揚重|重量物を吊り上げ移動させる作業

揚重

揚重とは、建設現場や工場で、資材や機材、設備機器をクレーンなどで吊り上げ、所定の位置まで運ぶ作業のことである。読みは「ようじゅう」。鉄骨やプレキャストコンクリート部材、空調機器、型枠などを地上から高いところへ運ぶ作業がこれにあたる。国内では1972年に制定されたクレーン等安全規則が機械の検査や運転資格を定めており、揚重は法令にもとづいて管理される作業の一つになっている。

揚重が工程を左右する理由

高層建築の工事では、工程全体の速さを揚重の回数で見積もることが多い。地上20階程度のS造オフィスビルを例にとると、鉄骨の柱・梁、デッキプレート、外装カーテンウォール、設備ユニットのほとんどがタワークレーン1〜2基に集中する。1基あたりの揚重回数は1日40〜60回ほどが目安とされ、この上限が1フロアを何日で建てられるかを決める。そのため、ゼネコンの工事計画では揚重を「クリティカルパスそのもの」とみなし、着工前に揚重機の台数と配置を何度も検討する。

揚重機の種類と使い分け

現場で使う揚重機は、運ぶ物の重さと揚程、それに設置期間で選ぶ。代表的な機種を次の表にまとめる。

機種 主な用途 吊り上げ能力の目安 特徴
タワークレーン 超高層の鉄骨建方 10〜60t程度 揚程が大きく長期設置向き
ラフテレーンクレーン 中低層建築、設備搬入 13〜120t程度 自走でき、狭い現場でも据えやすい
クローラクレーン 橋梁、大型基礎 50〜1,000t超 接地圧が低く、軟弱地盤に強い
工事用エレベーター 内装材、作業員の昇降 1〜3t程度 人と荷物を同時に運べる機種がある

タワークレーンのクライミング

タワークレーンは建物の高さに合わせて自分で背を伸ばす。マストを継ぎ足すマストクライミングと、躯体の床を支えにして本体を上へ移していくフロアクライミングがあり、超高層ではフロアクライミングを採用することが多い。解体のときは屋上で小さなクレーンを組み、段階的に小型の機械へ移しながら下ろしていく。

法規制と必要な資格

労働安全衛生法とクレーン等安全規則では、吊り上げ荷重によって必要な資格が分かれる。移動式クレーンと玉掛けの区分はおおむね次のとおりである。

  • 吊り上げ荷重5t以上の移動式クレーン:移動式クレーン運転士免許
  • 1t以上5t未満の移動式クレーン:小型移動式クレーン運転技能講習
  • 1t未満の移動式クレーン:特別教育
  • 吊り上げ荷重1t以上のクレーンでの玉掛け:玉掛け技能講習(1t未満は特別教育)

固定式のクレーンでは、吊り上げ荷重3t以上になると労働基準監督署への設置届と落成検査が必要になる。検査証の有効期間は原則2年で、性能検査を受けて更新する。

揚重計画の立て方

揚重計画書には、吊り荷の重量と寸法、機種の選定理由、据付け位置、作業半径、アウトリガーの張出し幅、地盤の支持力、合図の方法を書き込む。工場の設備更新では、搬入口の開口寸法と通路の床耐荷重が見落とされやすい。工作機械1台が15tを超える例も珍しくなく、床のスラブを鉄板で養生して荷重を分散させる、建屋外からラフテレーンクレーンで屋根越しに入れる、といった方法を事前に比べておく。

吊り荷重と作業半径の確認

クレーンの能力は作業半径が広がるほど急に下がる。たとえば最大吊り上げ荷重25tのラフテレーンクレーンでも、半径20mで吊れる量は2t前後にとどまることがある。そのため性能表(定格総荷重表)で確認するときは、吊り荷の重さにフックやスリングなどの吊り具の重さを足して判断する。この足し忘れは、実務で最も多いミスの一つである。

玉掛けと合図

玉掛けでは、ワイヤロープ、繊維スリング、シャックル、チェーンなどの吊り具を使い分ける。クレーン等安全規則第213条は、玉掛け用ワイヤロープの安全係数を6以上と定めている。安全係数は次の式で求める。

安全係数 = 切断荷重 ÷ ロープにかかる最大荷重

2本吊りでは、吊り角度が60°を超えると1本あたりの張力が急に大きくなる。現場では吊り角度を60°以内に収めるのが基本である。合図者は1名に決め、笛と手信号を統一する。とくに夜間の揚重では、無線と照明を用意するのが一般的になっている。

気象条件と作業中止の基準

強風は揚重作業の大きな敵である。クレーン等安全規則では、10分間の平均風速が毎秒10m以上の状態を「強風」とし、このときは作業を中止しなければならない。また、瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹いた後は、作業を再開する前にクレーン各部を点検する決まりがある。面積の大きいパネルや型枠は、風速5〜7m/s程度でも吊り荷が回りやすく、介錯ロープの長さや本数を現場ごとに決めておく。雷が近づいたときや、大雨で視界がおよそ50m以下になったときも、作業主任者の判断で中断することが多い。建設機械のなかでも、クレーンは気象の影響を最も受けやすい部類に入る。そのため、風速計をジブの先端に付け、運転室で数値を確認できるようにした機種が増えている。

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