国際単位系(SI系)|7つの基本単位で世界を測る共通尺度

国際単位系(SI系)

国際単位系(SI:Système International d’Unités)は、1960年の第11回国際度量衡総会(CGPM)で採択された世界共通の単位体系である。長さのメートル、質量のキログラム、時間の秒など7つの基本単位と、それらを組み合わせた組立単位、桁を表すSI接頭語で構成される。2019年5月20日には全基本単位が物理定数によって定義し直され、人工物に頼らない体系へと生まれ変わった。日本では計量法とJISを通じて産業・教育の両面に浸透している。

メートル条約からSIの誕生まで

源流は18世紀末のフランスにある。革命政府は地球子午線の長さを基準にしたメートル法を制定し、国ごと・地域ごとにばらばらだった度量衡の統一を目指した。1875年には17か国がメートル条約に調印し、パリ郊外セーヴルに国際度量衡局(BIPM)が置かれる。日本の加盟は1885年(明治18年)である。1889年には白金イリジウム合金製の国際キログラム原器と国際メートル原器が承認され、以後これらの「モノ」が世界の基準となった。MKS単位系やCGS単位系が並立する時代を経て、電流・温度・光度などを加えた包括的な体系として整理されたのがSIである。

7つの基本単位と定義定数

現在のSIは、7つの定義定数の数値を固定し、そこから各基本単位を導く構造をとる。量と単位、根拠となる定数の対応は次のとおりである。

量 単位(記号) 定義に用いる定数
時間 秒(s) セシウム133の超微細遷移周波数 ΔνCs = 9 192 631 770 Hz
長さ メートル(m) 真空中の光速 c = 299 792 458 m/s
質量 キログラム(kg) プランク定数 h = 6.626 070 15×10−34 J·s
電流 アンペア(A) 電気素量 e = 1.602 176 634×10−19 C
熱力学温度 ケルビン(K) ボルツマン定数 k = 1.380 649×10−23 J/K
物質量 モル(mol) アボガドロ定数 NA = 6.022 140 76×1023 mol−1
光度 カンデラ(cd) 540×1012 Hz の単色光の視感効果度 Kcd = 683 lm/W

2019年の定義改定で何が変わったか

2018年11月の第26回CGPMで改定が決議され、翌年の世界計量記念日に施行された。日常の測定値が変わったわけではない。変わったのは「基準の拠り所」である。アンペアは従来、平行導体間に働く 2×10−7 N/m の力で定義されていたが、電気素量に基づく定義へ移った。ケルビンも水の三重点 273.16 K を基準とする方式から、ボルツマン定数による定義に置き換わっている。

キログラム原器の引退

国際キログラム原器は130年近く質量の基準であり続けた。ところが各国の複製原器との比較で、約50 µg 程度の経年的なずれが観測されていた。新定義ではプランク定数を固定し、キッブルバランスやシリコン28単結晶球を用いたX線結晶密度法で質量を実現する。日本の産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ)は後者の手法で定数決定に貢献した。

組立単位と固有の名称

基本単位の乗除で表される単位を組立単位と呼ぶ。このうち22個には固有の名称が与えられている。たとえば力のニュートンは 1 N = 1 kg·m/s2、圧力のパスカルは 1 Pa = 1 N/m2、エネルギーのジュールは 1 J = 1 N·m と表される。電気分野ではボルト、オーム、ワット、熱分野ではセルシウス度(℃)も固有名称を持つ組立単位に含まれる。係数1だけで結びつく一貫性こそがSIの強みで、換算係数を覚えずに式を立てられる。

SI接頭語の体系

桁の大きさは接頭語で表す。2022年の第27回CGPMではデータ量の急増を背景に、ロナ(R、1027)、クエタ(Q、1030)、ロント(r、10−27)、クエクト(q、10−30)が追加され、計24種類となった。製造業で頻繁に登場するものを挙げる。

  • ギガ(G、109):周波数・電力量・ヤング率(GPa)
  • メガ(M、106):引張強さ・油圧(MPa)
  • キロ(k、103):荷重(kN)、電力(kW)
  • ミリ(m、10−3):図面寸法の基本単位(mm)
  • マイクロ(µ、10−6):表面粗さ・はめあい公差(µm)
  • ナノ(n、10−9):半導体の線幅・薄膜厚さ(nm)

記号の大文字・小文字には意味がある。「M(メガ)」と「m(ミリ)」を取り違えれば109倍の誤差になるため、仕様書の手書き修正では特に注意したい。

日本の計量法・JISとの関係

日本では1992年に計量法が全面改正され、翌1993年11月に施行された。この新計量法によって取引・証明に用いる単位はSIへの統一が進み、kgf/cm2 などの重力単位系は段階的な猶予期間を経て、1999年9月末までに原則として法定計量単位から外れた。規格面ではJIS Z 8000シリーズ(ISO/IEC 80000の対応規格)が量と単位の表記を定めている。計測器の値をSIにつなぐ仕組みがトレーサビリティであり、JCSS登録事業者による校正証明書がその連鎖を担保する。

製造現場で残る非SI単位と換算の注意点

法令上の切り替えから四半世紀が過ぎても、現場には旧単位が残っている。1980年代以前の図面や設備銘板には kgf/cm2 や kgf·m が記載されている例が珍しくない。換算は 1 kgf = 9.806 65 N が基本で、1 kgf/cm2 ≒ 0.098 MPa となる。概算で「1 kgf/cm2 ≒ 0.1 MPa」と丸めることも多いが、約2 %の差が出る点は押さえておきたい。

トルク管理では、海外製トルクレンチのN·m表示と国内の古い作業標準書のkgf·m表示が混在し、締付け不良の原因になりやすい。設備更新時に圧力計だけをMPa目盛りに交換し、作業手順書は旧単位のまま、という事態も起こりがちである。単位変更は計器・帳票・教育をまとめて切り替える前提で計画すると手戻りが少ない。輸出案件ではヤード・ポンド法との併記を求められる場面もあり、図面の寸法公差をインチ換算する際は丸め方向を顧客と事前に取り決めておくと、受入検査でのトラブルを避けられる。

コメント(β版)