バンバリーミキサー|ゴムや樹脂を練る密閉式バッチ混練機

バンバリーミキサー

バンバリーミキサーは、密閉されたチャンバー内で2本のローターを回転させ、ゴムや樹脂に配合剤を練り込むバッチ式の密閉型混練機である。英国出身の技術者フェルンリー・H・バンバリーが1916年に米国で特許を取得したことに名称が由来し、現在ではインターナルミキサー(内部混合機)の代名詞として扱われている。タイヤ、ベルト、ホースなど工業用ゴム製品の量産工程に欠かせない設備であり、1バッチあたり数十kgから数百kgの材料をおよそ2〜5分で処理できる。

誕生の経緯

20世紀初頭のゴム工場では、2本のロールを用いるオープンロールでの手作業が主流であった。作業者がナイフで生地を切り返しながらカーボンブラックを投入していたため、粉じんが舞い、処理量も限られていた。自動車の普及でタイヤ需要が急増すると、この方式では生産が追いつかなくなる。バンバリーはバーミンガム・アイアン・ファウンドリー社(のちのFarrel社)で密閉式の混練機を開発し、粉じん飛散と人手依存という2つの問題を同時に解決した。日本では1960年代以降、神戸製鋼所などが技術導入を経て国産化を進め、今日の国内タイヤ工場で稼働する大型機の多くにつながっている。

他の混練機との違い

ゴムの混練に使われる設備は、オープンロール、加圧ニーダー、インターナルミキサーの3系統に大別される。バンバリーミキサーはインターナルミキサーに属し、高出力での短時間混練と大量生産を得意とする。主な違いを下表に示す。

項目 オープンロール 加圧ニーダー バンバリーミキサー
構造 開放型・2本ロール 密閉型・傾動排出 密閉型・下部ドロップドア排出
1バッチ時間の目安 15〜30分 10〜20分 2〜5分
主な用途 試作、仕上げ練り、シート出し 多品種少量の工業用品 タイヤなどの大量生産
粉じん対策 局所排気が必須 比較的良好 良好

加圧ニーダーは混練物を傾けて取り出すのに対し、バンバリー形式は底部の扉から真下へ落とす。そのため直下に押出機やシーティングロールを配置したライン構成をとりやすい。

チャンバー内部の構造

本体は、まゆ形断面のチャンバー、2本のローター、上部から材料を押さえ込むラム(フローティングウエイト)、下部のドロップドアで構成される。ローター軸端には材料の漏れを防ぐダストストップ(ダストシール)が組み込まれ、駆動は大容量モーターから減速機を介して行う。チャンバー壁とローター内部には冷却水の流路が設けられており、発熱を除去しながら練る点が特徴となる。

ローターの形式

ローターには接線型(タンジェンシャル型)と噛合い型(インターメッシュ型)がある。接線型は2本のローターが互いに接触せず、前後で回転数に差(フリクション比1.1〜1.2程度)をつけてせん断を与える方式で、オリジナルのバンバリー形式がこれにあたる。翼の数により2翼式と4翼式があり、4翼式のほうが分散性に優れる。噛合い型は同速で回転し、翼同士のすき間で材料を圧縮・展延するため温度上昇を抑えやすい。

ラムとドロップドア

ラムは空気圧または油圧シリンダで駆動し、0.3〜0.6MPa程度の面圧で材料をローター側へ押し込む。圧力が低すぎると材料がラム下に滞留し、未分散の塊が残る原因になる。

1バッチの運転手順

一般的なマスターバッチ練りは、次の順序で進む。

  1. ラムを上げ、天然ゴムや合成ゴムなどの原料ポリマーを投入して素練りする
  2. カーボンブラックやシリカなどの補強剤を2回程度に分けて投入する
  3. プロセスオイルなどの軟化剤を加え、ラムで加圧しながら分散させる
  4. ラムを一時上昇させ、ネック部に付着した粉体を落とし込む(スイープ)
  5. 規定の温度・積算電力に達した時点でドロップドアを開いて排出する

材料の投入量はチャンバー容積に対する充填率で管理する。充填率 f = Vb / Vc(Vb:バッチ体積、Vc:チャンバー有効容積)で表され、0.65〜0.75前後が標準的な範囲とされる。0.8を超えるとラムが下がり切らず、逆に低すぎると材料がローターに噛み込まずに空回りする。

2段練りと温度管理

補強剤を分散させるマスターバッチ練りは、排出温度150〜170℃の高温域で行うことが多い。ここに硫黄や加硫促進剤を同時に入れると、機内でスコーチ(早期加硫)が起こる。そこで一度冷却したマスターバッチを再投入し、100〜110℃以下で加硫系を練り込むファイナル練りに分ける。これが2段練り、あるいは多段練りと呼ばれる工程設計である。

現場では、排出判定を「時間」だけで行わず、温度と積算電力量を組み合わせることが多い。原料ゴムのムーニー粘度はロットごとにばらつくため、時間固定では分散度が安定しない。積算電力で管理すれば、材料に与えたエネルギー量をそろえられる。試験用の配合物は、JIS K 6299やISO 2393に規定された手順で作製し、量産機との相関を確認する。

導入と保守の実務

量産用の大型機は内容積200〜400L級が中心で、主電動機は1,000kWを超える例も珍しくない。本体価格に加え、計量・搬送設備、集じん装置、下流のシーティング設備まで含めると、1ラインで数億円規模の投資になる。中小のゴム加工会社が自社で持たず、混練専門の受託会社(練り屋)からコンパウンドを購入するケースが多いのはこのためである。

保守面で費用がかさむのは、ローター翼先端とチャンバー壁の摩耗である。シリカ配合の低燃費タイヤ用ゴムは摩耗性が高く、すき間が数mm広がるだけで分散性と冷却効率が目に見えて落ちる。翼先端には硬化肉盛溶接を施し、定期的にクリアランスを計測して再肉盛のタイミングを判断する。ダストストップからの漏れも見逃せない。漏れた材料が焼けて異物となり、次のバッチに混入する不良が起こりやすいため、潤滑油の給油量とシール面の状態を日常点検で確認しておく。

ゴム以外での活用

同じ構造の機械は、熱可塑性樹脂へのフィラー高充填、着色用マスターバッチ、ホットメルト接着剤、さらには電池電極スラリーの前練りなどにも使われている。ただし樹脂用途では、連続処理が可能な二軸混練押出機に置き換わる例も増えている。

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