ねじのゆるみとその対策|ねじはなぜ緩むのか

ねじのゆるみと対策

ねじは回すだけで取り付け・取り外しをできる優れた機械要素であるが、一方で強い振動や衝撃の環境下で、ねじのゆるみという大きなデメリットがある。特に人を乗せるような自動車や飛行機では大事故につながるため、ねじ締結の設計、締付作業の管理、締結後のメンテナンスなどの場面でゆるみをいかに防ぐかが重要となる。

ゆるみの原因

ねじのゆるみの原因は振動、衝撃、塑性変形や厳しい環境下での使用などがあげられる。これらはしばしば複合的な原因でねじのゆるみにつながるが、いずれもねじ摩擦力のみだけで締結力を保持していることにある。溶接や接着剤を使えばこうした問題は起こらないが、回すだけで簡単につけはずしができるねじの優位性は非常に高い。

振動

振動が原因でねじがゆるむことがある。飛行機や車など輸送機などは持続的な振動がかかる代表的な機械であり、これらは持続的なメンテナンスが極めて重要となる。またそうした機械でなくとも、輸送中に大きな振動がかかってしまい、機械や装置のねじがゆるみ、事故につながる、ということが稀にある。

衝撃

振動と同様、強い衝撃がかかるところはねじのゆるみが発生しやすい。プレス機や自動機などは注意が必要である。

ねじや母材の破壊

塑性変形や摩耗などで母材あるいはねじそれ自体に問題があるときは、ねじのゆるみが発生する。たとえば、アルミや樹脂に柔らかい素材に直接めねじを作ったとき、ねじの開け閉めでねじ山が潰れたとき、ねじの締結ができないこともありうる。また高温や強酸性などの厳しい環境下で使用する際は素材に異常を起こすため、その他の原因と合わせて、ゆるみが起りやすくなる。

粗さ

粗さが悪いほど、ゆるみの原因になるため、ねじ部分の粗さをよくする必要がある。

ねじのゆるみ止め

ねじのゆるみ止めは、初期の締付けによって引張力を確実に与えておく、予張力の増大、接合面のすべり、座面圧分布の影響、ボルトの弾性変形能力の向上、被締結材の塑性変形の進行防止などがあげられる。

ワッシャー

ワッシャー(座金)を用意ることでねじとの接触面積が多く粗さもいいため、ねじのゆるみ対策となる。その他、ばねになっているスプリングワッシャー(ばね座金)、さらばね座金、歯付き座金、軸受用座金などがある。

ピン、小ねじ、細目ねじ

ピン小ねじを使ってゆるみ止めを行う方法もある。また、入手性が悪いが、ピッチが小さい細目ねじもねじのゆるみ防止として有効である。

ダブルナット

ナットを2つつけることでダブルナットでAを締めたままBを少し緩めてAとBが互いに強く接触するようにすると、AとBにはまりあっているねじ面に大きな面圧が生じて摩擦力が増え、ゆるみにくくなる。ボルトに加わる荷重はナットAで受け持つためナットBは低いナットを使ってもよい。

偏心ナットを利用した緩み止め

偏心ナットを利用した緩み止めである。ボルトの軸線に対して偏心したテーパ部分をもつ下ナットBに、偏心していないテーパ穴をもつ上ナットAを強く締める。テーパ部がくさびとなって半径方向に大きな力が生じ、ねじ面の摩擦力が増えて緩みにくくなる。

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