送気マスク|清浄空気をホースで送る呼吸用保護具

送気マスク

送気マスクとは、ホースを通じて作業者の口元へ清浄な空気を送り込む呼吸用保護具の一種である。周囲の空気をフィルタでろ過して吸う防じんマスクや防毒マスクと異なり、作業場の外にある空気源から空気を引き込むため、酸素濃度が低い場所や有害物質の濃度が高い場所でも使える。国内ではJIS T 8153で構造と性能が定められており、空気の供給方式によってホースマスクとエアラインマスクの2系統に大別される。

ろ過式マスクでは対応できない現場

ろ過式マスクは周囲の空気そのものを吸うので、空気中の酸素が足りなければ機能しない。酸素欠乏症等防止規則では酸素濃度18%未満を酸素欠乏状態と定義しており、タンク内部、マンホール、地下ピットなどでは作業者が数呼吸で意識を失うおそれがある。こうした場所で酸素欠乏症を防ぐには、空気呼吸器か送気マスクのような給気式の保護具が欠かせない。吸収缶の破過時間が読みにくい高濃度の有機溶剤蒸気や、吸収缶で除去しにくい一酸化炭素が発生する環境でも、給気式が選ばれる。

ホースマスクとエアラインマスクの違い

2系統の違いは空気を何で送るかにある。ホースマスクは大気を取り入れる方式で、着用者の呼吸力だけで吸い込む肺力吸引形と、電動送風機で送る送風機形がある。送風機形のホースには内径15mm程度の太いスパイラルホースが使われることが多い。エアラインマスクはコンプレッサーや圧縮空気配管、高圧空気容器を空気源とし、内径8mm程度の耐圧ホースで空気を送る。

分類 形式 空気源 主な特徴
ホースマスク 肺力吸引形 大気(自力で吸引) 電源不要で構造が単純。吸気抵抗が大きく、長時間作業には向かない
ホースマスク 送風機形 大気(電動・手動送風機) 呼吸が楽になる。送風機の吸気口位置の管理が必須
エアラインマスク 一定流量形 圧縮空気 常に一定量を送る。フード形はブラスト作業でも使われる
エアラインマスク デマンド形 圧縮空気 吸気に応じて弁が開き、空気消費量を抑えられる
エアラインマスク プレッシャデマンド形 圧縮空気 面体内を常に陽圧に保ち、すき間からの漏れ込みを防ぐ

防護性能が最も高いのはプレッシャデマンド形である。面体と顔の間にすき間ができても、内側から外へ空気が吹き出すため、外気が入り込みにくい。

厚生労働省の通達とJIS改訂

送気マスクを使っていたのに中毒が起きる事故が続いたことを受け、厚生労働省は平成25年(2013年)10月29日付で「送気マスクの適正な使用等について」(基安化発1029第1号)を出した。事故の多くは、送風機やコンプレッサーの吸気口の近くに有害ガスが流れ込み、汚染された空気をそのまま作業者に送っていたというものである。その後、JIS T 8153が改訂されたことを踏まえ、令和6年(2024年)11月7日付で同通達が一部改正された。橋梁塗装の剥離剤作業のように、移動しやすい送風機が有害ガスを吸い込む危険がある作業では、メーカー各社もエアラインマスクの使用を勧めている。

製造現場での選び方とコスト感

実務で迷いやすいのは、一定流量形とプレッシャデマンド形のどちらを選ぶかという点である。サカヰ式などの一定流量形全面形面体は本体価格が4万円台からあり、工場に既設の圧縮空気ラインを使えば導入費用を抑えられる。ただし、工場エアには潤滑油のオイルミストや水分、配管のさびが混ざっていることが多く、そのまま吸わせるわけにはいかない。定置式ろ過筒や携帯式ろ過筒を間に入れ、圧力計で供給圧を確かめてから使うのが一般的な手順になる。高濃度の有害物質が予想される槽内作業ではプレッシャデマンド形を選ぶ。こちらは空気消費量の管理と面体の手入れに手間がかかるため、作業頻度が低い事業所では、レンタル品や空気呼吸器との併用で済ませる例も見られる。

可燃性雰囲気での帯電対策

溶剤タンクの清掃のように可燃性ガスがある環境では、人体に溜まった静電気の放電が引火の原因になり得る。ゴム部やプラスチック部に導電処理を施し、マスク・連結管・ろ過筒・耐圧ホースを通して電荷を大地へ逃がす逃電アース形が用意されている。

運用時に押さえるべき点

装着者本人だけでは防げない事故が多いことが、送気マスクの運用の難しさである。ホースが踏まれたり折れたりすれば給気が止まり、空気源の停止にも作業者は気付きにくい。そのため、現場では次のような管理が求められる。

  • 空気源の吸気口を有害ガスや排気の影響がない場所に置き、作業中も監視者を配置する
  • ホースの経路を養生し、車両や重量物で押しつぶされないようにする
  • 警報装置付きの機種を使うか、給気停止時に退避できる手順を決めておく
  • 使用前に面体の密着性、ろ過筒の状態、供給圧力を点検し、記録を残す

サンドブラスト用の袖付きフード形のように、呼吸の保護と同時に顔や肩を研磨材から守る製品もあり、用途は化学物質対策だけに限られない。機種を選ぶときは日本産業規格への適合を確認し、作業環境の測定結果と照らし合わせることが前提となる。

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