ユダヤ人の歴史|ユダヤ教

ユダヤ人の歴史

ユダヤ人は遊牧民としてユーフラテス川上流域で遊牧生活を送っていたが、前1500年頃にパレスチナに移住・定着した。エジプトに移ったユダヤ人は奴隷に強いられるがモーセによってエジプトを脱出する。その後、外国勢力に対抗するため、国家を建設するが、やがて新バビロニア王国アッシリアに滅亡に追い込まれる。捕虜として苦難を受けることとなるが、この厳しい環境下でユダヤ教という一神教が生まれた。当時は外国からはヘブライ人と呼ばれたが、自らはイスラエル人と主張して、今に至る。なお、ここではユダヤ人とする。(参考:ユダヤ教

 デビットの星

デビットの星

目次

出エジプト

ユダヤ人の祖先は、もとはユーフラテス川の上流域あたりで遊牧生活を送っていた。前2千年紀の前半に現在のパレスチナ地方に移動したが、一部はエジプトに定住した。しかし、ヒクソスが撃退後の新王国の圧政の下、奴隷状態にあった。前13世紀、モーセに率いられてこの地を脱出し(「出エジプト」)、様々な苦難を乗り越えてパレスチナの同胞と合流した。なお、このとき、「十戒」を守ることを条件として脱出を助けたヤハウェ(もとはシナイ山の自然神、軍神・正義の神)を民族神として信仰するようになった。

遊牧民的気風

当時のユダヤ人はまだ遊牧民的気風を保持し、政治的には12支族のゆるやかな連合体を形成していた。非常時に「士師」と呼ばれるカリスマ的な指導者に従うが、「王」のような権力をもった統治者によって長期間の支配を嫌った。

教会

教会

ヘブライ王国

遊牧民として生活していたが、「海の民」の一派のペリシテ人との争いの中で、強力な指導者の必要性が高まり、前11世紀の末、ヘブライ王国が誕生する。

ダヴィデ

第2代目のヘブライ王国のダヴィデ(位前1000頃~前960頃)は、ペリシテ人を破りパレスチナ全土を掌握することに成功した。エルサレムを首都とする統一王国の基礎を固める。

ソロモン

ダヴィデの息子にあたる第三代目のソロモン(位前960頃~前922頃)はダヴィデが築いた基盤の元、フェニキアのティルスの王と手を結んで、貿易による経済政策を積極的におこない、商業を背景に栄えるようになる。しかし、その反面、神殿や宮殿を造営するための大土木工事や、常備軍を維持するために課された重税で、国民は疲弊することになり、王の死後、イスラエルとユダの二カ国に分裂する。

イスラエルとユダ

ソロモンの死後、ヘブライ王国は北のイスラエルと南のユダの2王国に分裂して弱体化が進む。住民が苦しむ中、何人かの預言者が現れて、苦難の原因は人々の堕落と社会悪にあると説き、神への正しい信仰をとりもどして民族が結束するよう求めた。しかし、イスラエルは前722年にアッシリアのサルゴン2世に征服され、ユダは前586年に新バビロニアのネブカドネザル2世に征服された。

バビロンの捕囚

ユダがバビロンに支配されると、多くの住民がバビロンに強制連行されることとなった。これは前586年から前538年の間に行われたが、バビロンの捕虜という。前538年にアケメネス朝のキュロス2世がバビロンを占領したときには、ユダヤ人は帰国を許されたが、彼らはその後も長い間、異民族の支配のもとで苦難の生活を強いられた。

ユダヤ教の誕生

ユダヤ教

ユダヤ教

ヘブライ人は、古代オリエントで一神教を信じた唯一の民族といえる。彼らがヤハウェを唯一最高の神として認め、これと契約関係に入ったのは、出エジプト後パレスチナに入るまでの苦難のなかにおいてであった。ヘブライ王国時代には周辺民族の多神教の影響をうけて、預言者たちに厳しく批判されたが、亡国とバビロン捕囚という民族的苦境のなかで、ヤハウェへの信仰は強まることになる。この民族的苦境は神と契約しているユダヤ人だけが救済されるという排他的な選民思想、この救済を実現する救世主(メシア)の到来を待望する信仰が生まれた。

『旧約聖書』

ユダヤ教が民俗宗教として確立すると、『旧約聖書』の編纂が始まる。ユダヤ人はバビロンから解放されて帰国すると、エルサレムにヤハウェの神殿を再建し、儀式や祭祀の規則を定めてユダヤ教を確立した。ここで最後の審判や天使・悪魔の思想が生まれる。(ここにはゾロアスター教の影響が見られる。)

ユダヤ教徒

ユダヤ教徒

戒律主義

ユダヤ教は戒律主義をとり、信仰や日常生活の規則である律法を極端に重んじるようになる。この戒律主義は戒律を守れない弱者を生み出すが、苦難を生きる弱者を救おうとイエスが現れる。イエスは、形式化した信仰に新しい生命を吹きこむとともに、救済をユダヤ教徒だけでなく、全人類におよぼす道を開いた。イエスは強大化するにともない、ユダヤ教はこの異端者として危険視し、死刑とする。(参考:キリスト教

旧約聖書

ユダヤ人が書き残した神話・伝承、預言者の言葉、神への賛歌などをまとめたユダヤ教の経典は『旧約聖書』として、イエスの教えや弟子たちの行伝・手紙などをまとめた『新約聖書』と並んでキリスト教の経典となる。またイスラム教でも、旧約聖書は経典と認められている。なお、「旧約」とは「神との古い契約」の意味で、「神との新しい契約」としてのキリスト教に対照させて、パウロがこう呼んだのに由来している。

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