断路器|無負荷開放で安全に回路を隔離

断路器

断路器は電力設備において回路を機械的に開放し、作業時の安全のために電気的な隔離(アイソレーション)を確保する装置である。遮断器のように故障電流や負荷電流を開閉する目的ではなく、無負荷状態で導体を確実に開離し、目視可能な開極間隔を提供する点が本質である。一般に開閉操作は手動またはモータ駆動で行い、制御盤やSCADAから遠隔操作する構成もある。高電圧系統では母線、線路、変圧器の各ベイに配置し、保守・切替時に回路を区分するために断路器が用いられる。

役割と機能

断路器の第一の役割は安全な作業条件の確立である。遮断器(CB)が電流遮断を担い、断路器が無電圧状態で開放して目視隔離を示すという役割分担がある。負荷電流や短絡電流の開閉能力は想定しておらず、開閉は必ず遮断器や負荷開閉器で電流を断った後に行う。これによりアークの発生や接点損傷を避け、設備の信頼性を確保する。

構成と方式

断路器は屋外AIS(Air Insulated Switchgear)と屋内GIS(Gas Insulated Switchgear)に大別される。AISでは刃(ブレード)を回転・平行移動させて開極を形成し、センターブレーク、ダブルブレーク、パンタグラフ形などの機械構造がある。GISではSF6等のガス中に可動接触子を収め、コンパクトかつ環境影響を受けにくい。操作機構はばね・リンク機構をモータまたは手動で駆動し、位置検出スイッチや鍵付インターロックを備える。

定格と適用規格

断路器の主要定格は定格電圧、定格電流、短時間耐電流(熱安定)、頂値耐電流(動安定)、工頻耐電圧および雷インパルス耐電圧(BIL)である。汚損条件や標高によるクリープ距離の補正も選定要素となる。代表的規格はIEC 62271-102(High-voltage switchgear and controlgear – Disconnectors and earthing switches)で、性能要求、機械耐久、試験方法が定められている。国内適用時は電技解釈や事業者仕様に基づく追加要求が与えられることが多い。

運転手順とインターロック

操作手順は原則として「遮断器開放→接地開閉器投入可→断路器開放→作業」の順であり、復旧時は逆順を厳守する。機械・電気インターロックにより遮断器が投入中は断路器を動かせない、接地開閉器投入中は遮断器を投入できないといった相互排他を実装し、誤操作を防止する。現場ではLOTO(Lockout/Tagout)手順と目視確認、検電・接地の三点セットが重要である。

適用例と配置

変電所の単線結線では、母線ベイ、線路ベイ、変圧器ベイに断路器が配置される。母線切替やセクション切り分け、バイパス回路の形成、保守時の機器切離しなどに用いる。線路側では引込線の選択・切替に寄与し、GISではベイ内部の各機器間に小型の断路器を内蔵して断接点を確保する。

選定の要点

  • 絶縁協調:系統のBIL・SILに適合し、必要クリアランスとクリープ距離を満足する。
  • 通電性能:定格電流と短時間耐電流(例:1~3 s)および動安定電流に余裕を持たせる。
  • 環境条件:汚損、塩害、氷雪、風荷重、地震動に対する機械強度と防食。
  • 操作・監視:モータ駆動の選定、遠方制御、開閉位置指示、接点抵抗監視の導入。
  • 保守性:摺動部の給脂性、接点材質、可動部の交換容易性、予知保全センサの適用。

微小電流の開閉

断路器は基本的に無電流で操作するが、母線充電電流やVT二次の僅少負荷など微小電流が残存する場合がある。このため接点形状や開極速度により小アークの消滅性を確保しており、規格上は限定的な開閉能力が規定されることがある。それでも負荷開閉器や遮断器の代替として用いるべきではない。

接地開閉器との組合せ

保守作業では断路器で設備を切離した後、接地開閉器(ES)を投入して残留電荷や誘導電圧を安全に逃がす。ESは短絡電流への耐量が要求され、投入時過渡に耐える構造を持つ。IEC 62271-102は断路器とESを包括し、インターロック条件や試験要件を定義する。

GISにおける実装

GISではガス絶縁容器内に断路器を一体化し、可動接触子と固定接触子を短いストロークで開閉する。ガス中の高絶縁により小形化できる一方、内部点検は停止・ガス回収を要するため、開閉回数・機械耐久の設計余裕と状態監視(振動・トルク・位置センサ)が重要となる。

故障モードと保全

断路器の代表的劣化は接点の酸化・摩耗、可動部の偏摩耗、摺動部の潤滑不良、塩害による絶縁低下である。定期点検では接点抵抗の測定、機構動作時間の記録、外観・トルクの確認を行い、必要に応じて部品更新を計画保全で実施する。近年は振る舞いデータの解析によるCBMの適用が拡がっている。

他機器との違い

断路器は遮断器(故障電流・負荷電流の開閉)や負荷開閉器(LBS:限られた負荷開閉能力を持つ)と機能が異なる。名称が似た区分開閉器は配電系統の回路切替に用いられ、一般に負荷電流の開閉能力を持つ点で断路器とは設計思想が異なる。用途に応じた役割分担を明確にして選定・操作することが重要である。

設計上の留意事項

シングルラインの切替シーケンス、キーインターロックの配置、機器間クリアランス、母線高さ、メンテナンス動線を総合的に設計する。気中形では風・地震時の共振を避ける支持設計、GISではガス管理とシール性が重要である。デジタル変電所では遠隔監視・保全のために開閉位置、駆動電流、回数計などのデータを収集し、設備健全度の見える化に断路器情報を活用する。