TFT(Thin-Film Transistor)
TFTは薄膜トランジスタ(Thin-Film Transistor)の略称であり、主にフラットパネルディスプレイに用いられる重要な要素技術である。ガラスやプラスチックなどの基板上に半導体膜を形成し、スイッチング素子として画素のオン・オフを制御する役割を担う。この技術の進展により、液晶ディスプレイ(LCD)をはじめ、有機EL(OLED)ディスプレイやマイクロLEDなど、多岐にわたる表示デバイスが高解像度・低消費電力で実現されてきた。現代のモバイル機器やテレビ、パソコンモニタにおいて、より美しくなめらかな映像表現を可能にする基盤技術として欠かせない存在である。
概要
TFTは、ガラスなどの絶縁性基板上に微細な半導体層を堆積し、ゲート電極・ソース電極・ドレイン電極を形成して作られるトランジスタである。従来のバルクシリコン基板上に作製されるMOSFETなどとは異なり、基板全体が薄膜構造であるため、大面積のディスプレイ基板でも均質にプロセスを行えることが利点とされる。アモルファスシリコン(a-Si)、低温ポリシリコン(LTPS)、酸化物半導体(IGZO)など材料の選択肢が豊富であり、それぞれ特性や製造コストが異なるため、用途に応じて最適な技術が選ばれる。
開発の歴史
TFTの研究開発は1960年代から始まり、当初はアモルファスシリコンを用いた簡易なトランジスタが主流であった。ところが液晶ディスプレイのニーズが高まるにつれ、さらなる高速応答や高解像度への要求が強まり、半導体材料を改良した低温ポリシリコンTFTなどが登場した。2000年代に入ると大画面テレビやスマートフォンの普及に合わせて、より高い輝度と省電力特性を両立する技術が求められ、酸化物半導体TFT(IGZO)の開発が進展した。こうした多様な技術革新が、ディスプレイ市場の拡大を支えてきたといえる。
動作原理
TFTはゲート電極に電圧を印加することで、チャネル領域に電子や正孔などのキャリアを誘起し、ソース・ドレイン間の電流を制御する仕組みを持つ。ベースとなる半導体層の結晶性やキャリア移動度に応じて、動作速度や電流容量が変化する。また、ゲート酸化膜やパッシベーション膜の品質はリーク電流や信頼性に直結するため、ディスプレイ製造時には成膜技術やプロセス管理が重要とされる。薄膜構造であるがゆえに、微細な工程設計がディスプレイの解像度や寿命に大きく影響を及ぼす。
TFT液晶【ティーエフティーエキショウ】
アクティブマトリックス液晶の一つ。
画面の各ドットを薄膜トランジスタで制御するよ。
CRTディスプレイより画面のちらつきが少ないね。
コントラスト、階調表示もCRTに近いかな。#PDtan— 夏目真帆(パーソナルデバイスちゃん) (@Celeron_Pentium) February 26, 2023
主要材料
TFTの半導体材料には、初期から使われているアモルファスシリコンが挙げられる。これは製造コストが低く、大面積の基板上に均一に成膜しやすい利点がある一方で、キャリア移動度が低く、応答速度には限界がある。次に登場した低温ポリシリコンTFTは、高い移動度を実現し小型・高精細なディスプレイに適するが、レーザーアニールなどの工程を要するため製造コストが高くなる傾向がある。近年の酸化物半導体TFT(IGZO)は、高い移動度と低リーク電流を両立し、大画面テレビからモバイル端末まで幅広く応用が進んでいる。
応用先
現在、液晶ディスプレイはもとより、有機ELパネルのバックプレーンにもTFTが広く採用されている。たとえばスマートフォンやタブレットでは、軽量化と高解像度を両立するために低温ポリシリコンTFTが積極的に導入されてきた。さらに、ノートパソコンやテレビでも高画質・低消費電力化が求められるため、酸化物半導体TFTが注目を集めている。また、フレキシブル基板を用いたウェアラブル機器や折りたたみディスプレイなどでは、プラスチック基板上で強度と解像度を両立できるTFT技術の可能性が広がっている。
世界初の65インチ8Kインクジェット印刷折りたたみ式OLEDディスプレイとして宣伝されています。超高精度インクジェット印刷技術と、ピクセルを制御する薄膜トランジスタで構成されるIGZO TFTバックプレーンを搭載し、ディスプレイを半分に折りたたむことができます🖥️🤔
— マサミ (@masami777777) July 26, 2023
製造プロセス
TFTの製造プロセスはフォトリソグラフィ、ドライエッチング、成膜などの半導体プロセス技術が集約されたものである。ガラス基板やプラスチック基板の上にゲート電極を形成し、ゲート絶縁膜と半導体層を重ねてソース・ドレイン電極を配置するという工程が基本的な流れである。酸化物や金属膜など複数の材料を精密に堆積する必要があり、歩留まりや大量生産性に大きく影響を与えるため、各工程の精度管理が厳格に行われる。大判のガラス基板を扱うため、大型マスクや装置の開発など、設備投資面でも大規模な取り組みが求められる点が特徴である。