日本産業規格|製品や工程をそろえる国の標準規格

日本産業規格

日本産業規格は、産業標準化法に基づいて制定される日本の国家規格であり、英語表記の頭文字から「JIS(Japanese Industrial Standards)」と呼ばれる。鉱工業品の形状・寸法・品質・試験方法に加え、データ、サービス、経営管理までを対象とする。2019年7月1日の法改正で「日本工業規格」から現在の名称に改められた。規格数は1万件を超え、ねじ1本の寸法から品質管理の仕組みに至るまで、国内のものづくりの共通言語として機能している。

戦後の工業復興と規格の誕生

起点は1949年に施行された工業標準化法である。戦時中の「臨時日本標準規格」などで部品の互換性が保たれず、復興期の生産現場では寸法がばらばらな部品が混在していた。こうした状況を改めるため、国が統一的な規格を定める制度として JIS が発足した。1950年代以降は量産化の進展とともに規格数が急増し、自動車や家電の輸出拡大を支える基盤となった。

2019年改正で何が変わったか

2019年の改正により、法律名は工業標準化法から産業標準化法へ、規格名は日本産業規格へと変わった。背景にあるのは、IoTやサービス産業の拡大である。モノだけでなく、データの形式や接客サービスの品質も標準化の対象に加えられた。同時に、民間の認定産業標準作成機関が作成した原案を、日本産業標準調査会(JISC)の審議を経ずに制定できる仕組みが導入された。従来は原案作成から制定まで約3年かかることもあったが、この制度では1年程度への短縮が見込まれている。JISマークの不正表示に対する法人への罰金上限も、100万円から1億円へと大幅に引き上げられた。

規格番号の読み方

規格番号は「JIS」+部門記号(アルファベット1文字)+4桁または5桁の数字で構成される。たとえば「JIS G 3101」は鉄鋼部門の一般構造用圧延鋼材を指し、末尾に「:2020」のように制定・改正年が付く場合もある。主な部門記号は次のとおりである。

記号 部門 代表的な規格
B 一般機械 JIS B 0001(機械製図)
C 電子機器及び電気機械 JIS C 8201(低圧開閉装置)
G 鉄鋼 JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)
K 化学 JIS K 6253(加硫ゴムの硬さ)
Q 管理システム JIS Q 9001(品質マネジメントシステム)
Z その他 JIS Z 8301(規格票の様式)

このほか土木建築のA、自動車のD、非鉄金属のH、2019年に新設されたサービスのYなど、全部で20の部門が設けられている。

制定から見直しまでの流れ

業界団体や学会が原案を作成し、JISCで審議したのち、主務大臣が制定する。主務大臣は対象分野によって異なり、機械や電気なら経済産業大臣、建築なら国土交通大臣が担う。制定後も放置されるわけではない。制定・改正・確認の日から5年以内に見直しが行われ、改正・確認・廃止のいずれかが判断される。技術の進歩に追いつけない古い規格は、この見直しで整理されていく。

JISマーク表示制度

製品が規格に適合していることを示すのがJISマークである。2005年10月に制度が大きく改められ、国による認定から、国に登録された民間の登録認証機関による認証へと移行した。旧マークの表示は2008年9月末で終了している。認証を受けるには、製品試験だけでなく工場の品質管理体制の審査にも合格しなければならない。

「JIS適合品」と「JISマーク品」は別物

調達の現場でしばしば混乱するのがこの区別である。規格の寸法や性能を満たしていれば「JIS適合品」と名乗ることはできるが、第三者の認証を経たわけではない。見積書に「JIS品」とだけ書くと、認証品を前提とした発注者と、適合品のつもりの供給者とで認識がずれることがある。鋼材であればミルシート(鋼材検査証明書)の規格欄を確認し、海外調達品では認証の有無を仕様書で明記しておくと、受入検査でのトラブルを避けやすい。認証品は一般に管理コストが上乗せされるため、単価が数%高くなる場合もある。

国際規格との整合

日本はWTOのTBT協定に加盟しており、国家規格を国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)の規格に合わせることが求められる。JIS Q 9001がISO 9001をほぼそのまま翻訳した一致規格であるように、多くの規格で整合化が進んだ。それでも独自性が残る例はある。代表的なのが紙の寸法で、A4は210×297mmと国際規格と共通だが、B列はJIS独自の寸法となっており、JISのB4は257×364mm、ISOのB4は250×353mmと一致しない。輸出向け書類や包装設計では、この差を見落とすと印刷位置がずれる。

製造現場での具体的な使われ方

設計図面は日本産業規格を前提に描かれている。寸法の公差はJIS B 0405の普通公差を引用し、ボルトやねじは呼び径を記すだけで形状が一義的に決まる。材質欄に「SS400」と書けば、引張強さ400〜510N/mm²の鋼材であることが加工業者にも伝わる。いちいち特性を書き出さずに済むのは、発注側と受注側が同じ規格書を共有しているためである。もっとも、引用している規格が改正されると、旧版を前提とした図面との齟齬が生じる。長期にわたって生産を続ける部品では、図面に規格の年版まで記載しておくのが実務上の定石となっている。

規格票の入手と閲覧

規格本文は、JISCのウェブサイトで無料閲覧できる。ただし印刷やダウンロードには制限があり、正式な規格票は日本規格協会(JSA)から購入する形となる。価格は規格のページ数によって異なり、薄いものなら1冊1,000円前後から入手できる。社内で多数の規格を参照する企業では、JSAの法人向け閲覧サービスを契約し、改正情報の通知を受け取る運用も広く行われている。

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