真空遮断器|真空でアーク消弧省保守で高信頼

真空遮断器

真空遮断器(Vacuum Circuit Breaker, VCB)は、真空中でアークを発生・消弧させる遮断器であり、中電圧配電システムや金属閉鎖配電盤に広く用いられる装置である。密封された真空バルブの内部で可動・固定接点が開閉し、短絡・地絡などの故障電流を迅速に遮断して設備と人員を保護する。油やガスを媒体としないため環境負荷が低く、機械的寿命・電気的寿命が長いことが特徴である。

原理とアーク消弧

真空遮断器は接点が開離すると金属蒸気を主成分とするアークが発生するが、真空では粒子衝突が少なく、電流零点の瞬間にアーク柱が容易に消滅する。零点通過後は絶縁回復が非常に速く、過渡回復電圧(TRV)に耐えることで再点弧を防止する。接点面にはらせん溝や磁場発生構造(AMF/TMF)を施し、アークを拡散させて局所的な損耗と温度上昇を抑える設計が一般的である。

構造と主要部品

真空遮断器の心臓部はセラミック円筒で封止された真空インタラプタである。固定接点と可動接点、伸縮用ベローズ、アークシールド、シールドカップなどから構成され、外部の操作機構(ばね蓄勢式や電磁駆動)と連結する。気密は工場で恒久封止され、現場での再封止や媒体補充を要しない。

接点材料と表面形状

接点材料にはCuCr系合金が多用され、溶着・溶損を抑えつつ導電性と耐アーク性を両立させる。表面のらせん溝やスロット形状はアークの回転・拡散を促し、均一摩耗によって寿命を延ばす。これにより真空遮断器の電気的開閉耐久(例:E2クラス相当)や機械的耐久(M2クラス相当)が実現される。

定格と適用範囲

真空遮断器は主に3.3~36kV級の配電で用いられ、定格短絡遮断電流は一般に12.5~40kA級が選定対象となる。系統の絶縁協調に合わせ、雷インパルス耐電圧(BIL)や工頻耐電圧も規定される。国内外ではIEC 62271-100やJEC規格群に準拠した型式試験・ルーチン試験が行われ、遮断責務(O–t–CO–t–CO)やTRV要件の適合が確認される。

適用上の留意点

  • TRV・サージ対策:絶縁回復が速いがゆえに過渡過程での過電圧が顕在化しやすい。必要に応じサージアレスタやRCスナバを併用する。
  • 変圧器励磁・モータ始動:突入電流・高調波による再点弧抑制を考慮し、適切な投入位相・制御を設計する。
  • コンデンサ投入・遮断:電荷再分配や高dv/dtに注意し、投入抵抗・直列リアクトル等の付加装置を検討する。
  • 直流回路:電流零点が存在しない高電力直流では一般に困難であり、専用方式や他方式との役割分担を設計段階で判断する。

一次系統・二次系統の保護協調では、上位保護やフィーダ回路の過電流継電器、母線保護との時間余裕を確保する。系統全体の運用・制御の観点からはスマートグリッド連携や周波数調整需給バランスの維持にも間接的に寄与する。

開閉性能と遮断過程

真空遮断器は短絡電流遮断時でもアーク電圧が比較的低く、接点消耗が小さい。遮断は電流零点付近で行い、回復電圧の立ち上がりに対して真空ギャップの絶縁強度が迅速に回復することが鍵である。高速度開極、接点ばねの最適化、ばらつきを見込んだ駆動余裕の確保が品質を左右する。

盤実装とシステム統合

金属閉鎖高圧スイッチギヤへの実装では、母線構造、遮へい、クリアランス、温度上昇、熱短絡強度、機械的強度を検討する。計測・監視ではスマートメータデマンド監視と組み合わせ、開閉回数、遮断電流履歴、接点摩耗推定を記録し、予防保全に活かす。無効電力補償や系統安定化には同期調相機などの設備と協調させる。

保全と点検

  • 外観・機構:リンク機構のガタ、潤滑状態、ばね蓄勢・投入/開放時間の測定。
  • 電気特性:相間・対地の絶縁抵抗、二次制御回路の機能、コイル電圧許容範囲。
  • 真空健全性:開極ギャップでの工頻耐圧試験や部分放電監視で封止状態を確認。
  • 付属機器:電流計器用変成器、アレスタ、保護継電器の整定・試験。

消耗部品が少ない点は真空遮断器の利点であるが、操作回数や投入電流波形により接点損耗は累積する。運用実績に基づく状態基準保全(CBM)を導入すると、停止時間と保全コストの最適化に有効である。

選定手順と設計指針

  • 系統条件の把握:定格電圧、短絡容量、TRVプロファイル、開閉対象(変圧器、モータ、コンデンサ)を整理する。
  • 定格整合:定格遮断電流、定格投入電流、定格短時間耐電流、BIL/工頻耐電圧、機械・電気的耐久クラスを確認する。
  • 保護協調:上位・下位保護、母線・断路器や区分機器との連携、必要に応じて自動再閉路の導入有無を検討する。
  • 据付・環境:温湿度、汚損度、地震条件、内部アーク対策、盤内換気・温度上昇余裕を見込む。

規格・試験と適合性

真空遮断器は型式試験として短絡遮断試験、遮断責務試験、TRV適合、温度上昇、絶縁特性、耐機械衝撃、端子短時間耐電流などを受ける。量産時はルーチン試験で極性、耐電圧、機構動作、補機の動作確認を行い、トレーサビリティと記録を整備する。これらはIEC/JECの要求事項に基づき、現地受入試験(SAT)や盤一体の総合試験で裏付ける。

運用・デジタル化の展望

配電のデジタル化により、同期化制御や保護・制御の高度化が進む。真空遮断器の操作履歴、温度、振動、コイル電流波形を常時監視し、異常兆候を早期検知することで、設備稼働率と系統信頼度の向上が期待できる。設備更新時には盤の更新容易性、後継互換性、遠方制御・IoT連携まで含めたライフサイクル最適化を図ることが望ましい。