ドリル
ドリルは、穴を開けるために使用される工具である。らせん状の溝と切れ刃があり、回転することで部材に穴を空けることができる。金属、木材、プラスチックなどの様々な材料に対して使用されることが多い。ドリルには手動式と電動式があり、作業内容や使用者のニーズに応じて選ばれる。一般的には電動ドリルが普及しており、作業効率や正確性が高いことから、家庭用から工業用まで幅広く利用されている。ドリルは工業、建設、家庭など多くの分野で利用され、ホームセンターなど容易に入手できる。
歴史と種類
ドリルの歴史は古く、古代エジプトやメソポタミアでは、手動ドリルが使われていた証拠が示されている。中世には、金属製のドリルが登場した。回転力を得るために歯車やクランク機構が導入されるようになり、現代に近づくにつれ、電動ドリルや圧縮空気を使ったエアドリルなどがある。NCやマシニングなどの装置も出てきた。
ドリルの構造
ドリルの基本的な構造は、チャック、ビット、モーター(またはハンドル)の3つから成り立つ。チャックはビットを固定する部分で、ビットは実際に穴を開けるための先端工具である。電動ドリルの場合、モーターがビットを回転させて材料に穴を開ける。ビットは材料に応じて様々な種類があり、ドリルの用途に応じて適切なビットを選ぶことが重要である。刃物は、主軸部に固定するためのシャンクとねじれ溝、切れ刃で構成されている。工作物をよく切れるとともに、切りくずを効率よく排出する仕組みとなっている。切りくずが溜まると加工効率が悪くなるだけでなく、工作機械の破損や事故につながる。また、切りくずには熱を逃がす役割もあり、熱が籠るのを防いでいる。
電動ドリルの内部構造? pic.twitter.com/2lbEuXfw5M
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ドリルの切れ刃
ドリルの切れ刃は切削を行う切れ刃は先端部で行っている。底面の切れ刃でない部分は、穴との接触抵抗を減らすように逃げ部の役割を持つ。ねじれ溝の側面にある部分は、ガイドの役目をしている。バックテーパーがついており、刃先先端からシャンクに向かって小さくなるような構造となっている。切削中の抵抗を減らす役割を担う。また、ドリルの先端には、切削を行わないチゼルエッジと呼ばれる部分がある。
ドリルの材料
ドリルの材質は高速度工具鋼(ハイス)が一般的であるが、ハイスでも加工できない硬い素材に対しては超硬合金を使う。超硬合金は、ハイスに比べて3倍の剛性があり、加工中のたわみが少なく高精度・高能率の穴あけができる。ただし、靱性が乏しく、チゼル部やコーナー部が欠損しやすく扱いが難しい。また価格は5~10倍と非常に高い。そのため、チタン合金などでコーティングすることで靱性や耐摩耗性を付与したドリルも流通している。
ドリルの種類
ドリルには様々な種類が存在する。一般的なドリルとしては、回転ドリル、インパクトドリル、ハンマードリルなどが挙げられる。回転ドリルは単純な回転運動で穴を開けるもので、主に木材やプラスチックに使用される。インパクトドリルは回転運動に加えて衝撃を与えるため、硬い素材やコンクリートに対して効果的である。ハンマードリルはさらに強力な衝撃を与え、重作業に適している。
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シャンク
シャンクとは、ドリルをつかむところで、ドリルには大きくストレートシャンクとテーパシャンクがある。ストレートシャンクドリルとは、ドリルをチャックするシャンクの形状で、φ13mmまでのドリルはシャンクが平行なストレートシャンクドリルとなっている。チャックでくわえて主軸に固定される。φ13㎜以上大きくなるとテーパシャンクドリルを使う。テーパソケットに挿入して主軸に固定され、ドリルの直径が大きくなるほど回転力も大きくなるため、テーパ部分をすべり止めとして使う。
ドリル(切れ刃)の種類
