連続関数チャート(SFC)|連続関数でプロセス挙動を可視化

連続関数チャート(SFC)

連続関数チャート(SFC)は、離散事象の手順や状態遷移を視覚的に表現する方式であり、製造装置やプロセス設備のシーケンス制御を明快に設計・保守するための図式表現である。起点となる初期ステップ、条件式で駆動される遷移、ステップに付随するアクションを基本要素とし、逐次・並列・選択といった流れを組み合わせて動作全体を構成する。連続関数チャート(SFC)はIEC 61131-3に規定され、GRAFCET(IEC 60848)に由来する記法を採り、PLCやDCS上での実装と親和性が高い。ラダー図(LD)やファンクションブロック図(FBD)、構造化テキスト(ST)と併用することで、複雑な手順を読みやすく安全に運用できる。

SFCの概要と位置づけ

連続関数チャート(SFC)は、装置の振る舞いを「状態(ステップ)」と「状態間の条件付き遷移」のネットワークとして定義する。各ステップには出力や命令(アクション)を割り当て、条件が満たされると次のステップへ遷移する。ラダー図が接点論理中心であるのに対し、SFCは手順の構造・流れを前面に出すため、順序性・排他性・並列性の把握が容易で、立上げや保全時のトラブルシューティングを効率化できる。

基本要素(ステップ・遷移・アクション)

  • ステップ:装置の安定した状態を表す。初期ステップは電源投入やリセット時に有効化される。
  • 遷移:ブール条件式で定義され、成立時に上流のアクティブなステップから下流のステップへトークンを移す。
  • アクション:ステップがアクティブな間に実行する処理(出力、FB呼び出し、タイマ等)。修飾子(N、S、R、P1など)で実行タイミングや保持挙動を指定する。

表記と構文ルール

初期ステップを明示し、遷移には評価される条件式(例:センサ入力、タイムアウト、インターロック解除)を記す。分岐(並列/選択)と合流を用いて複数の動作系列を同時進行させることができ、マクロステップにより下位手順を階層化する。アクション修飾子は「N(通常実行)」「S(セット保持)」「R(リセット)」などを用い、パルス動作や保持挙動の定義を明確化する。

簡単なシーケンス例

  1. 初期化(S0)→原点復帰(S1)→待機(S2)→開始条件成立で搬送(S3)→加工(S4)→排出(S5)→完了(S6)。
  2. 各遷移条件には「安全扉閉」「非常停止解除」「タイマ満了」「次工程の準備完了」などを設定する。
  3. 並列分岐で「治具クランプ」と「工具準備」を同時実行し、両方の完了で合流遷移させる。

ラダー図・FBD・STとの併用戦略

SFCは流れを設計し、各遷移条件やアクション内部の論理はラダー図やFBD、演算や文字列処理はSTで詳細化する併用が実務的である。これにより、上位の手順構造は可読性を保ちつつ、下位の信号処理は最適な言語で実装できる。I/O割付やFBのインタフェースは命名規約を統一し、SFCの各ステップから参照しやすくする。

設計手順(実務フロー)

  1. 要求機能の分解:運転モード、例外処理、手動介入を洗い出す。
  2. 状態定義:無駄なステップを排し、観測可能な完了条件を付す。
  3. 遷移条件の合意:安全・品質に関わるインターロックを優先決定する。
  4. 並列/選択の設計:時間短縮や再利用性を考慮しマクロ化する。
  5. 試験計画:正常系・例外系・復帰シナリオのテストシートを用意する。

メリットとデメリット

  • メリット:手順の見通し向上、並列処理の明確化、保守・引継ぎの容易化、バッチ制御(ISA-88)との親和性。
  • デメリット:小規模案件では過剰設計になり得る、過度な階層化で可読性が低下、工具間の表記差に注意。

実装・保守の注意点

PLCのスキャン周期内で遷移条件が適正に評価されるよう、エッジ検出やデバウンスを設ける。保持型アクションはリセット条件を必ず定義し、レースコンディションを避ける。非常停止や安全扉などの安全関連は安全PLCやハード有接点で担保し、SFC側は安全状態への速やかな収束と再起動手順を明確化する。変更時は差分レビューとバージョン管理を徹底する。

安全関連(非常停止・インターロック)

緊急停止時は全アクションを安全側に倒すフェイルセーフ設計とし、復帰時は初期ステップへ戻すか中間復帰を許容するかをSFCで明示する。インターロックは遷移条件に組み込み、誤動作時の隔離・再試行・停止の基準を定義しておく。

タイミングとパフォーマンス

タイマやカウンタの時定数は設備の物理応答(エアシリンダ速度、搬送遅延)と整合させる。並列分岐が多い場合はリソース競合(バルブ・軸)を調停し、優先度やミューテックス的設計でデッドロックを防ぐ。遷移密度が高い領域には計測点を設け、立上げ時のトレース性を確保する。

関連規格と用語

SFCはIEC 61131-3で規定され、原型はGRAFCET(IEC 60848)である。国内では「順序機能チャート」「シーケンシャル機能チャート」とも呼ばれる。バッチ制御の標準ISA-88との組合せにより、単位手順・操作の階層をSFCで整然と表現でき、再利用性と標準化が促進される。ツール間で記号や修飾子の方言差があるため、プロジェクト規約で表記と命名を統一すると良い。

SFCを用いた品質・保全の実務知見

連続関数チャート(SFC)では、例外ルートを通常ルートと同等の粒度で設計すると障害対応が迅速になる。各遷移にログを付与し、テスト時はステップ強制の機能で分岐網羅を確認する。オペレータ画面には現行ステップと次遷移条件を可視化し、復帰手順の誤操作を防ぐ。変更管理ではSFC差分のレビュー(手順追加・削除・条件変更)を必須化し、設備のライフサイクル全体で可読性と安全性を両立させる。