ストッパボルト
ストッパボルトとは、機械装置や治具において可動部の移動端を規制し、ワークの位置決めや衝突の受け止めに用いるボルト状の機械要素である。外観は六角ボルトに似ているが、締結を目的とせず、先端部または頭部端面を「当たり面」として使用する点が本質的に異なる。ねじ込み量を変えることで当て止め位置をミリ単位以下で調整でき、付属のロックナットで任意の位置に固定する。当たり面には焼入れが施され、繰り返しの衝突に耐える耐摩耗性が確保されている。搬送装置、専用機、組立治具など、FA分野のあらゆる場面で使われる汎用部品である。
構造と使い方
ストッパボルトの基本構造は、全ねじの軸部と六角頭部、そして付属の六角ナット(ロックナット)からなる。装置のフレームやブラケットに設けためねじ、あるいはナットで挟み込んだ板金に軸部をねじ込み、当て止め位置が決まったらロックナットを座面に締め付けてダブルナットの原理で緩みを防ぐ。ねじ込み式であるため、ねじピッチ分の回転で位置を微調整できる。例えばM8(ピッチ1.25mm)であれば、1回転で1.25mm、60度の回転で約0.2mmの調整が可能である。組立後の現合調整が前提となる装置では、この調整のしやすさが溶接式や一体加工式のストッパにはない利点となる。
当たり面による種類
受け方の違いにより、ねじ先端で当てるタイプと六角頭部側で当てるタイプに大別される。市販品ではNBK(鍋屋バイテック)のSSBシリーズやミスミの規格品が代表的で、呼び径はM4からM16程度、首下長さは20〜100mm前後が標準的にそろう。先端形状には平面、球面、ウレタンパッド付きなどのバリエーションがあり、相手側との当たり方や衝撃の大きさで使い分ける。
| タイプ | 当たり面 | 特徴・用途 |
|---|---|---|
| 先端平面タイプ | ねじ先端の平坦面 | 面当たりで安定。静的な位置決め向き |
| 先端球面タイプ | 焼入れした球面 | 点当たりで相手の傾きを許容。位置決め精度重視 |
| 頭部受けタイプ | 六角頭部の端面 | 受け面積が大きく、衝突荷重の受け止め向き |
| ウレタンパッド付き | ウレタン樹脂 | 衝撃・打音を吸収。ワークの打痕防止 |
材質と熱処理
本体材質には炭素鋼のS45Cが最も広く使われる。炭素量約0.45%の機械構造用炭素鋼であり、当たり面に高周波焼入れを施すことでおよそHRC50前後の硬さが得られ、繰り返し衝突による摩耗やへたりを抑えられる。防錆のため無電解ニッケルめっきや黒染めが標準処理となることが多い。食品機械や洗浄工程など耐食性を要する環境ではステンレス鋼製が選ばれるが、SUS304は焼入れ硬化しないため、硬さが必要な当たり面にはマルテンサイト系のSUS410や析出硬化系材が採用される。緩衝用ウレタンは硬度ショアA90前後のものが多く、油や切削液がかかる環境では膨潤による寿命低下に注意を要する。
実務での使い分けとコスト感
現場では「精度を出す位置決め」と「衝撃を受けるストッパ」を同じボルトで兼用しないのが定石である。エアシリンダ駆動のスライドを受ける場合、金属同士の直当てでは打音と当たり面の圧痕が問題になりやすく、ウレタンパッド付きやショックアブソーバとの併用が選ばれる。逆に繰り返し位置決め精度を求める箇所では、変形しない焼入れ球面タイプを受け側の焼入れプレートに当てる構成が確実である。相手側を軟らかい母材のままにすると母材側が摩耗して位置が経時変化するため、受け側にも焼入れ済みのストップピンを埋め込むのが常套手段となる。価格は標準品でM6〜M10クラスが1本数百円から千円台と安価であり、専用ストッパを製作するより大幅にコストを抑えられる。締め付け調整にはスパナを2本使い、本体を保持しながらロックナットを締めるのが基本で、頭部に六角穴を持つタイプでは六角レンチで保持できる。
取り付け・保守上の注意点
緩み止めはロックナットの締結力に依存するため、振動の大きい装置では定期的な増し締め確認が欠かせない。管理を確実にするならトルクレンチで締め付けトルクを規定し、合いマークを付けておくとよい。ねじ込み長さが短いと、めねじ側に衝突荷重が集中してねじ山が損傷するため、呼び径の1.5倍以上のかかり代を確保するのが目安である。なお、頭部を溶接して固定する使い方は焼入れ層を軟化させるので避けるべきである。両端にねじを持つスタッド(ボルト)や通常の六角ナットを流用した簡易ストッパも見られるが、当たり面が生材のままでは摩耗が早く、量産設備では焼入れ済みの専用品を用いるのが結果的に安上がりである。
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