熱力学
熱力学とは現象を温度や熱という観点から取り扱い体系化した学問である。熱力学第ゼロ法則から熱力学第三法則までの四つの基本原理の上に学問体系が築かれている。熱力学は、蒸気の有効利用、熱機関のサイクル論に基づく熱効率向上、伝熱、燃焼などの用途で生かされ、ガスタービンやディーゼルエンジン、ガスタービン、蒸気タービンが作られている。
熱力学の歴史
熱力学は社会の工業化の歴史とともに発展してきた。特に蒸気機関が産業革命初期に生まれてからは決定的となり、大きな変換期となる。また、ここから熱力学の中でも熱機関の研究が中心となる。
熱
熱とは、分子の振動や移動などによって得られるエネルギーの1つの形態である。そのため、熱力学では、原子や分子を一つのまとまりとして熱を考察するため、熱エネルギーは原子・分子の微視的的な運動エネルギーといえる。また、熱は仕事に変換することができるため、熱力学ではどのように効率よく熱を取り扱えるかが重要である。
温度
温度とはモノの暖かさや冷たさを定量的に表す尺度のひとつで、熱の状態を数値化した指標である。熱力学では、絶対温度、T[K](ケルビン)が用いられている。
熱量
標準大気圧(760mmHg)のもとで質量1kgの純粋の温度を1℃上昇させるのに要する熱量を1kcal(キロカロリー)という。SI単位系ではJ(ジュール)、kJ(キロジュール)の単位で表され、1kcal=4.187kJと定義される。またフィート・ポンド単位系では、Btu(British thermal unit)と定義され、1Btu=0.252kcalである。系と外界との間に出入りする熱エネルギーとして使われることが多い。
内部エネルギー
系と外界との間に出入りする熱エネルギーとして使われる熱量に対し、熱力学的な系がその中に持っている熱エネルギーのことを内部エネルギーという。
比熱
比熱(specific heat)とは、質量1kgの物体の温度を1℃(あるいは1K)上昇させるのに、物体の種類により、必要な比熱が異なることである。記号は小文字のc(kJ/kg・K)で表される。比熱を実際の経験にに要するとき、対称とする温度範囲での平均比熱(mean specific heat)を用いる。
圧力
圧力とは、面積A[m2]に力F[ニュートン]が働けば、圧力p=F/A[N/m2](パスカル)である。
仕事
熱には自動車エンジンや飛行機のジェットエンジンのように熱をエネルギーとして利用して仕事をする能力がある。仕事は、力F[N]あるいは[kgf]にたいしてx[M]だけ物体を動かしたとき、L(仕事)=Fx[N・m]の関係にあるといえる。単位時間当たりの仕事を動力(power)といい、単位は[W](ワット)、[PS](馬力)などを用いる。
熱機関
熱を動力としている機械を熱機関という。産業革命当初は、蒸気機関から始まり、次第にガソリン・エンジンが生まれたが、シリンダー容器とピストンを動かすという基本原理は同じである。
熱力学第ゼロ法則
第ゼロ法則『二つの物体AとBの温度を同じ温度計で測定した時に、温度計の値が同じならば物体AとBの温度は等しい』
熱力学第一法則
熱力学第一法則『熱と仕事はともにエネルギーの一つであり、互いに変換が可能である』。エネルギー保存則が成立するため、エネルギーを補給しないで永久に働き続ける機関(第1種の永久機関)の実現は不可能であることを示している。
熱力学第二法則
熱力学第二法則『熱と仕事の相互の変化には、一定の方向性がある。』熱は温度の高いところから低いところへ流れるが、逆方向には流れない。もらった熱をすべて仕事に換えつつも元の状態に戻り繰り返し運転でき、低温源を必要としない機関(これを第2種の永久機関)の実現は不可能である。また、この熱力学第二法則からエントロピーという概念が生まれてくる。
熱力学第三法則
熱力学第三法則『物体の温度は絶対零度以下には下がらない。』
熱機関
熱を動力としている機械を熱機関という。産業革命当初は、蒸気機関から始まり、次第にガソリン・エンジンが生まれたが、シリンダー容器とピストンを動かすという基本原理は同じである。
偏微分
熱力学ではエネルギーやエントロピーの理解が圧力や体積、温度という複数の変数が互いに関係しあっているため、偏微分で表現される。