アリストテレスの芸術論

アリストテレスの芸術論

アリストテレスは、芸術は模倣(ミメーシス)、すなわち、喜劇は貧しい人間の、悲劇は高貴な人の模倣であると考えた。カルタシス(浄化)はもともと便通をつけること、洗浄することという医学用語であるが、これが転じて霊魂が汚れから浄められることを意味するようになった。芸術作品に対して「時に事実を上回る価値を持つことがある」とし、芸術はときのそのもとになった事実を超えた感動を生み出すことがあるとした。アリストテレスの芸術論は、プラトンのイデア論を引き継いだものだが、プラトンがイデア論の単なる模倣であるとしたのに対し、イデアを越えることがあるとした点で現実的なものとして吟味された。

模倣(ミメーシス)

ミメーシスというギリシア語の本来の意味は、「真似」や「模倣」であるが、アリストテレスやプラトンが語る場合、「描写」、「再現」といった意味合いを含む。そのかぎりでミメーシスは、文芸や音楽のみならず、造形芸術を含む芸術全般に適用することができる。

プラトンとアリストテレス

プラトンとアリストテレス

『詩学』アリストテレス1

「ホメロスは他の多くの点でも称賛に値するが、とくにほめられてよいのは、詩人たちのなかで彼だけが作品中で作者自身がはたすべき役害」を見落としていない点である。すなわち、詩人は [作 品中に顔 を出 して]自 ら41が語ることをできるだけひかえねばならない。というのも、自らが語っているかぎり、その詩人は模倣家ではないからである。しかるに、他の叙事詩人たちは、徹頭徹尾、自分を表面に出しつづけて、ほんの少数のことについて、ほんの少数の機会にしか模倣をおこわない。これに対 してホメロスは、前置きを短くすませておいて、ただちに男や女、あるいは他の役柄の人物 を[作 品中に]登 場 させ る」(『 詩学』第24章 14605-11)

『詩学』アリストテレス2

人間が詩(芸術)をはじめた起源として、生まれながらに模倣を喜ぶ性質をもつところとした。

「一般に詩作 というものがなされるようになったのには、二つの原因、ともに自然の本能に根ざした二つの原因があるように思われる。すなわち、その一つは、模倣することであり、これは子供のころから人間にそなわる自然な傾向であつて、人間が他の動物より優れているのもこの点にある。つまり、人間はあらゆる動物のなかで、最も模倣に長けたものであり、最初にものを学ぶのもこの模倣によつておこなうのである。もう一つの原因は、誰でも模倣されたものをよろこぶということであり、これもまた人間にそなわる自然な傾向である。経験的事実がそのことを証明する。なぜならわれわれは、実物を目にするのがいとわしいものであつても、それをこの上なく正確にうつした似像を見ることをよろこぶからである。例えば最下等動物や死体などの形態について、そのようなことがいえる」(『詩学』第4章 1448b4-12)。