アーク溶接
アーク溶接とは、電気アークを利用して、アークが発生する熱によって溶接部を溶かし、溶加材を加えて溶接する方法である。電極に融点が高く、アーク熱でも消耗しにくい金属を使用する非消耗電極式と溶加材を金属電極とする消耗電極式とがある。アーク溶接には、TIG溶接、プラズマ溶接、MIG溶接など様々な種類があるが、材料の品質や効率によって選定される。
原理とメカニズム
アーク溶接の基本原理は、電極と母材の間に高い電圧をかけ、これらを接触させた直後にわずかに離すことで、空気の絶縁を破壊して電流を流す「アーク放電」を発生させることにある。この際に生じるアークの温度は摂氏約5,000度から20,000度に達し、鉄などの金属を瞬時に溶かすことが可能である。溶融した金属が混ざり合った部分は「溶融池(モルテンプール)」と呼ばれ、これが冷却・凝固することで金属同士が原子レベルで一体化する。この過程で大気中の酸素や窒素と反応して品質が低下するのを防ぐため、被覆剤やシールドガスを用いて溶融部を保護する「シールド」の工程が極めて重要となる。
TIG溶接とMIG溶接の原理的な違い、そしてMIG溶接でもガスの違いによるアーク挙動をざっくりまとめてみたよ。
あくまでも現場脳筋レベルの解釈です(`・ω・´)キリッ pic.twitter.com/nUxjBFdj17— メタさん@栃木の溶接野郎Aチーム時々ぬこ (@metalist2018) February 22, 2024
電極による分類:消耗式と非消耗式
アーク溶接は、電極自体が溶けて溶加材となる「消耗電極式(溶極式)」と、電極は溶けずに別の溶加材を供給する「非消耗電極式(非溶極式)」に大別される。消耗電極式は、溶接棒を使用する被覆アーク溶接や、自動供給されるワイヤを使用するMIG・MAG溶接が代表的であり、作業効率が高いため大規模な施工に適している。一方、非消耗電極式の代表であるTIG溶接は、高融点のタングステンを電極に使用し、極めて高品質で精密な溶接が可能なため、ステンレスやアルミなどの特殊金属の接合に多用される。
シールドガスの役割と種類
アーク溶接において、溶融した金属が大気に触れて酸化(サビ)や窒素の混入(ブローホールの原因)を起こさないよう保護するのがシールドガスである。使用されるガスの種類によって溶接の性質が大きく変化し、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを用いる場合はMIG溶接やTIG溶接に分類され、化学反応を抑えた純度の高い溶接が実現する。対照的に、炭酸ガス単体や、炭酸ガスとアルゴンの混合ガスを用いる手法はMAG溶接と呼ばれ、安価なコストで深い溶込みが得られるため、鉄鋼材料を扱う多くの工場で標準的に採用されている。
TIG溶接
TIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)とは、電極棒ホルダの中心にタングステン電極を配置し、その周囲から不活性ガス(イナートガス)であるアルゴンやヘリウムを噴出するような構造になっている。電極と金属との間に電気アークを発生させて、溶加材をアークで溶かして溶接部を空気から遮断して酸化や窒化などを防いで行う溶接法である。見かけがきれいで高品質な溶接となるため、精密な用途に適している。薄い板や細い管の溶接に使われる。
火花の出ないこう言った溶接もあるんですよ(TIG溶接)
#製造業
pic.twitter.com/N8XbX6SQoE— 有限会社山田熔接工業 (@4BwhdKr4FmGbWZ5) March 25, 2025
プラズマ溶接
プラズマ溶接(Plasma welding)は、プラズマがもつ高温のエネルギーを利用して金属を溶解する溶接方法である。水冷銅ノズルと動作ガス(アルゴンと水素の混合ガスなど)によってアーク柱を絞り、高温のプラズマを定常的に噴出させる仕組みとなっている。高火力と高温のアークを生成するため、厚みのある板や太い管の溶接に使用される。TIG溶接と似たような仕組みになっているが、TIG溶接よりも速度が速くきれいに仕上がるため、自動化に適している。プラズマジェット方式、プラズマアーク方式などがある。
指導していただきながら中1息子は溶接で鍵掛けを製作。小3娘はプラズマ溶断で部屋の表札製作。
次回はブレーキで鉄板曲げのスペシャルコース⁉
大前製作所の皆さま
ありがとうございました🙇 https://t.co/9VJWgdJI2w pic.twitter.com/EgGaRpshgG— 折口正紀 (@_origu) September 16, 2023
プラズマジェット方式
プラズマジェット方式 (Plasma jet)は、中央にタングステン電極を陰極として置き、その周囲の水冷銅合金ノズルとの間にアークを発生させ、そこにガスを送り込むと、ガスはアークにより高温となりまた膨張するがが、その高温のガスがノズル口から勢いよく噴射する。このとき、ノズル口から高温の焼け点を発生させて金属を溶融していく溶接方法である。自動化に適しているため工場内で効率よく溶接することができる。
