流速計
流速計とは、気体や液体が流れる速さ、すなわち単位時間あたりに流体が移動する距離を測定する計測器である。配管内の流れだけでなく、風洞実験、河川の観測、空調ダクトの風量調整、航空機の対気速度計測まで対象は幅広い。単位はm/sで表されることが多く、測定原理には差圧式、熱式、電磁式、超音波式、レーザー式などがある。断面積を乗じれば流量に換算できるため、流量計測の基礎を担う計器でもある。
流量計との違い
流速計は「速さ」を、流量計は「単位時間あたりの体積または質量」を測る計器であり、両者は区別される。円管内の流量Qは断面積Aと平均流速vからQ=A×vで求められるため、流速がわかれば流量を算出できる。ただし管内の流速は一様ではない。層流では中心流速が平均流速の2倍に達する放物線分布となり、乱流では比較的平坦な分布になる。したがって1点の測定値から流量を求める場合には、レイノルズ数(層流はRe≦2300が目安)に応じた速度分布の補正が欠かせない。この点が、オリフィスやベンチュリ管のように管全体の流量を直接測る絞り機構との実務上の大きな違いである。
差圧式(ピトー管)
最も歴史の古い方式がピトー管による差圧式である。1728年にフランスのアンリ・ピトーが考案し、セーヌ川の流速測定に用いたとされる。先端の孔で全圧を、側面の孔で静圧を検出し、その差である動圧から流速を求める。理論的な裏付けはベルヌーイの定理であり、流速vは動圧Δp、流体密度ρを用いてv=√(2Δp/ρ)で表される。標準形状はJIS B 8330に規定されており、風洞試験や空調ダクトの風速測定、航空機の速度計として現在も広く使われる。構造が単純で可動部がない反面、動圧は流速の2乗に比例するため低流速では差圧が微小になり、おおむね1m/s未満の測定には向かない。
熱線流速計
熱線流速計は、加熱した金属細線が流れによって奪われる熱量から流速を求める方式である。センサには直径5μm程度のタングステン線や白金線が用いられ、流速が上がるほど放熱が増えて線の温度が下がる関係を電気的に検出する。応答周波数は数十kHzに達し、乱流の速度変動の解析に不可欠な計器として研究分野で重用される。数cm/sの微風から測れる感度も利点である。一方で細線は塵埃や衝撃に弱く、汚れた気流では校正がずれやすい。現場の空調測定では、細線の代わりにサーミスタを用いた耐久性の高い熱式風速計が普及している。
電磁式と超音波式
導電性の液体には電磁式が適する。ファラデーの電磁誘導の法則に基づき、磁界中を流れる水などの導電性流体に生じる起電力から流速を得る仕組みで、可動部がなく圧力損失も生じない。河川観測や上下水道分野で実績が多い。超音波式には、上流・下流に斜めに超音波を伝搬させて到達時間の差から流速を求める伝搬時間差法と、流体中の気泡や粒子からの反射波の周波数変化を利用するドップラー法がある。ドップラー法を応用したADCP(超音波ドップラー流速分布計)は、水深方向の流速分布を非接触で一度に取得できるため、洪水時の河川流量観測で標準的な手法になりつつある。
レーザードップラー流速計
レーザードップラー流速計(LDV)は、2本のレーザー光の交差部を通過する微粒子の散乱光の周波数変化から流速を求める光学式計器である。流れを一切乱さずに測定でき、空間分解能は0.1mm以下と極めて高い。ただし装置が高価で、流体中に散乱粒子(トレーサ)を必要とするため、用途は風洞実験やエンジン内流動解析などの研究開発に限られる。
河川・開水路での測定
開水路の流速測定では、プロペラの回転数が流速に比例することを利用した回転式流速計が古くから使われてきた。国内の河川流量観測では、水深の60%の位置の流速を平均流速とみなす1点法や、20%と80%の2点法が実務の定番である。近年は電波式流速計により水面流速を橋上から非接触で測る手法も普及し、観測者が接近できない増水時の安全確保に役立っている。取得した流速はポンプ設備の揚程計算や排水計画の基礎データとしても利用される。
選定と使用上の注意
方式の選定では、対象流体、流速レンジ、応答性、価格のバランスを見る。目安として、ダクト風量のスポット確認なら1本数万円の熱式風速計、常設の水流監視なら電磁式、乱流研究なら熱線式やLDVという使い分けになる。共通する注意点は測定位置である。エルボや弁の直後は流れが偏るため、上流側に管径の10倍以上の直管部を確保するのが望ましい。ピトー管では流れ方向と管軸の角度ずれが誤差になり、5°を超えると無視できない。熱式は流体温度の変動、電磁式は導電率の下限(一般に5μS/cm程度)にも留意して運用する必要がある。
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