製品設計
製品設計とは、顧客価値・安全性・品質・原価・納期を同時に満たすために、要求事項から仕様を定義し、形状・材料・製造方法・検証計画を体系化する工学プロセスである。市場調査からコンセプト立案、試作・評価、量産移行までを一貫してマネジメントし、JISやISOなどの規格適合と法令遵守を前提に、信頼性やサステナビリティも組み込む。近年はCAD/CAEとデータ管理の高度化により、設計と生産の同時並行(コンカレント)やモデルベース化が進み、製品設計のリードタイム短縮と品質のばらつき低減が実現している。
定義と役割
製品設計は、顧客の「要求事項」を満たす「設計解」を作る活動である。機能・性能・環境条件・寿命・コストなどの制約下で、最適なアーキテクチャを決め、部品・モジュール・材料・締結・加工法・検査法を整合させる。企画・生産技術・品質保証・サービスと連携し、全ライフサイクルの価値最大化を担う。
基本プロセス
- 要求の収集とQFD:顧客声を技術特性に展開する。
- 仕様書作成:境界条件・性能指標・評価基準を定義する。
- コンセプト設計:構造案・原理案を創出しトレードオフを評価する。
- 詳細設計:寸法・公差・材料・加工・検査を確定する。
- 試作・検証:性能・信頼性・安全を試験し是正する。
- 量産設計:DFM/DFAで製造性・組立性を最適化する。
要求事項と仕様の整備
市場要求、法規、規格、使用環境、保守条件を網羅した要求一覧を作り、測定可能なKPIで受入れ基準を定める。要求のあいまいさは設計不具合の主要因であり、範囲・優先度・根拠を明確化することが製品設計成功の鍵である。
コンセプト設計の要点
機能分解と形態展開を用い、複数案を並行で探索する。物理原理、機構、材料、制御方式を組み合わせ、価値と実現可能性で選好する。TRIZや形態分析、設計空間の可視化は有効である。
詳細設計と図面
GD&Tによる幾何公差、表面粗さ、熱・応力・クリアランスを解析し、公差配分でばらつきに強い設計とする。CAEで強度・流体・熱・振動を事前評価し、試験計画と整合させる。
材料選定と製造性(DFM/DFA)
機械的・熱的・化学的特性に加え、加工性・入手性・コスト・環境影響を評価する。締結・組立は工程時間と不良率に直結するため、部品点数の削減と共通化を優先する。例えばボルトの標準化やセルフロック構造の採用は有効である。
代表的な設計指針
- 部品の対称化と方向性削減で組立ミスを抑制する。
- 工具・治具の共通化で段取りを短縮する。
- 公差は工程能力に合わせ、過剰精度を避ける。
信頼性・安全性設計
FMEAやFTAで故障モードを予見し、冗長化・安全率・フェールセーフを設計へ反映する。実使用プロファイルに基づく耐久・環境試験を計画し、統計的に寿命を推定する。安全規格適合(絶縁距離、発熱、鋭縁管理など)は初期段階から織り込む。
人間中心設計とUX
人間工学と認知負荷を考慮し、操作・表示・メンテナンス性を設計する。誤操作防止のアフォーダンス、工具レス保守、視認性の高いUI、騒音・振動の低減は価値体験を高め、製品設計の競争力となる。
規格・法規対応
ISOやJISの用語・寸法・試験法に整合させ、RoHS/REACH、電気安全、圧力容器、電波などの法規を満たす。規格番号・条項を仕様書へ明記し、適合証跡を管理することで監査と市場投入を円滑にする。
設計品質とレビュー
ゲートごとの設計審査(DR)で要求充足、リスク、コスト、スケジュールを確認する。チェックリストと設計基準書で再発防止を図り、是正・予防のナレッジを横展開する。メトリクス(不適合件数、手戻り率)でプロセスを継続改善する。
ツールとデータ管理
3D CAD、CAE、PDM/PLMを連携させ、BOM・図面・仕様・試験データを単一ソースで管理する。モデルベース定義(MBD)や構成管理、リビジョン規律により、変更の影響を可視化し、製品設計の整合性を保つ。
原価企画とバリュエンジニアリング
ターゲットコストから逆算し、機能価値を維持しつつコスト要因を除去する。モジュール共通化、材料置換、工程短縮、歩留まり改善を織り込み、ライフサイクルコストで最適化する。
サステナビリティ設計
LCAで資源採取から廃棄・リサイクルまでの環境影響を見積もり、軽量化、再生材、分解容易設計、長寿命化、省エネルギーを反映する。梱包・物流も含めた全体最適が求められる。
設計と生産の連携
生産技術と早期から協働し、工程能力、設備制約、検査性を前提に構造を決める。工程FMEAと実験計画法で頑健性を高め、QCDの同時達成を狙う。
試作・評価・量産移行
試作段階で性能・信頼性・安全を検証し、統計的手法でばらつきを管理する。規格適合試験の準備、量産治具と検査規格の確定、作業標準の整備を経て、量産立上げ時の初期流動を安定化させる。
設計文書とトレーサビリティ
要求仕様、設計計算、図面、BOM、試験記録、変更履歴を体系化し、誰が・いつ・何を決めたかを追跡可能にする。これにより市場品質問題へ迅速に対処でき、製品設計の再現性と説明責任が担保される。