プラズマアーク方式
プラズマアーク方式は、プラズマ溶接の一種で、母材が一方の電極となっており、アークは途中で絞られる。入熱密度が大きく、熱効率も高いため精密な溶接が可能である。
被覆アーク溶接
被覆アーク溶接 (Flux-Cored Arc Welding, FCAW)とは、電極に溶加材であるワイヤーに被覆剤を塗布した溶接棒を使用する消耗電極式のアーク溶接法である。被覆剤にはアークの安定、溶融金属の保護、スラグ化、流動性向上、溶融金属に必要な合金の付与、防酸化作用などを目的としたものが含まれており、溶接性の向上を促している。スチールやニッケル合金の溶接に使われることが多い。持ち運びしやすく、外部での保護ガスがいらないため、工場外での利用に適している。
創造楽習で「アーク溶接をやってみよう」を実施しました。2名の学生が初めて被覆アーク溶接とCO2半自動溶接を体験し、特に点火で苦戦していましたが、最終的には材料を使ってイスを作り上げました。この体験を通じて、学生たちは溶接技術の奥深さを感じたようです。 pic.twitter.com/FGabiVEGwQ
— バイオリファイナリ研究室【秋田県立大学 機械工学科】 (@TandemRingMill) June 20, 2025
サブマージアーク溶接
サブマージアーク溶接(ユニオンメルト溶接)は自動溶接法で、溶接部に粉末溶剤を盛り、その中でアークを発生させて溶接する方法である。溶接棒が溶融した金属に接触しないため、空気と反応してスラグを形成することが少ないため、効率よく品質のよい溶接を行うことができる。大物向けの溶接に用いられるが、高温のため大気汚染があり、工場内では推奨されない。
螺旋状のサブマージアーク溶接 pic.twitter.com/P4LAwp6Pil
— J-MAT (@jmat2022) April 28, 2026
MIG溶接 metal-arc inert gas
MIG溶接とは、溶加材に金属電極を配置した溶接でTIG同様、空気と反応しないようにアルゴンやヘリウムなどの不活性ガス(イナートガス)で溶解金属を覆って溶接する方法である。手動で使うことができ、溶加材を自動供給し、送り速度、電流などを自動でコントロールするものも多く初心者でも利用しやすい。用途は薄い板や小物に使われアルミニウム、チタン、銅、ステンレス鋼などの溶接に用いられている.
アルミ半自動MiG溶接 pic.twitter.com/Q7dF7Vde4B
— ウェルディング君 (@welding_08) January 30, 2026
炭酸ガスアーク溶接
炭酸ガスアーク溶接とは、安価な炭酸ガスを保護ガスとして使ったアーク溶接ある。鉄鋼の自動溶接に多く用いられている 。MIG溶接に比べ早く溶接でき、スラグも少ない。ただし、高温で酸化や母材の変形が起こりやすい。鋼板やアルミの自動溶接に多く使われる。
圧力容器製作(其の弐):もう一つの圧力容器のカップリング取付け部に溶接ロボットで炭酸ガスアーク溶接を行いました。生徒はティーチングを覚えるのが早いですね、ゲーム感覚でしょうか?圧力容器の名前は「ハナチャン」になりました。完成品は水圧をかけて耐圧試験をします、「ハナチャン」頑張れ。 pic.twitter.com/Wv2mZcwfYG
— 東大阪ぎせんこう🧰 (@higasiosakakou) February 28, 2022
アーク溶接の主な利点
- 接合部の強度が非常に高く、母材と同等以上の物理的性質を得ることが可能である。
- 設備が他の高エネルギー溶接(レーザー等)に比べて比較的安価であり、導入の障壁が低い。
- 小型の溶接機であれば持ち運びが容易で、高所や狭隘な現場でも作業が行える。
- 手動溶接から多関節ロボットによる自動溶接まで、幅広い運用形態に対応している。
安全衛生と法的規制
- アークから放射される強力な紫外線から目を保護するため、適切な遮光度の溶接面を着用する。
- 溶接時に発生する有害な微粒子である「溶接ヒューム」を吸引しないよう、防じんマスクの着用と換気装置の使用を徹底する。
- 高電圧を扱うため、絶縁手袋や乾燥した作業靴を使用し、漏電や感電による死亡事故を防止する。
- 火花(スパッタ)による火災を防ぐため、周囲の可燃物を取り除き、防炎シートを設置する。
品質管理と溶接欠陥
アーク溶接の品質は、電流値、電圧、溶接速度、および作業者の技量に大きく依存する。適切な条件が維持されない場合、金属が十分に溶け合わない「溶け込み不良」や、溶融金属が重なり合うだけの「オーバーラップ」、母材がえぐれてしまう「アンダーカット」などの欠陥が発生し、構造物の強度が著しく低下する。これらの欠陥を未然に防ぐため、非破壊検査(超音波検査や放射線透過試験)による厳格な品質管理が実施されるとともに、溶接技能者資格制度などの人的管理も重要視されている。
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