サイドエアバッグ|側面衝突から乗員の胴体を保護

サイドエアバッグ

サイドエアバッグは側面衝突時に乗員の胸部や骨盤、頭部を迅速に保護する受動安全装置である。シート側面やドア内部に内蔵されたエアバッグが、ミリ秒単位で展開し、ドア内側への侵入や二次衝突による加害を緩和する。胸部用(サイドトルソ)、頭部用(カーテン)、骨盤・胸部一体型、さらには前後席間のセンター型など構成は多様で、車体構造や乗員配置に応じて最適化される。本装置はシート構造、車体側補強、シートベルトプリテンショナなどの拘束装置と連携して総合的な保護性能を発揮する。

構造と作動原理

サイドエアバッグは折り畳まれたバッグ、ガス発生器(インフレータ)、カバー(シート側面やドアトリム)、およびシーム(破断縫製)で構成される。側面衝突で加速度・圧力・ドア変位などのセンサ信号を受け、ECUが数ミリ秒で展開判定を行い、発火素子が作動して高圧ガスがバッグへ充填される。展開タイミングは一般に20〜30ms程度で、ドア内張りやシート表皮を破って乗員と侵入物の間にクッション層を形成する。

種類と配置

  • 胸部用:シート側面に内蔵され胸郭を保護する。軽量で応答が速い。
  • 骨盤・胸部一体型:骨盤点を含めて下方の侵入にも対応する。
  • カーテン型:ルーフサイドに沿って展開し、頭部を広範囲に保護する。
  • センター型:前席間に展開し、車内側への二次衝突を抑制する。

座席内蔵型は乗員に近く初期密着性が高い一方、ドア内蔵型は開口面積を確保しやすい。後席用や三列目用の採用も拡大している。

センサと制御ロジック

車体床面・Bピラー・ドア内に配置した加速度センサや圧力センサからの多点情報をECUが統合し、衝撃強度・侵入速度・方向を推定する。サイドエアバッグは展開許容時間が極めて短いため、誤展開抑制と迅速性のトレードオフを最適化する必要がある。チャイルドシート装着や乗員検知(OCC)情報と連携し、体格・着座姿勢によるリスクを低減する。

材料・縫製・耐久性

バッグ布は高強度ナイロン66が主流で、耐熱・耐ガス性向上のためコーティングを施す。展開時の破断を制御するティアシームは、レーザーノッチや可変ピッチ縫製により狙い通りに開口させる。繰返し温度サイクル、湿度、経年による樹脂化や縫製劣化を想定した耐久試験を実施し、ガス保持性と縫製強度を確保する。

評価モードと安全指標

開発では法規および評価プログラム(例:JNCAP、Euro NCAP、IIHSの側面衝突・ポール試験)に適合させる。胸部合成加速度、胸部たわみ、頭部傷害値(HIC)、骨盤荷重などの指標を用い、ダミーの座高・着座位置・ベルト締付けと相関を取りながら総合的に最適化する。カーテン型は乗員保持だけでなく窓ガラス破砕時の飛散・部分的な車外放出抑制にも寄与する。

車両設計とのインタフェース

シート骨格、フォーム厚、表皮縫製、シートレール剛性、ドア内部補強、サイドシル・Bピラー断面など車体構造が性能を左右する。座面高さやリクライナ角度のばらつき、後席のチルドやスライド機構も展開空間を変化させるため、車種別にバッグ容量・ベント孔・インフレータ流量を調整する必要がある。

他のエアバッグとの連携

運転席エアバッグ助手席エアバッグステアリングエアバッグなどとの干渉回避が重要である。前後方向の一次衝撃に側方成分が重畳する複合事故では、展開優先度やタイミングを配慮した戦略が求められる。二段階ガスやマルチベント制御を組み合わせ、乗員負荷を低減する。

メンテナンスと注意事項

展開後の再使用は不可であり、関連部品を含めて交換する。座面や背もたれに市販シートカバーを装着する場合は、サイドエアバッグ対応品を用い、縫製破断部を塞がないことが条件である。中古シートへの換装やシートヒータ追設時は配索・発火回路を損傷しないよう整備手順に従う。視界確保の観点ではサンバイザーも重要であるが、側面衝突保護とは別系統である。

関連システム・用語

量産開発ではCAEでバッグ展開・乗員挙動を予測し、実機試験でチューニングを繰り返す。車種間プラットフォーム共通化と法規・評価要件の差分を両立させつつ、軽量化とコスト、耐久・信頼性を満たすことが、サイドエアバッグの設計品質を左右する。