ワイヤロープ|鋼線を撚り合わせた高強度の索

ワイヤロープ

ワイヤロープは、細い鋼線(素線)を何本もより合わせてストランドを作り、そのストランドを心綱のまわりにさらにより合わせた索条である。日本ではJIS G 3525でワイヤロープの種類・構成・切断荷重が定められており、国際規格ではISO 2408が対応する。高い引張荷重を受け持ちながら曲げにも追従できるため、クレーン、エレベーター、索道、吊り橋、船舶の係留など、荷重を「吊る・引く・支える」場面で欠かせない部材になっている。

鉱山の巻上げ索から始まった歴史

起源は1834年ごろのドイツにさかのぼる。ハルツ地方クラウスタールの鉱山監督官ヴィルヘルム・アルベルトが、切れやすい麻ロープや鎖に代わる立坑の巻上げ索として、鉄線をより合わせた索を考案した。これが近代的なワイヤロープの原型とされる。19世紀後半には製鋼技術の進歩とともに硬鋼線が使われるようになり、強度は飛躍的に向上した。日本では1887年に東京製綱が創業し、国産化が本格化している。明治期の鉱山開発や鉄道・港湾の整備を支えたのも、この国産ロープであった。

素線・ストランド・心綱の関係

素線には炭素量0.6~0.85%程度の高炭素の炭素鋼線材を用い、パテンティング(恒温変態処理)と冷間伸線を繰り返して強度を高める。素線の引張強さはJIS上の区分でA種が1620 N/mm²級、B種が1770 N/mm²級となる。屋外や海洋環境向けには亜鉛めっきを施した素線が選ばれる。表記の「6×19」は、19本の素線でできたストランドを6本より合わせたことを示す。数字が大きいほど素線は細くなり、ロープは柔らかくなる。

心綱の種類

中心に入る心綱には、繊維心(FC)と鋼心(IWRC)がある。繊維心は保油性と柔軟性に優れ、価格も比較的安い。鋼心は側圧に強く、多層巻きのドラムで押しつぶされにくいため、移動式クレーンやウインチの巻上げ索ではこちらが主流となる。同じ径なら鋼心のほうが切断荷重はおおむね7~8%高い。

より方の違い:普通よりとラングより

ストランド内の素線のより方向と、ロープ全体のより方向が逆のものを「普通より」、同じものを「ラングより」と呼ぶ。普通よりは形崩れやキンクが起きにくく、扱いやすい。ラングよりは素線が長い区間で外面に現れるため耐摩耗性と疲労強度に優れる。ただし自転しやすく、両端を固定しない用途には向かない。より方向はZよりとSよりの2種類があり、国内の一般品はZよりが多い。単索で荷を吊るタワークレーンなどには、ロープの回転を抑えた難自転性ロープが使われる。

代表的な構成と使い分け

外層素線を太くすると摩耗に強くなり、細い素線を増やすと曲げに強くなる。両立は難しく、用途に応じてどちらを優先するかで構成を決める。主な構成の特徴を以下に示す。

構成 柔軟性 耐摩耗性 主な用途
6×7 低い 非常に高い 控え索、ガイロープ
6×S(19)(シール形) 中程度 高い エレベーター、索道
6×Fi(25)(フィラー形) やや高い 中程度 天井クレーン、ホイスト
IWRC 6×WS(36) 高い 中程度 移動式クレーン、ウインチ
6×37 非常に高い 低い 玉掛け用スリング

調達の現場では、構成よりも先にシーブ径との組み合わせを確認するのが鉄則である。ロープ径dに対するシーブ径Dの比(D/d)は一般に20以上、稼働率の高い設備では25~30以上が目安とされる。比が小さいと、素線は同じ構成でも数倍早く断線に至る。また、新品は使い始めに0.25~0.5%ほどの構造伸びが出るので、据付直後の長さ調整を工程に入れておくと手戻りが少ない。

端末加工と効率

端末の処理方法によって、ロープ本体の切断荷重をどこまで生かせるかが変わる。合金スリーブを圧縮するロック加工やソケット止めは効率がほぼ90~100%に達する。手作業のアイスプライスはおよそ75~90%で、径が大きいほど低下する傾向がある。ワイヤクリップ止めは80%前後にとどまり、クリップの向きを逆にするとさらに大きく落ちる。クリップはU字ボルト側を荷重のかからない短い側(テール側)に付け、初回の負荷後に必ず増し締めする。現場で見落とされがちな注意点である。

安全係数と廃棄基準

安全係数は次の式で表される。

安全係数 = ロープの切断荷重 ÷ ロープにかかる最大荷重

クレーン等安全規則第213条は、玉掛け用ワイヤロープの安全係数を6以上と定めている。たとえば切断荷重60 kNのロープなら、最大使用荷重は10 kNまでとなる。同規則第215条では、次のいずれかに当てはまるロープを玉掛けに使ってはならないとしている。

  • 1よりの間で素線(フィラ線を除く)の10%以上が断線しているもの
  • 直径の減少が公称径の7%を超えるもの
  • キンクしたもの
  • 著しい形崩れまたは腐食があるもの

日常点検と保守

断線は外から見えないロープ内部や、シーブを通過する区間に集中しやすい。点検では、ドラムへの巻き始め部、イコライザシーブ周辺、端末金具の根元を重点的に見る。出荷時に含浸されたグリースは使ううちに失われるため、屋外設備では1~3か月ごとを目安に浸透性のロープ油を補給する。製鉄所や港湾など大型設備を持つ事業所では、磁気探傷式のロープテスタで内部断線を定量的に管理する例も増えている。

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