流量
流量は単位時間あたりに移動する物質の量を表す基礎量である。工学では主に体積流量(Q=dV/dt)と質量流量(ṁ=dm/dt)を用い、必要に応じてモル流量(ṅ=dn/dt)も扱う。体積流量の単位はm^3/sやL/min、質量流量はkg/sやt/hが用いられる。両者は密度ρで結びつき、ṁ=ρQで換算できる。ただし圧縮性が強い気体ではρが位置や時間で変動するため、標準状態基準の体積流量を用いるなど定義の明確化が欠かせない。配管・ダクト設計、ポンプやタービンの選定、プロセス制御、エネルギー計算に不可欠であり、レイノルズ数やベルヌーイの定理とともに基礎をなす概念である。
定義と種類
体積流量Qは通過断面を横切る体積Vの時間変化率で、連続体仮定のもとでQ=∬_A v・n dAで定義される。質量流量ṁは同様に質量mの時間変化率である。混合気体や多相流では、各成分の部分流量(体積・質量・モル)を定める。時間平均値(定常運転の把握)と瞬時値(脈動評価)、積算流量(累積量管理)を使い分けることが重要である。
単位と換算
体積流量はm^3/s、m^3/h、L/minなどが実務で多用される。質量流量はkg/s、kg/h、t/hが一般的で、ṁ=ρQにより相互換算する。気体は温度・圧力でρが変化するため、標準状態(例:0°C、1atm)での体積流量表記を併記すると誤解が避けられる。
連続の式と保存則
定常一方向流れでは、断面Aをもつ管の入口1と出口2でρ1A1v1=ρ2A2v2が成り立つ。非圧縮近似(液体など)ではA1v1=A2v2となり、断面変化に伴う速度と体積流量の整合を素早く評価できる。配管網では結節点での流量収支(入出合計の一致)を基礎に圧力損失計算を行う。
測定原理と機器選定
測定は流体特性・配管条件・精度要求で選ぶ。代表例は次の通りである。
- 差圧式(オリフィス、ベンチュリ、ノズル):圧力差から体積流量を導出。構造が簡便で標準化が進むが、圧力損失が比較的大きい。
- ピトー管:点速度から流量推定。ダクト測定に有効。
- 電磁流量計:導電性液体の体積流量を非侵襲で測定。直管長要求に注意。
- 超音波流量計:配管外装着可能。既設配管での臨時計測に有効。
- 渦式(カルマン渦):一定の速度範囲で安定。粘度・乱流の影響に留意。
- コリオリ質量流量計:密度変動に強く、直接的に質量流量を高精度で得る。
配管損失とスケールアップ
配管内の摩擦・継手の局所損失は流量に直結する。Darcy–Weisbach式(hf=f(L/D)v^2/2g)やK値で評価し、直管長・曲がり・バルブ配置を最適化する。内面粗さや温度によるρ・μ変化が設計流量を左右するため、余裕率の設定が肝要である。
圧縮性流とチョーク
気体の高速流ではマッハ数が支配的となり、下流圧を下げても流量が増えないチョーク(臨界流)が起こる。ノズル・オリフィスの設計やベント・パージの容量計算では、臨界条件の有無を必ず確認する。
流れの状態と計測誤差
レイノルズ数により層流・遷移・乱流が決まり、速度分布と指示計の特性が変化する。上流のエルボや弁による旋回は指示偏差を招くため、整流器や十分な直管長を確保する。温度・圧力補償を行い、零点ドリフトやスケールファクタを定期校正で抑える。
実務計算の例
内径D=50mmの円管に20°Cの水が流れ、平均速度v=1.5m/sとする。断面積A=πD^2/4=1.963×10^-3m^2より体積流量Q=Av≒2.95×10^-3m^3/s=177L/min。水の密度を約998kg/m^3とすれば質量流量ṁ≒176kg/minである。配管損失や装置入口の必要流量から逆算して機器容量(例:スクリューポンプやポンプ)を選定する。
プロセスとの関係
化学反応器では供給流量が滞留時間を決め、伝熱器では表面熱流束と流量が温度差を決定する。発電設備では蒸気・水の流量がタービン出力と直結し、最終的に発電機の電力に影響する。設備全体最適化では、圧力損失とポンプ動力、計測精度とコストのトレードオフを系統的に評価する。
設計・運用上のチェックリスト
- 必要精度とダイナミックレンジ:最小~最大流量、脈動の有無。
- 流体物性:ρ・μ・導電率・腐食性・固形物混入。
- 配管条件:直管長、取付姿勢、振動・騒音。
- 補償と校正:温度・圧力補償、ゼロ点確認、定期校正。
- 保守性:センサ分解洗浄、閉塞検知、スペア準備。
よくある落とし穴
ゲージの指示値をそのまま体積流量と見なす誤用、標準状態換算の失念、旋回・偏流を無視した平均速度推定、二相流で単相前提の係数を流用することなどが典型例である。設計段階で不確かさを見積もり、計装と配管を一体で最適化することが望ましい。