SUS304(18-8ステンレス鋼)|耐食性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼

SUS304

SUS304は、オーステナイト系ステンレス鋼の代表的な材質であり、耐食性と加工性に優れているため、幅広い用途で使用されている。SUS304は主にクロム(約18%)とニッケル(約8%)を含み、これにより高い耐食性と非磁性の特性を持つ。耐食性が高いため、建築物の内外装材、厨房機器、家庭用シンク、食品加工装置、化学工業用タンクや配管など、多くの産業分野で広く利用されている。また、優れた加工性を持ち、冷間加工溶接が容易に行えるため、設計の自由度が高い材料である。

材料特性

SUS304は、クロムとニッケルの組み合わせにより、非常に優れた耐食性を発揮する。これにより、湿気の多い環境や酸性、アルカリ性の腐食環境でも安定した性能を維持できる。また、オーステナイト組織を持つため、常温で磁性を持たないことが特徴である。機械的には、靭性があり、冷間加工によってさらに強度を増すことが可能である。この特性により、冷間引抜きやプレス加工などの複雑な形状を必要とする用途に適している。

加工性と熱処理

SUS304は優れた加工性を持ち、冷間加工や熱間加工が可能である。冷間加工では、強度と硬度を向上させることができ、特に冷間引き抜きによるワイヤーや薄板の製造に適している。熱間加工も可能で、鍛造や圧延などでの加工も行われることが多い。溶接性も高く、溶接後の耐食性の低下を防ぐために、溶接部分に適切な仕上げ処理を行うことが推奨される。酸洗いやパッシベーションなどの表面処理により、溶接部の耐食性を回復させることが可能である。

メリットとデメリット

SUS304のメリットは、何よりもその優れた耐食性と加工性である。これにより、湿気や腐食にさらされる環境でも長期間安定した性能を発揮し、幅広い加工手法に対応できる。一方で、デメリットとしては、高温環境下での耐久性が限られることがある。特に、塩素や塩分が多い環境では腐食が進行しやすく、耐食性に制限が出ることがある。そのため、より耐塩害性が求められる場合には、SUS316などの他のステンレス鋼が選ばれることも多い。

用途

SUS304は、その優れた耐食性と加工性から、多岐にわたる用途で利用されている。例えば、家庭用のシンクや調理器具、電気製品の筐体などの住宅設備に多用されているほか、食品加工設備や化学プラントの配管・タンクなど、耐腐食性が求められる環境で頻繁に使用されている。また、建築物の内外装材として、屋内外の金属パネル、手すり、フェンスなどに使われ、耐久性と美観を兼ね備えた材料として重要な役割を果たしている。

使用上の注意点

SUS304を使用する際には、使用環境に応じて適切な表面処理を行うことが重要である。特に、塩素や塩分を含む環境では、腐食が進行しやすいため、適切な保護処理を施すことが推奨される。また、溶接後には酸洗いやパッシベーション処理を行い、溶接部の耐食性を回復させることが必要である。SUS304は加工性に優れているものの、過剰な加工を行うと硬化して脆くなることがあるため、加工方法には注意が必要である。

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