3次元CAD
3次元CADとは、コンピュータ上で製品や部品の形状を幅・奥行き・高さをもつ立体として定義し、設計・検証・製造情報の作成までを行うソフトウェアである。3D CADとも呼ばれる。平面上に投影図を描く2次元CADと異なり、体積・質量・重心をモデルから直接求められるため、干渉確認や強度解析、NC加工データの生成まで一つの形状データを軸に進められる。機械、自動車、金型、建築、電子機器など、ものづくりの広い領域で標準的な設計環境として定着している。
2次元から立体へ至った経緯
源流は1963年、マサチューセッツ工科大学のIvan Sutherlandが開発したSketchpadにさかのぼる。ライトペンで図形を直接操作するこの研究が、対話型CADの原型となった。1977年には仏ダッソー・アビアシオンが航空機設計向けにCATIAの開発に着手し、1981年に製品化される。転機となったのは1988年にPTCが発売したPro/ENGINEERで、寸法値を変えると形状が追従する「パラメトリック」という考え方を広めた。1995年登場のSOLIDWORKSはWindowsパソコン上で動作し、それまで高価なワークステーションを前提としていた3次元CADを中小の設計現場へ一気に押し広げている。
形状の表し方は3通りある
立体の内部情報をどこまで持つかによって、モデルは大きく3種類に分けられる。用途によって使い分けられるが、機械部品の設計ではソリッドモデルが主流である。
| 方式 | 保持する情報 | 得意な用途 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| ワイヤーフレーム | 稜線(点と線)のみ | 初期の構想スケッチ、軽量表示 | 面や体積がなく、断面や干渉を判定できない |
| サーフェス | 外表面の曲面 | 自動車外装、家電の意匠面 | 中身が空洞のため質量計算に不向き |
| ソリッド | 面に囲まれた内部まで | 機械部品、組立品、解析 | データ容量が大きくなりやすい |
パラメトリックとダイレクトモデリング
パラメトリック方式は、押し出しや穴あけといったフィーチャーを履歴として積み重ね、寸法拘束で形状を管理する。設計意図を残せる反面、上流の変更が下流のフィーチャーを壊すこともある。ダイレクト方式は履歴を持たず、面を直接つまんで動かす手法で、他社CADから受け取った形状の修正に向く。実務では、量産部品をパラメトリックで作り込み、客先支給データの穴位置変更や面のオフセットだけをダイレクトで済ませる併用型が多い。Creo、NX、SOLIDWORKSなど主要製品の多くは、現在どちらの操作にも対応している。
2次元図面との関係
立体モデルを作っても、現場では依然として図面が取引の基準になることが多い。ソフトはモデルから投影図・断面図を自動生成し、JIS B 0001(機械製図)に沿った製図を補助する。部品図と組立図の寸法がモデルと連動するため、手作業の転記ミスは大幅に減った。近年はモデル自体に寸法・注記・幾何公差の普通公差などを書き込むMBD(Model Based Definition)も進み、国内ではJIS B 0060シリーズ、国際的にはISO 16792がその表記ルールを定めている。ただし、はめあい公差のように加工者が真っ先に確認したい情報は、2D図面へ併記するのが無難である。どの図面の種類まで3Dモデルで代替するかは、取引先の受入れ体制を見て判断したい。
解析と加工への受け渡し
ソリッドモデルはCAEのメッシュ生成にそのまま使える。有限要素法による応力・変形の確認は、手計算中心の設計計算を補う手段として普及した。モータやコイル周りでは電磁界解析に形状を渡す例もある。製造側では、CAMが工具経路を算出してマシニングセンタ用のNCプログラムを出力する。3Dプリンタ向けにはSTL形式へ三角形分割して書き出し、試作品を数時間から1日程度で手にできる。
代表的なソフトと形状カーネル
見た目が違っても、内部の幾何演算エンジン(カーネル)は数種類に集約される。主な組み合わせを挙げる。
- CATIA、3DEXPERIENCE:独自カーネルCGM。航空機・自動車のハイエンド用途
- Siemens NX、Solid Edge:Parasolid。大規模アセンブリに強い
- SOLIDWORKS:Parasolid。中堅メーカーの機械設計で採用例が多い
- Creo(旧Pro/ENGINEER):独自カーネルGranite
- Autodesk Fusion、Inventor:ShapeManager(ACIS派生)
導入と運用の実務
ミッドレンジ製品の年間ライセンスは1席あたり数十万円規模で、ハイエンド製品はモジュール構成次第で数百万円に達する。ソフト代より見落とされやすいのが端末側の負担である。部品数が1,000点を超える装置アセンブリを扱うなら、メモリ32GB以上とCAD認証済みのGPUを用意しないと回転表示すら引っかかる。教育期間も軽視できず、2次元CADに慣れた設計者が実務でモデルを組めるまでには3か月前後を見込む会社が多い。社内の運用面では、ファイル名と版数をPDMで管理しないと、どれが最新モデルか分からなくなる事故が頻発する。設計プロセスの各段階でモデルを誰が承認するかを決めておくことが、設計品質を保つ前提になる。
データ交換で起きやすいトラブル
異なるソフト間の受け渡しには、中立形式のSTEP(ISO 10303)や、1980年に初版が出たIGESが使われる。STEPで渡すと形状は残るものの、フィーチャー履歴と寸法拘束は失われ、受け手側では「ただの塊」として扱うことになる。カーネルごとにモデリング許容差が異なるため、IGESでは面と面の間に微小な隙間が生じ、ソリッドとして閉じない不具合も珍しくない。外注先へ金型や治具を依頼する場合は、相手の使用ソフトとバージョンを事前に確認し、STEP AP214またはAP242で出力しておくとやり取りが減る。生産設計や製品設計の段階からこの受け渡しを見込んでおけば、後工程での形状修復の手間はかなり抑えられる。
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