白鋳鉄
白鋳鉄は、炭素を高濃度に含む鋳鉄の一種で、断面が白っぽく光沢を帯びることが特徴である。組織中に多量のセメンタイト(Fe3C)が生成しているため、非常に硬く脆い性質を持つ。一般的に黒心を示す灰鋳鉄と異なり、破面を観察すると光沢を持つ白色調の結晶面が現れるため、この名が付いている。白鋳鉄は強度よりも耐摩耗性や硬さを重視する部品に用いられることが多く、例えば粉砕機や破砕機など、硬い物質を扱う装置のライナーやハンマー部分にしばしば採用される。急冷によって炭素のグラファイト化を抑えることでセメンタイトを多く形成し、その高硬度を確保する。鋳造後の加工は困難を伴い、通常は研削や研磨などで仕上げる場合が多い。また熱処理を施すことでマルテンサイト組織を得る方法も存在し、母材の微調整によって用途に応じた特性を狙うことも可能である。
組織
白鋳鉄の組織は、硬質相であるセメンタイトを主体とし、母相としてはパーライトやマルテンサイトなどが混在することがある。急冷によってグラファイトの析出が制限され、セメンタイトが連続的に形成されるため、破面が白色の金属光沢を示す。組織上、グラファイト片が少ないため、機械的衝撃に対する靭性は低下するが、一方で対摩耗性は非常に高くなる。この点が白鋳鉄を特定の産業用途に適した材料としている。
特徴と機械的性質
白鋳鉄は高硬度かつ耐摩耗性に優れる反面、脆性が大きく衝撃に弱いという特徴を持つ。通常の鋳鉄よりも切削加工が難しく、加工コストが上昇しやすい。一般的な引張強度は灰鋳鉄に比べてやや高い場合もあるが、伸びが極めて小さいため引張りに対してはほとんど塑性変形を示さない。そのため、曲げや衝撃荷重を伴う用途よりも、擦れや衝突が反復する環境での利用が主となる。また熱処理を加えてマルテンサイト組織を得れば、さらなる硬度向上が可能になるが、同時に脆さも増すため、慎重な設計が必要である。
右上がネズミ鋳鉄
左上が白鋳鉄
左下がチタン
右下がタングステン pic.twitter.com/bmIQbE9hho— レテンカ (@retenka) December 3, 2021
用途
主な用途は、鉱山用や土木建機用の部品、粉砕機や破砕機のハンマー、衝撃を受けながらも表面が摩耗しやすい部分などが挙げられる。とりわけ鉱石や岩石を破砕する装置では、高い硬度が要求されるため白鋳鉄が選択されることが多い。油圧機器やポンプの摩耗部品にも用いられ、内部の流体による摩擦・浸食に対抗する材料として利用されるケースもある。これらの用途はいずれも、硬い素材を頻繁に削り込む状況を想定しており、部品交換の頻度を抑えるためにも白鋳鉄の耐久性が有用となる。
新着記事|報文
「一世紀に作られた青銅-白鋳鉄系合金古銭の微細組織」
>https://t.co/7VPLtiWgoz東京藝術大学
名誉教授
北田 正弘 工学博士1世紀初期に作られた多成分を含むCu-Fe系古代硬貨の微細構造の観察結果について報告いただきました。#SEM #STEM #TEM,#白鋳鉄系合金,#古銭 pic.twitter.com/pPfzrebLh1
— 日立ハイテク【公式】技術機関誌 SI NEWS (@SINEWS_Hitachi) January 13, 2022
製造と熱処理
白鋳鉄は炭素のグラファイト化を抑制するため、高い冷却速度を用いて凝固過程でセメンタイトを生成させる。具体的には、低硅素含有の溶湯を金属型や水冷金型などで急冷する方法が一般的である。さらに鋳造後に焼入れや焼戻しなどの熱処理を行うことで、必要に応じて硬さや靱性の最適なバランスを得る。マルテンサイト化を狙った焼入れを施すと、一層硬度が上がる反面、割れのリスクも上昇するため、材料の組成や形状に応じて熱処理条件を慎重に設定しなければならない。
反射炉で溶かせるのって融点の低いねずみ鋳鉄
(リーダーのダジャレみたいな名前ですが一般的な素材です)くらいで
鋼や白鋳鉄は溶かせないはず— モミルン (@oppai_momirun) October 29, 2016