ドリルにはその用途で、いくつかの種類がある。幅広く利用されている工具のため様々な工夫で穴を空けることができる。
ロングドリル
ロングドリルとは、深穴専用のドリルで、長い穴にも加工できるよう、剛性の強化や切りくずの排出しやすい構造となっている。
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ガンドリル
ガンドリルとは、径の20倍以上の深さの穴をあけるドリルで、特殊なドリルを専用機と組み合わせて使用する。ガンドリルは、直刃のドリルで、切りくずが排出しやすいように溝が大きく取られている。中心部には、切れ刃の冷却や切りくずの排出を助けるように、切削油剤を供給する穴が貫通している。径は2~30mmぐらいまでが揃っている。銃の銃身の穴をあけるために開発されたため、ガンドリルと呼ばれるようになった。
油穴付きドリル
油穴付きドリルは、普通のドリルにシャンク部からドリル先端に向かう切削油剤の供給穴を加工したもので、シャンク部から圧入される切削油が刃先を直接冷却する。切りくずの排出性が良く、加工効率が向上し寿命も長くなる。
真みぞドリル
真みぞドリルとは、アルミニウムや銅合金などのやわらかい材料に穴あけするドリルである。
リーマ
リーマとは、穴の精度出しに使うドリルではめあいに使われる。平行とテーパ二種類がある。
スタブドリル
スタブドリルとは、マシニングに使われるドリルで、JIS標準ドリルの1/2ほどの長さである。JIS標準ドリルより剛性が高く、精度も良好である。穴深さは外径の3~5倍が目安である。
マルチスタブは鉄・SUSの穿孔に適したハイブリッドドリル。
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センタドリルとポンチ
ドリルで穴あけ加工する場合、穴をあける前に、センタドリルやポンチでドリルの位置を決める小さな小穴を空ける加工を行う。センタドリルはセンタ穴をあけるドリルで、ポンチは先端がとがったペン形状の工具で、ハンマーで軽く打つことにより工作物にくぼみをつける。
ドリルの穴加工の深さ
通常はドリルの長さより深い穴を空けることはできない。それぞれ、ドリルで空けることができる穴の深さはJISやISOの規格で決まっており、長い穴を空ける場合は注意が必要である。JIS標準では、最大外径の約10倍まであけられるとされるが、精度が劣化するため、外径の3~5倍が目安である。ISO標準ドリルでは、JIS標準ドリルより1~3割全長が短いが、剛性が高く、振れの少ない精度の高い穴あけができる。
ドリル使用時の安全性
ドリルの使用には一定の危険が伴うため、適切な安全対策が必要である。特に電動ドリルの場合、回転部分に衣服や髪の毛が巻き込まれる事故が発生することがあるため、作業中は身体にフィットした服装や保護具の着用が推奨される。また、ドリルビットの交換やメンテナンス時には、必ず電源を切ることが重要である。さらに、適切な照明と安定した作業環境を確保することで、事故のリスクを低減できる。
ドリルのメンテナンス
ドリルの長寿命化と性能維持のためには、定期的なメンテナンスが必要である。特に電動ドリルの場合、モーター部分やバッテリーのメンテナンスが重要である。使用後はビットを清掃し、錆びや汚れを防ぐために乾燥した場所に保管することが推奨される。ビット自体も摩耗するため、定期的に状態を確認し、必要に応じて交換することが必要である。また、電池式ドリルの場合はバッテリーの劣化を防ぐため、適切な充電方法や保管方法を守ることが重要である。
再研磨
ドリルが摩耗した場合は、研磨を繰り返して利用する。グラインダーで行うこともあるが、専用の工具研削盤を用いることが多い。特殊なドリルは研磨ではなく専用業者に依頼する。研磨の工数を避けるため、超硬チップなどを取り付けて使うスローアウェイ型ドリルも流通している。ドリルに比べて、剛性も高く大きな穴も容易に空けることができる。