが特徴である。冷間加工によって硬化する性質があり、これにより強度を増すことができる。一方、マルテンサイト系のSUSは熱処理による硬化が可能であり、工具や刃物の製造に適している。フェライト系は比較的成形加工性が高く、耐食性とコストのバランスが良いため、日常的な用途で広く使われている。
メリットとデメリット
SUSのメリットは、その優れた耐食性と多様な環境で使用できる柔軟性にある。これにより、食品加工、化学機器、自動車部品、建築材など、多くの分野で活躍している。一方で、デメリットとしては、ニッケルやモリブデンなどの添加元素の影響で、材料費が高くなることがある。また、特にマルテンサイト系は耐食性が劣ることがあるため、使用環境に応じた適切な選択が必要である。
使用上の注意点
SUSを使用する際には、適切な取り扱いが重要である。例えば、オーステナイト系のSUSは冷間加工により硬化するため、過度の加工を避けることが求められる。また、溶接後には耐食性の低下を防ぐためにパッシベーション処理を行うことが推奨される。マルテンサイト系については、適切な熱処理によって硬度を高めることができるが、焼入れの際には歪みや割れに注意する必要がある。これらの適切な処理を行うことで、SUSの性能を最大限に引き出すことが可能となる。