ディーゼルエンジン|高効率・高トルクで力強く駆動する

ディーゼルエンジン

ディーゼルエンジンは、燃料と空気の混合気を点火プラグで着火する火花点火と異なり、高い圧縮により圧縮終期の空気温度を上げ、噴射された燃料が自着火する圧縮着火式の内燃機関である。代表的な理論はDiesel cycleで、断熱圧縮→等圧燃焼→断熱膨張→排気の過程で熱を仕事に変換する。ガソリン機関より高い圧縮比を許容し、理論上の熱効率が高い点が特徴である。

構造と主要部品

ディーゼルエンジンの基本構成は、シリンダブロック、ピストン・コンロッド、クランク軸、吸排気弁、燃料噴射系、過給機(任意)、冷却・潤滑系から成る。特に燃料噴射系は性能を左右し、近年は電子制御のcommon railが主流である。高強度材料の採用により高い最大爆発圧にも耐える。

ディーゼルサイクルの要点

理論サイクルでは、等圧燃焼を仮定し、圧縮比とカットオフ比に依存して熱効率が決まる。実機では噴射時期・噴射率形状・空気過剰率が燃焼期間と圧力上昇率を規定する。圧縮比は圧縮比として設計上の主要パラメータである。

代表的な指標

  • 熱効率:理論は圧縮比上昇で改善(実機は伝熱・摩擦で低下)。熱効率
  • BSFC:燃料消費率。過給・噴射最適化で低減。
  • 最大筒内圧:機械強度・騒音の制約要因。

燃料と燃焼特性

ディーゼルエンジンは主に軽油を用い、セタン価が着火遅れと燃焼ノイズを左右する。大型舶用では低硫黄重油も使われる。燃焼は噴霧の微粒化・混合・自着火・拡散燃焼の連鎖で進み、噴射圧・ノズル設計・渦流生成が鍵である。燃料系の圧力損失と管内流量は噴射率波形を通じて燃焼形成に影響する。

用語メモ

  • セタン価:着火性評価値(高いほど着火遅れ短縮)。セタン価
  • パイロット噴射:騒音とNOx低減のための先行微量噴射。

過給と出力特性

ターボチャージャ(exhaust gas turbo)やスーパーチャージャで過給し、空気過剰率を確保して出力・効率を高める。可変ジオメトリ過給(VGT)や二段過給で過渡応答と高地補正を両立する。過給機の選定はマッチングマップで行い、排気エネルギ回収とポンピング損の最適化が要となる。

排出ガス対策

ディーゼルエンジンはNOxとPMが課題である。燃焼側ではEGRで酸素濃度と火炎温度を下げNOxを抑制し、後処理ではDOC、DPF、SCRを組み合わせる。SCRは尿素水でNOxを還元し、DPFは微粒子を捕集・再生する。制御は排気温度・触媒充填量・差圧の推定を用いる。規制順守には燃料硫黄分低減が前提である。

環境負荷の低減

  1. 噴射制御の高精度化(多段噴射・高圧化)
  2. EGRクーラの熱交換改良
  3. 後処理の熱マネジメント最適化

性能と比較

ディーゼルエンジンは低回転高トルク、部分負荷でも良好なBSFC、高い耐久性が利点である。一方、重量増と高コスト、冷間始動性、騒音・振動が課題となる。火花点火に比べ希薄燃焼でポンピング損が小さく、長距離・高負荷用途に適する。

応用分野

自動車(商用車・乗用車)、建設機械、農業機械、発電、鉄道、舶用主機に広く用いられる。大型では二ストローク舶用機関や低速大直径ボアが採用される。燃料の性状は用途で異なり、道路用は軽油、舶用はLSFOなどの重油系が中心である。

制御と計測

ECUは噴射時期・噴射量・レール圧・EGR・過給を協調制御する。筒内圧センサやイオン電流、排気後処理の差圧・温度計測から適応制御を行い、目標トルク・排出の制約下で最適化される。燃料系・吸気系の流量計測は重要である。

材料・信頼性

高圧縮・高爆発圧に耐えるため、シリンダヘッドは鋳鉄や高耐熱合金、ピストンはアルミ合金や鍛造鋼を用いる。熱疲労、キャビテーション、オイルデポジット、DPF灰蓄積などが寿命を左右する。適切な潤滑、冷却、フィルトレーション、燃料清浄が信頼性を高める。

典型的な故障モード

  • インジェクタのコーキング・リーク
  • ターボ軸受摩耗と過回転
  • DPF目詰まりと再生失敗