ユーザビリティ|使いやすさを測り高める設計の指標

ユーザビリティ

ユーザビリティとは、製品やシステムを特定の利用者が特定の目的で使うときに、どれだけ有効に、効率よく、満足して使えるかを示す度合いである。国際規格ISO 9241-11ではこの3要素で定義されており、日本ではJIS Z 8521として規格化されている。ソフトウェアの画面設計だけの話ではなく、工作機械の操作盤、家電のスイッチ配置、医療機器の表示部など、人が触れるあらゆる製品設計に関わる概念といえる。

ユーザビリティという言葉が広まった経緯

源流は第二次世界大戦期の航空機コックピット研究にある。計器の読み違いによる事故が相次いだことから、操作者の特性に機械を合わせる人間工学が発展した。1980年代にパーソナルコンピュータが普及すると、専門家でない人でも扱える画面が求められるようになる。1993年、ヤコブ・ニールセンが著書『Usability Engineering』を発表し、学習しやすさ・効率性・記憶しやすさ・エラーの少なさ・主観的満足度という5つの属性を示した。この整理は今も設計現場で使われている。

ISO 9241-11による定義と3つの要素

ISO 9241-11は1998年に初版が発行され、2018年に改訂された。ここでいう「有効さ」は目標を正確かつ完全に達成できるか、「効率」は達成までに費やした時間や労力、「満足度」は利用者が感じる快適さや受容性を指す。重要なのは「利用状況」という前提条件で、同じ操作パネルでも、空調の効いた事務所と粉じんの舞う鋳造工場とでは評価がまったく変わる。誰が、どこで、何のために使うのかを決めずに使いやすさを論じても意味がない、というのが規格の立場である。

UX・アクセシビリティとの違い

混同されやすい用語にユーザーエクスペリエンスとアクセシビリティがある。範囲の違いを整理すると次のようになる。

用語 対象範囲 主な規格 評価の観点
ユーザビリティ 特定の利用者・目的における使用時 ISO 9241-11、JIS Z 8521 有効さ、効率、満足度
UX 使用前の期待から使用後の印象まで ISO 9241-210 感情、ブランド体験を含む総合評価
アクセシビリティ 高齢者・障害者を含む幅広い利用者 JIS X 8341シリーズ 利用できるかどうか

アクセシビリティが「使えるか否か」を問うのに対し、ユーザビリティは「どれだけ使いやすいか」を問う。両者を包み込む設計思想としてユニバーサルデザインがある。

評価手法の種類

評価は、専門家が点検する方法と実際の利用者に操作してもらう方法に大別される。代表的な手法を挙げる。

  • ヒューリスティック評価:ニールセンが1994年にまとめた10原則に照らし、専門家が問題点を洗い出す
  • ユーザビリティテスト:利用者に課題を与え、操作の様子や発話を観察する
  • 認知的ウォークスルー:初めて使う人の思考過程を想定し、手順ごとに迷う箇所を探す
  • アンケート評価:SUS(System Usability Scale)などの質問票で主観的満足度を数値化する

ユーザビリティテストでは、被験者5人で問題点の約85%が見つかるとするニールセンの経験則がよく引用される。少人数のテストを設計変更のたびに繰り返すほうが、一度に大人数で実施するより費用対効果が高い。

SUSスコアの算出方法

SUSは1986年にジョン・ブルックが考案した10項目・5段階の質問票である。奇数番目の項目は肯定文、偶数番目は否定文になっており、スコアは次式で求める。

SUS = { Σ(Q奇数 − 1) + Σ(5 − Q偶数) } × 2.5

結果は0〜100点の範囲となり、平均は68点前後とされる。80点を超えれば良好、50点を下回る場合は早急な改善が必要と判断されることが多い。

製造現場の操作盤で問われる使いやすさ

工場では使いにくさが不良や事故に直結する。プレス機や射出成形機のHMIでボタンの配置が紛らわしければ、段取り替えのたびに設定ミスが起こりかねない。こうしたヒューマンエラーを減らすため、現場ではポカヨケやフールプルーフと組み合わせて設計することが多い。非常停止スイッチは、IEC 60204-1およびISO 13850に従い、黄色の背景に赤いきのこ形ボタンを置くのが原則である。

実務上よく問題になるのがタッチパネルのボタン寸法である。事務用の画面なら一辺10mm程度で足りても、作業用手袋をはめたまま操作する現場では15〜20mm程度ないと押し間違いが頻発する。油や切削液で汚れた指でも反応するか、照明の映り込みで表示が読めなくならないかといった確認も欠かせない。出荷後に画面レイアウトを改修すると、制御ソフトの再検証や客先での再立ち上げが必要になり、開発段階での修正に比べて費用が数倍から10倍以上に膨らむケースもある。設計レビューの段階で現場オペレーターに試作画面を触ってもらうだけでも、手戻りは大きく減る。

人間中心設計のプロセスとの関係

使いやすさを場当たり的に改善するのではなく、開発工程に組み込むための枠組みが人間中心設計である。ISO 13407(1999年)を前身とし、現在はISO 9241-210(2019年改訂)、国内ではJIS Z 8530として規定されている。利用状況の把握、要求事項の明確化、設計案の作成、評価という4つの活動を反復するのが基本形となる。品質管理のPDCAサイクルと考え方が近く、製造業の技術者にもなじみやすい。

医療機器におけるユーザビリティエンジニアリング

医療機器の分野では、IEC 62366-1(2015年発行)により使いやすさの検証が実質的に義務化されている。輸液ポンプの流量設定で桁を誤れば患者の生命に関わるため、想定される誤使用を洗い出し、リスクマネジメントの規格ISO 14971と連動させて対策を記録する。日本の薬機法に基づく審査でも、この規格への適合を示す文書の提出が求められる場面が増えている。

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